テロルにはもっと怒りを
一部では大騒ぎになっていました、いわゆる『黒子のバスケ』関連の脅迫事件の犯人が逮捕されました。
<黒子のバスケ脅迫>36歳容疑者「負けました」身柄確保に
人気漫画「黒子のバスケ」の関連商品を扱う店舗など全国約400カ所に脅迫文が届いた威力業務妨害事件。警視庁に逮捕された大阪市東成区の職業不詳、渡辺博史(ひろふみ)容疑者(36)は容疑を全面的に認めているという。作者の藤巻忠俊さんへの恨みを強調する文書も見つかっているが、面識はないといい、動機には不可解な部分も残る。
(中略)
所持していたリュックサックには、今月末に都内で開催予定の高校のバスケットボール大会や、「コミックマーケット」と呼ばれるイベントの主催者などに開催中止を求める脅迫文約20通が入っていた。封書はこれまで届いたものと同様に、宛先を印刷した紙が表に貼られていた。
一年以上にもわたり各所に脅迫状を送りつけ、また1,2ヶ月前にはついにコンビニに売ってある食品に異物を混入させて、様々なイベントなどを中止に追いやった事件の犯人の逮捕です。
まだ単独犯かどうかはハッキリしませんが、これでひとつこの事件の山は越えたと言えるでしょうから、とりあえずは一安心と言ったところでしょうか。
この犯人自身犯行を認めているところですから、誤認逮捕の線も薄いでしょうし。
ところでやえがこの事件について思うコトは、社会全体としてこの事件に対しての怒りが少なすぎるんじゃないでしょうか、という点です。
これ、テロルですよ。
目的は政治的ではありませんが、原作者をねたみ困らせる目的を達成するために無関係の人の生命や自由を暴力的行為を働いた、のですから、これはもはやテロルそのものです。
ですから、この事件はもっと重大な社会事件であって、決してマンガ好きやアニメ好きな、いわゆるオタクの間だけの問題だと考えてはならない事件なんですよ。
でもマスコミとかは、その程度に捉えて、いままで大して報道してきませんでした。
それだけに一般的にもいまいち認知されていない事件ですよね。
果たしてテロルというモノに対してその程度でいいのかという疑問がやえにはあります。
時代も違いますし、日本初の劇場型犯罪なんて言われましたから背景も違うのでしょうけど、やっているコトはグリコ・森永事件と同じです。
あの時は毎日その一挙手一投足に全国民が注目するかのように連日連夜報道されていたモノですが、今回はそうではありませんでしたよね。
もちろんなんでもかんでも報道すればいいってモノじゃありませんし、むしろコトを大きくする方が犯人の思うつぼだという面もありますから、冷静な報道は必要ですが、それにしても怒りが足りないですよ。
国民の生命と財産をタテにとって、国民の自由を縛ったんですよ。
そしてそれが、いまのところですが、たったひとりの、おそらくただの一般人でしかない人間が、こうもいとも簡単にそれを成し遂げてしまったのです。
この事実に対しては怒りと共に、もっと危機感を持たなければならないのではないのでしょうか。
もしかしたら高度化した社会がむしろテロルの実行を安易にさせているのかもしれません。
しかしだからといって放置するコトも許されないでしょう。
今回はそれこそ「私怨」でしかなかったコトから被害もその程度で済んだと言えるのかもしれませんが、これ、もっと本格的に国家転覆ぐらいの計画を持ってあたられていたら、果たしてどうなっていたコトでしょうか。
もちろん大々的に行えば行うほどアシがつきやすくはなりますが、今回の場合も最初の犯行から一年以上もたっての逮捕であり、また被害もいくつのイベントが中止され、どれだけの全国規模の小売店が被害を被ったのか、決してその影響は小さくありません。
ですからこれを「オタクの世界の中だけの事件」だと矮小化させてはならないハズなのです。
今回はたまたまその辺で起きただけであり、しかし事件の構図だけで見れば、もっともっと現代社会において大変重大で、危機的であり、致命的な事件だったと認識しなければならないハズだと思うのです。
これにどう対するのか、というのは大変難しい問題ではあります。
警察の権限や法改正なども必要かもしれません。
また、現代の問題だからこそそこに生きる我々の認識ももうちょっとよくよく考え直す必要があるのかもしれません。
例えば、結果的にこのテロルに屈した企業や団体が多く出てきてしまいました。
コミックマーケット準備会など、サイトのトップに「『児童ポルノ禁止法案』に対する意見表明」なんて載せて、「発想と発表の自由が必要なのです」なんて謳いながら、しかし結果的にテロルに屈して『黒子のバスケ』関係だけをイベントから排除するという表現の自由を制限する側に回ってしまったのです。
どの企業も団体も色々とあると思いますからあまり強くは言いませんが、表現の自由はそんなに軽いモノだったんですかと、どこまで口先だけだったんですかと言いたくなってしまいます。
こういうコトもキチッと考えなければならないですよね。
治安も含めて、それは警察だけが行動すればそれで済むってお話じゃないハズなんですから。
ちょっと話は違いますが、銀行などの例をとるまでもなく、企業に対する暴力団などの強請たかりも、警察だけの努力ではなく、企業自身の断固たる態度もなければ完全排除なんて出来ないのですからね。
こういうコトも含めて、今回のこの事件に対する社会の怒りというモノが非常に小さすぎるのではないかと、やえは危惧するのです。
9.11があってから、今世紀はテロルとの闘いの世紀だと言っていた人がいましたが、それはその通りなのかもしれません。
いまは戦争を起こすよりもテロルを行う方が、よっぽどか「簡単」で「効果的」ですからね。
今の世に生きる全ての人は、この事実を正面から受け止めなければならないのでしょう。
テロルなんてモノはいつ何時自分が標的にされるかも分からないのですから。
ディスカッション
コメント一覧
「黒子のバスケ」はコンビニでの関連商品の販売が中止されたと言います。企画から製品化まで努力した人の苦労は無駄になったわけです。もう、マンガは、オタクだけでの物では無く、社会に結構な影響を与えている事に間違いは無いと思います。それなのに報道が・・・というのは、その通りだとしか言いようがありません。
たまたまの通りすがりがコメントを残すのはどうだろう……とも悩んだのですが、コミケに関してだけはちょっと擁護したいなと思いまして、コメント失礼します。
コミケを運営している準備会は黒バスのみを中止にするつもりはまったくありませんでした。
ですが、イベント会場であるビックサイトと、自治体や警察からの指導によって、
・黒バスを無しでイベントを開催するか
・イベントそのものを中止にするか
という二択を選ばなければならず、それでも時間ギリギリまで話し合いを行いましたが、説得は出来ず……苦渋の末に選んだのが、黒バス抜きで開催という結果でした。
それを屈したと言うのだ……と言われてしまえば、何も言い様はありませんが、それでも軽く考えて排除したわけではないということだけ、言わせてください。
それと共に、この事件に対して報道や、世間の反応が鈍いというこの記事の内容にはには同意します。
オタクコミュニティの中にあっても、ジャンルの違う他山の石だと思ってる人達も多く、単純にコミケ参加者だけ見ても、準備会の判断次第では開催そのものが中止になったかもしれないという危機感が、足りてない人も少なくありません。
意識というのは単純な問題ではないのでしょうが何とももどかしいです。
長々とコメント失礼しました。