今こそ日本は独り立ち外交を

 たぶん外交で最も愚かな人、そして最も自国の足を引っ張る人というのは、日本が他国から(それが合理的でも非合理でも)批判されるようなコトをすると、その問題の中身ではなく「批判された」という事象だけを持って日本や日本政府を叩く人でしょう。
 「批判が出たから靖国参拝はやめよう」
 いま安倍総理の靖国神社参拝を批判している人というのは、もう大部分がこういう理由ではないのでしょうか。
 最近はもはや「A級戦犯が」というセリフも聞こえなくなってきましまた。
 東京裁判に対する正しい知識が浸透してきたのか、それともそもそも詳しい中身を理解していないのかは分かりませんが、とにかくあるのは「他国が批判するから悪だ」という、実は論拠にもなにもなっていない、無責任に批判ばかりです。
 
 しかしやえは、最近ちょっと雰囲気も変わってきましたねと思うのです。
 マスコミは相変わらずではありますが、それでも新聞で言えば産経はともかく読売新聞も、だいぶ「他国ガー」というだけではない論調になってきましたし、なによりネット上では、もはや「批判された」という事実だけでどうこう言う人なんて、ほぼ皆無になってきたと言えるのではないのでしょうか。
 なによりやえが最近ハッとさせられるのは、アメリカに対してなんですね。
 これまでは、中韓に対しては反発していた人でも、アメリカに批判されると態度を堅くする人っていうのはかなり多かったのですが、もはやアメリカに言われても、アメリカに言われる筋合いはないと言う人が増えてきているように感じています。
 
 例えばこういう批判は一昔前は日常茶飯事でした。
 「アメリカ大統領や高官がアジアを歴訪するが、日本には来ない」という報道があった時、一昔前ではそれみたコトかと大バッシングが起きていました。
 最近だけではないんですよね。
 やえの記憶だとクリントン大統領の時だったと思うのですが、あの時は「日本より先に中国に大統領が行った」というコトだけをもって、日本のマスコミは日本政府が無能だと大バッシングをしていました。
 左系のマスコミなんて、「これからは中国の時代だ」と言いながら「日本はアメリカと中国とどっちをとるんだ」みたいな、そんなあおり記事もよくありました。
 まぁそれは今でも変わらない気がしてきましたが、とにかく、ちょっと前までは、アメリカの大統領がどこに行くかなんてだけで日本は一喜一憂していたのです。
 
 こうやって文字にすると、正直バカバカしいと思いませんか?
 アメリカの大統領がどこ行こうが関係ないじゃないですか。
 確かに日本外交の基本で基軸はアメリカとの関係です。
 それは否定しません、というか、否定できません。
 なぜなら、日本の国防は半分以上はアメリカに委託しているようなモノだからです。
 この構図を今さらここで説明する必要はないかと思いますが、憲法九条がある限りは、日本の外交の基軸はアメリカだと言わなければならないコトは変わりありません。
 でも、これは一方的に日本がアメリカにおもねらなければならないという意味では決して無く、アメリカだって日本に気を遣わなければならない事情もあるワケです。
 そもそも今回の靖国神社のアメリカの批判にしても、アメリカ(というか中韓以外)は参拝そのものに反対しているのではなく、中韓との火種をわざわざ作る必要はないだろうという理由での批判でした。
 つまり逆に言えば、「中韓が何も言わなければ参拝すればいいじゃない」というモノであって、アメリカの関心事はあくまで「極東アジアの安定化」なのです。
 ですから、逆に日本がさらに反発して益々「極東アジアの安定化」が遠のけば、それは日本の反発だったとしてもアメリカは困ってしまうのです。
 ましてそれがアメリカの批判が発端であれば、ますますアメリカは「自業自得」というレッテルを貼られるしかないみっともない状況に陥ってしまうワケなんですね。
 だから、日米同盟の特に軍事的な部分においてはかなり日本はアメリカを基軸とした外交をとる必要はありますが、だからといって全てをアメリカ基準にする必要はないですし、アメリカも日本に気を遣う部分がある以上はお互い様であるのが外交というモノなのです。
 
 最終的には、日本は九条を改正して独自軍事力を手に入れて、少なくとも先進国らしい大国らしい自分だけで自分の身を守れる、いや、いざとなれば小国を同時に守れるぐらいの力を手に入れるべきです。
 そのとき、日米同盟はあってもいい、むしろこれはある方が日本に有利になるので維持しておくべきだとは思いますが、それはあくまで対等同盟関係である必要があります。
 日本はここを目指すべきであって、よって「中韓が批判した」「アメリカが無視をした」なんて小学生低レベル程度の批判なんてもう脱却しなければならないでしょう。
 中韓が何を言ってもいいじゃないですか。
 アメリカが中国には訪問して日本に来なかったとしても、別にいいじゃないですか。
 そしたら日本はそれを受け止めた上で、では日本の利益になる外交はどうなのかというコトを考えて、日本の視点で動けばいいだけなのです。
 その結果としてアメリカが困れば、そんなのは日本に知ったコトではないですし、日本は日本の国益を求めて淡々と外交していけばいいのです。
 
 むしろいまの安倍岸田外交は、それを実践しているとすら言えますよね。
 ASEAN重視で、先日はアフリカとインドを訪問し、いままで日本外交が手を付けられずにいた地域を熱心に回り、また中東の紛争も日本が積極的に関与仲介しようとすらしています。
 特に核問題については岸田外務大臣が広島選出というコトもあって、かなり積極的です。
 
 いまこの現状を考えて、なにか日本に不具合がありますか?
 
 まずここを冷静に考えてもらいたいです。
 「中韓が批判している」「アメリカの高官が日本に来ない」と言いますが、それでなにか日本に不都合があるのですか?
 はやくもオバマ大統領のアジア歴訪には日本が含まれていないとか大騒ぎし出す予兆が出てきていますが、しかし来なかったら来なかったで、なにか日本に不都合があるのですか?
 堂々としていればいいじゃないですか。
 日本は孤立していません。
 孤立なんてできないんですね、いまの現代経済のシステムにおいては、日本を孤立させると、ほとんどの国が経済パニックに陥る仕組みになってしまっているのですから。
 そしてASEANにしてもインドにしてもアフリカにしても、日本に恩を売っておいて損するコトはない、むしろそれらの国々は日本にもっと親しくなりたいと思っているハズですから、それは日本も同じコトで、決して世界は米中韓だけではないのですから、この視点で外交は考えなければならないでしょう。
 正直言えば、日本に冷たくされて困るのはオバマ大統領と米民主党だと思いますしね。
 
 安倍内閣の誕生から、もしかしたら「日本外交の自立元年」と言える年になったのかもしれません。
 もちろんその先には九条の改正が絶対条件として立ちふさがっているワケですが、日本はそれを乗り越えていかなければなりません。
 この問題は誰でも無い国民自身の問題です。
 国民自身が中韓の文句もアメリカの文句も気にせず大局的な立場で日本の国益を追求できる視点を持つ時代に来ているのです。
 日本の外交のために、他国の動向に一喜一憂するのはもうやめるべきでしょう。