都知事選挙の結果を振り返って

 せっかくなので昨日結果が出ました東京都知事選挙の結果について振り返ってみましょう。
 
 結果は元厚生労働大臣の舛添さんが初当選しました。
 NHKの選挙特設サイトによりますと、舛添さんは「2,112,979票」で「得票率43.4%」でした。
 続く次点は宇都宮さんで「982,594票」「20.2%」、3位は細川さん「956,063票」「19.6%」、4位は田母神さん「610,865票」「得票率12.5%」です。
 まぁ大方の予想通りなのではないのでしょうか。
 
 色んな見方があるかとは思いますが、まずはこの4人に対する投票行動を推測してみます。
 
 一番わかりやすいのが宇都宮さんで、まぁ共産党支持や社会党支持の革新系寄りの支持者からの支持ですね。
 直近の参議院東京選挙区においては、共産党の候補には「12.5%」の得票率が入っていて、それにさらに民主党の「9.8%」やみどりの風の「1.3%」を加えると、この辺の数字になります。
 ただ民主党支持者が全て共産党の数字に行くとは思えませんので、ここは投票率の低さが影響したのだと言えるでしょう。
 投票率が低いと、強固な支持思想を持つ人ほど投票に行く傾向にあるので、強固に共産主義や社会主義思想を持っている人の全体に占める割合が高くなったのではないかと思われます。
 事実、前回の参院選の東京選挙区での投票率は53.51%だそうで、今回(46.14%)よりもかなり高いですね。
 
 次に細川さんですが、これがまた伸びませんでしたね。
 やっぱり細川さんっていうところがダメだったのでしょう。
 というのも、総理だった時代があまりにも昔過ぎて、まして「自民党を倒して総理の座に就いた人」というのは数年前ならまだしも、いまはちょっとイメージ悪いですよね、民主党のイメージにかぶって。
 しかもブームが終わった後の冷静な判断力での細川総理への評価というのは、決して高くない、というかむしろかなり悪いイメージですよね。
 そういう面から、「反原発だけどさすがに共産党はナシ」という人の受け皿にはなったのかもしれませんが、それ以上の支持につなげるコトは出来なかったというところでしょう。
 そもそも都知事選挙は住民投票ではなく、「都知事という強大な権限を行使できる人を選ぶ」モノなのですから、その意味で、総理としてはダメな方というイメージを持たれている細川さんには入れたくないという人も少なくなかったのではないかと思われます。
 
 田母神さんは、多分この4人の中では一番得票率の低さが有利に働いた候補と言えるでしょう。
 田母神さんの場合は大型選挙では一番失敗しやすい「コアなファンがずっと周りを取り囲んで、自分の周りだけで行けるという雰囲気を作って、外の雰囲気を知らないままに終わってしまう」という、最悪のパターンにはまってしまいました。
 ネット上もそうでしたね。
 おそらくネット上で田母神支持を訴えていた人はなんでこんなに得票が伸びなかったのかと疑問に思っているかもしれませんけど、しかし仮に田母神さんが嫌いな人であったとしてもそれをいちいちネット上とかには言わずに、田母神支持の声の煩わしさも右から左に流して淡々と投票に行くワケで、決してネット上の声の大きさがそのまま支持に繋がるワケでは無い、という点を完全に見失っていたと言うしかありません。
 この辺、選挙はどこまでもシビアと言え、いくらその人の声が大きくても、その人自身は一票しか持ち得ないという現実を見せつけられた格好です。
 むしろ声の大きさはマイナスにすらなりかねません。
 この辺選挙カーみたいなもんで、まだ選挙カーが有効な場面もあるからこそ選挙カーを用いているのですが、自らじっくりと政策選択するネット上の「意識の高い人」にとっては選挙カーはうるさいだけの存在に過ぎず、強い支持の声を連呼されるのは選挙カーと同様の効果を発揮してしまったと言えるでしょう。
 田母神さんやその陣営の人、そして勝手連的な熱狂的な支持の人は、今後田母神さんを政治家として応援するのであれば、その応援の仕方はちょっと考えてみるべきだと思います。
 他人を貶めるようなコトを繰り返したり、攻撃的な言葉を繰り返し吐くだけでは、なだらかに政治に興味がある人、もしくは普段から政治にはそんなに興味は無いけど選挙だけは行くっていう人には、決して支持は得られません。
 
 またそれは、田母神さんの主張にも全く同様のコトが言えます。
 あの人が持たれているイメージのままだと、田母神さんが都知事になったら、石原さんや橋下氏以上にいろんなところに無駄にケンカを売りまくるだけの知事になってしまうのではないかという懸念がまず先に来てしまいます。
 実際どうかというところはともかく、しかし選挙というのは未来を託す時点で、そう予想されてしまう時点でマイナスなんですね。
 そしてそれは、なだらかに政治に興味を持つ「一般人」には決して相容れない考え方です。
 さらにそれを増長したのはその周りの人達ですよね。
 事実ケンカを売っているとしか思えない乱暴で汚い言葉で他の候補を罵る姿を見せつけられたら、そのイメージは強くなる一方です。
 このままでは、もし次同じような選挙になって投票率が上がったとしても、得票数自体は伸びたとしても得票率は下がってしまうのではないでしょうか。
 次を見越すのであれば、ここの反省が出来るかどうかによるかと思われます。
 
 最後に舛添さんですが、要は「共産党はイヤだ。反原発も現実的でない。でも攻撃的すぎる人は論外」というところで、最後の選択肢として舛添さんしかいなかった、というところでの当選だったのだろうと思われます。
 また、色々あったにせよ厚生労働大臣時代の行政手腕には高い評価を得られていましたから、そこも同じ行政官を選ぶ選挙としては有利に働いたと言えるでしょう。
 4人の中で行政官としての評価を比べるのであれば、おそらく舛添さんが一番になるでしょうからね。
 よく言われる消去法の結果、というのが一番今回の選挙を言い表していると思います。
 ただもちろんいつも言ってますように、投票者もまずは「立候補しないという選択」をしているのですから、その時点である程度の妥協をするコトを自らの意思で決めている以上は、消去法だとしてもそれをネガティブにとるのは間違っています。
 どうしても誰にも入れたくなければ自ら立候補しなければならないのですからね。
 
 さてその上での舛添さんの結果ですが、それを見事に表していると言えるでしょう。
 NHKの出口調査によれば、いわゆる無党派層で最も支持を得たのが舛添さんだったそうで、30%です。
 つまり投票率が高ければ最も伸びるであろうと思われるのが舛添さんだったとも言えるワケで、なだらかに政治に興味を持っている人に対しても広い支持を得るコトが出来たようです。
 まして選挙の時点では大きな欠点も無かったというのもあります。
 一番大きな懸念材料としては、自民党から離党するときに後ろ足で砂をかけて出て行ったというのがあるんですが、しかしこれ、強固な自民党支持者以外にはあまり関係が無いお話なんですよね。
 よって、今のところ大きな失点が無いように見える+行政官としての高い手腕があるように思える+様々な分野の政策主張が評価された、というところが舛添さんの勝因だったのでは無いかと分析するコトができるのです。
 
 他の立候補者が、一点だけの主張に先鋭化してしまったコトは、むしろ舛添さんを有利にしてしまったとすら言えるでしょう。
 もしこれが、小泉さんがそこまで反原発を前に押し出さず、総理としての実績をアピールしまくっていたら、また結果は違っていたかもしれません。
 特にいまの政治に求められている点というのは「安定した政治運営」です。
 民主党のようなジェットコースターのような政治に飽き飽きした人が今は多いワケで、その中で「無駄に波風を立てそうな3人」というのは、むしろ厚労大臣の時は有能ぶりを発揮したという「無難」なイメージのある舛添さんにとって、引き立て役としてピッタリだったとすら言えてしまうのかもしれません。
 舛添さんを積極的に支持した人は少ないかもしれませんが、いまの政治のトレンドである安定という面にとっては、なだらかに支持される理由は確かにあったと言えるでしょう。
 
 ちょっと長くなりましたので、続きは次回に持ち越します。
 次回は、この結果を受けた上での「反原発」という選挙の争点について、です。