原爆忌

 8月6日は広島に生まれた身としては忘れられない日です。
 今年もその日が訪れ、そして去って行きました。
 あの日がキッカケで命を奪われた人には鎮魂を、身体に心に傷を負われた人にはお悔やみと心の平安を祈念いたします。
 
 核兵器の問題については、過去散々語ってきましたし、未だにやえの意見が変わるところはありません。
 やえの中では、「核兵器は人間を人間でなくす最悪の兵器」という感情が出発点となる廃絶論と、現在の日本においてはむしろ核兵器がない世界の方が戦略的に優位に立てるという「戦略的核廃絶論」が、共に併存しています。
 さらに言えば、G7広島外相会合とオバマ米国大統領の広島訪問という歴史的な場面を作り出すコトが出来たのにも関わらず、当の日本が核保有を検討しては、日本だけでなくアメリカすら立場がなくなってしまうというコトも、ひとつ、保有すべきでないという大きな理由として十分に説得力があると言えるでしょう。
 思想は思想として今後も核保有の不要性を訴えつつ、一方政治では日本の核保有は今後あり得ないと内外に示せたコトは大変大きく、そういう意味で今年の8月6日は今までとは違う日となったのではないかと感慨深く思います。
 
 やえが広島出身であり、こうしてネットで自分の意見を述べる活動をしているという感覚から感じるに、今年のサミットをキッカケにして核廃絶運動に多少の変化が生まれていると感じています。
 それは「被爆の実相を世界の人に見てもらいたい」という具体的な主張が大きくなっているという点です。
 これまでの核廃絶論は、とにかく廃絶を訴えていただけに終始していましたが、いまは「広島に来て、様々な資料を見て、語り部の話を聞いて、核兵器とは何か、被爆とはどういうコトなのかを、自分の目で見て耳で聞いて肌で感じてほしい」という具体的な主張に変わってきているんですね。
 もちろんどちらも最終的には「核廃絶」という目的には変わりありませんし、また「実際に見て欲しい」という主張も以前からありましたが、ただやはり、その声の大きさはきG7広島外相会合をキッカケにしてとてもとても大きくなったと感じています。
 そしてそれは着実に世界に広まってきているワケです。
 
 例えば様々な報道を見ると、オバマ大統領の広島訪問も、G7広島外相会合でケリー国務長官が原爆資料館や原爆ドームを直接見たコトが、一番大きな後押しになったと言えるのではないでしょうか。
 実際、ケリー長官の資料館視察は、所要時間30分の予定のところを20分もオーバーして「展示を一つ一つじっくり見ていた」そうです。
 さらに「人間としてのすべての感受性を揺さぶられる衝撃的な展示だった」「すべての人が広島を訪れるべきだ」という言葉をのこしておられます
 それが核廃絶まで到達するほどなのかどうかはまだ分かりませんが、しかしこの「広島訪問」がある種の力になったのは確かです。
 広島訪問が国を動かしたというのは、代えがたい事実なのです。
 未だ核廃絶のためには何をしていけばいいのか難しい問題ですが、ひとつ着実な一歩を踏み出せているコトは喜ばしいコトだと歓迎したいです。
 
 この意味からも今年の8月6日は、いつもとちょっと違う1日に感じられました。