岸田総理と統一教会との関係性を示すとされる写真の真偽を追う

 当サイト管理人のあまおちさんがTwitterで「岸田総理と統一教会関係者とのツーショット写真」なるものの真偽を調査してまして、その結果をブログにも残しておくべきだというコトで、ここではやえが代わりに書くコトになりました。
 この問題も「政治と宗教の距離感」という意味では、ひとつキチンと考えるべきコトかなとも思いますので、色々と皆さん考えていただければなと思います。

 右も左もイッてよし!
 バーチャルネット思想アイドルのやえです。
 おはろーございます。

 さて。
 結論から言いますと、この写真は岸田総理と統一教会の関係性を示す写真ではありません。
 岸田総理が選挙の応援で街頭演説に来た時に、単に関係者が居合わせたっていうだけの話です。
 これだけで「岸田総理は統一教会と関係がある」と言ってしまうのは、当たり屋に正当性があるというような理屈と一緒になってしまいます。
 この辺の一線の引き方は、「政治と国民との距離感」にも繋がる大切な話ですから、キチンと線引きをしなければならない話です。

 では調査の結果ですが、まずこの写真の出所を説明します。
 以下のようになります。

●拡散元は宗教ジャーナリストの鈴木エイト氏のツイート
●写っているのは光永一也という人物
●撮影者(撮影依頼者)も光永一也氏のようで、初出は氏のブログかと思われる。現在は削除されているが魚拓が残っていた

 おそらく鈴木エイト氏が光永一也氏のブログを探し当てたか、もしくは誰かが発見してエイト氏に情報提供したのかだと思われます。
 ただしこれについて鈴木エイト氏は、自身のTwitterで以下のようにも述べています。

岸田派内にはそれなりにいるものの、岸田文雄首相本人にはこれまで統一教会との関係性は見えていない。2ショット写真については議員会館事務所や大臣執務室内などでなければそれほど問題ではないだろう
実際、こんな2ショットもあるし

鈴木エイト ジャーナリスト/作家/物書き Twitterより

 エイト氏としては、写真はアップしたけど「岸田総理は統一教会との関係性は見えていない」と、関係性自体については否定しています。
 政治家が、相手が誰なのか分からず写真を撮るコトは珍しいコトではありません。
 選挙が根底にある政治家にとって、言わば人気商売的なところもありますから、ファンサービスは重要です。
 だって例えば芸能人だって求められて撮る写真とかサインとかの場で、いちいち相手の素性や政治信条、宗教観なんて確認していないですよね。
 このように、それが良いのか悪いのかの評価はともかくとしても、「誰か分からない人と政治家が写真を撮る」コトについては別に珍しくもなくともないワケです。
 そしてそれを証明するかのように、「政治家は頼めば誰とでも写真を撮る」を証明するために敢えて下村博文議員とエイト氏自身のツーショット写真をアップしているんだと思われます。
 というワケで、エイト氏としても、岸田総理と統一教会が親密な関係にあるとは言っていません。

 であるなら写真をアップする行為自体はどうなんだと思いますし、また少なくとも上記ツイートは、写真ツイートに直接リプライする形ですべきだとは思います。
 この辺、エイト氏が注目を集めようとする、ジャーナリストとしてではなく単なる商売のため自身の人気のために岸田総理や統一教会を利用しようとしていると断じざるを得ません。
 ちょっと卑怯ですね。

 さて、そしてそれを証明するかのように、写真に写っている光永一也氏もTwitterで以下のようにコメントしています。

岸田総理(当時は総理になる前)が、自民党候補者の応援演説に来られた時に、「一緒に写真を撮ってください。」と頼んで写真を撮ってもらっただけです。岸田総理とは、それ以外の交流を持ったことがありません。 

 光永氏はTwitterを削除したようなのでリンクが張れないのですが、スクリーンショットがありましたので、代わりに張っておきます。

 ここでのポイントは2つあります。

・光永氏は岸田総理と接点がなく、たまたま居合わせた場所でお願いして撮った写真であるということ。
・写真を撮った場所は「自民党候補者の応援演説に来られた時」ということ。

 今回のやえの更新で何を伝えたいかと言えば、最初にも言いましたように「岸田総理と統一教会との関係性は無かった」というコトなので、実は本来ならここで終わりでもいいんですよね。
 「政治家とのツーショット写真だけでは親密な関係性とは言えない」「この写真はたまたま居合わせた時に撮ったモノだ」という2点が証明されているのですから、これ以上はもう不要なワケです。
 ただ、写真だけをもって「ツーショットを撮っているんだから親密な関係だろ」と言う人がいるのも事実なので、もうちょっとこの写真を深掘りしたいと思います。
 そこで重要なのが2つ目の「写真を撮ったときにシチュエーション」です。

 この写真と、「自民党候補者の応援演説に来られた時」とで、分かるコトが色々とあります。
 例えば岸田総理は初当選からしばらくはメガネを掛けておられませんでした。
 これは普通に検索すればメガネ無しの写真がいくらでも出てくるのですぐ分かるコトですが、ではいつからメガネを掛けられたのかと言えば、外務大臣の途中から掛けられ始めたというのが分かります。
 以下の写真は「第三次安倍内閣」の発足時の写真ですが、ちょっと小さくて申し訳ないんですが、ここでは岸田総理(当時は外務大臣ですね)はメガネを掛けていません。

 2014年の12月の写真です。
 そして翌年の2015年10月に、「日本メガネベストドレッサー賞」を受賞していますから、おそらくメガネを掛け始めたのは2015年前半辺りだと思われます。
 よってこの写真は「2015年以降の選挙の写真」だというコトになります。
 また同時に、ブログの投稿日付が「2021-10-04」となっており、これは岸田総理が就任した日ですから、総理就任以前のものであるというコトも確定です。
 以上から、時期としては「2015年から2021年10月の間」に撮られた写真というコトになります。

 次に撮影された場所ですが、結果を先に言いますと、これは広島県福山市の芦田川河川敷というコトが判明しています。

 なぜ判明したかのいきさつを説明しますと、もちろん選挙は全国で行われていますから可能性としては無限とあったワケですが、ただ光永氏は統一教会の広島県東部地区の幹部だったという事実から、まずは広島を想定して調査をしてみました。
 これは岸田総理ご自身も広島選出だというコトもありますし、また光永氏が「来られた」という表現を使っているので自分がホームと認識する場での写真だと強く推測されるコト、そして岸田総理の地元は広島市という広島県で言えば西部地区なので、東部地区の人から見たら「来られた」という表現も間違いではないコトから、広島県東部を想定して色々と調べてみました。

 2015年以降の広島県で行われた国政選挙は、衆議院では2017年、参議院では2016年と2019年、そして2020年に参議院再選挙が行われています。
 2020年の再選挙とは、河井案里氏が当選無効となったためのやり直しの選挙です。
 意外と安倍政権下で衆議院選挙は2回しか行われておらず、17年の前は14年の衆議院選挙となります。
 というワケで、可能性としては2016年(参)・2017年(衆)・2019年(参)・2020年(参再選挙)の4回のうちのどれかというコトになります。

 この調査はあまおちさんがTwitterで行っていたのですが、ここで撮影場所について「広島県福山市ではないか」という情報が寄せられました。
 鈴木エイト氏がアップした写真の中に広島県知事の写真もあるのですが、この場所が福山である点、そして福山市を地盤とする小林史明衆議院議員が雰囲気が似ている河川敷で選挙中に街頭演説をしていたという点からのモノでした。
 ただ、岸田総理との写真と広島県知事との写真では光永氏の服装が違うので、同日に撮ったモノではないコトから、これだけでは確定情報になりません。
 しかし有力な情報であるコトには違いありませんから、さらに今度は福山市のその街頭演説をしていたという場所を探ってみるコトにしました。

 特に応援弁士を呼んでの大型の街頭演説というのは、だいたい「お決まりの場所」でやるコトが多いです。
 例えば安倍総理の痛ましい事件があった場所も、ここは与野党問わず大型街頭演説がよく行われていた場所であると地元では有名だったと報道されていましたよね。
 選挙は多くの人に見て貰うコトが目的ですから、多くの人が集まりやすく見やすいところが選ばれるワケです。

 その中で得られた情報としては福山市の芦田川河川敷です。
 これも先ほどと同じ方からの「小林副大臣の出陣式かもしれません。芦田川の河川敷で行われました」との情報からです。
 というワケで、早速検索検索です。
 今は便利ですよね、Googleマップで検索すれば、画像がすぐ出てくるんですから。

 地面の模様もかなり似ていますよね。
 そしてこの後、確定情報が出ます。
 あまおちさんがTwitterで調査した後、なんとわざわざ現地まで行って確認された方が情報を提供してくれました。
 その方の写真はこちらです(掲載許可を頂いています)。

 はい。
 というワケで、これは確定ですね。
 場所は「広島県福山市の芦田川河川敷」だというコトが判明しました。

 では、岸田総理が芦田川河川敷で街頭演説をしたのはいつか、というコトなのですが、これは各候補者との検索によって調べてみました。
 衆議院選挙なら小林史明議員、参議院なら溝手顕正議員と宮沢洋一議員、そして再選挙なら西田ひでのり候補です。
 その結果はこうなります。

「"溝手" “芦田川"」-無し。
「"宮沢" “芦田川"」-無し。
「"西田" “芦田川"」-ヒット
「"小林" “芦田川"」-ヒットしまくり

 これで、2017年の衆議院選挙か、2021年の参議院再選挙かのどちらかに絞られました。
 さらに調べます。
 小林議員の選挙の時の芦田川街頭演説に岸田総理が来ていたかどうかです。
 これはもうローラー作戦で、小林議員のTwitterを調べました

 その結果、岸田総理は小林議員の応援には来ていましたが、しかしそれは芦田川では無く、福山駅というコトが分かりました。

 先ほども言いましたように、街頭演説は見て貰うのが目的ですから、このように大きく告知します。
 しかし福山駅の告知はあるけど、芦田川の告知はありませんから、この結果、例の写真は小林議員の選挙の時ではないというコトが分かります。

 では参議院再選挙ですが、これは先ほどの西田候補のTwitterを見て貰えれば一目瞭然、「福山市の芦田川かわまち広場で出陣式」とありますし、2枚目の写真にもバッチリと岸田総理が写っていますね。

 そしてよく見てください。
 発端となった例の写真に写っている岸田総理のスーツやネクタイと、西田候補の写真の岸田総理のスーツやネクタイと、これ一緒ですよね。

 はい、これで確定ですね。
 例の写真は、2021年4月9日広島県福山市の芦田川河川敷で撮られた写真だと判明しました。

 ここで分かるコトは、岸田総理は当時「無役」だった時というコトです。
 一応、自民党広島県連会長ではありましたが、党本部の役職では無いのでSPが付かない役職であるというコトと、そして岸田総理にとっては最もどん底だった時期、政治家人生をかけていた時期だという点が重要です。
 つまり何が言いたいのかと言いますと、「選挙中」で「SPが付いていない状態」で「総裁選のために露出度を上げるコトが最大の課題だった時」の岸田文雄議員にとって、写真撮影を頼まれたら断るという選択肢が無かった状況だった、というコトが、写真を撮った時期から分かるワケなのです。

 特に当時の岸田総理の課題は知名度、総裁選で言えば「党員票」でした。
 よくある「次の総理は誰が相応しい」というマスコミアンケートでも、岸田総理は常に下位でしたよね。
 今でも地味とは言われますが、つまりは自民党の一般党員からいかに党員票を獲得するのか、ひいては国民からの知名度をどう上げるかが最大の課題でした。
 ですので、岸田総理としても一般国民と写真を撮るのは望むところなワケで、特に足下の広島県での街頭演説ですから、むしろ積極的に写真撮影に応じていたコトが容易に想像できるワケで、そんな時に常識で考えてもあり得ないような「あなたの宗教はなんですか?」なんて知らない人に聞くハズもありません。
 まして選挙最中での出来事、時間が許す限り積極的に多くの人と写真を撮ったり握手をしたりしていたと考えるのが自然でしょう。

 とここまで理屈をこねなくても、「選挙中のSPが付いていない議員」であれば、頼めば誰でも写真撮影は応じて貰えますよ。
 疑問に思う方がいましたら、ぜひ次の選挙の時に自分の住んでいる立候補者に頼んでみましょう。

 長くなってしまいましたが、以上から、この写真は岸田総理と統一教会の関係性を示す写真ではないというコトがハッキリしました。
 もし「写真に写るコト自体が問題」と言い出したら、今度は政治家と国民との距離が離れるコトになります。
 これは民主主義として大変危険なコトに繋がりかねません。
 ぜひこの問題はここまで考えてもらいたいと思います。