現実的に原発問題を考えよう

2012年4月15日

 今日は、先日更新しました、というか前のサイトの時の再録になるのですが、原発問題を考えるためのまとめみたいなモノの更新について、いろいろとコメントを頂きましたので、そのお返事をしたいと思います。
 

 つくるからには事故の可能性は当然あるし、それをリスクとして考えるべきでしょ。別問題だという神経が信じられないな。
 「放射能って重要ですか?」って?原発を考える上で放射能は無視できないことが今回の事故でわかったわけでしょ。
 むしろ重要でないと思う論拠を聞きたいね。
 匿名二号さんが書いてるけど今回のような原発事故が起きた場合、
 「汚染地域が数百年単位で居住不能になったらメリットの全てを吹っ飛ばして余りあるんじゃないかという論は十分に成立しうると思われます。
 例えば浜岡原発が爆発して放射能が偏西風で東に流れたら、最悪東京や横浜といった京浜地区が不毛の大地になる危険性もある訳です。そうなったら日本詰みますよね、間違いなく。
 リスクがあまりに大きい場合、危険性の小ささは問題にならない、という論法はそれ程不自然なものではないでしょう。」
 といっててそれに対して何の答えもでてこないでしょ。交通事故とそもそも比較するべきじゃない。交通事故がいくら起きたって不毛の台地にはならないでしょ。比較対象にならない。
 被爆差別に関しては同意するけど。
 http://www.youtube.com/watch?v=uB7w7EftEu0
 俺としては福島が安定状態になり且つ全ての原発に安全対策を完了しない限り、全原発を停止すべきだと思ってる。

 
 コメントありがとーございます。
 で、なんですが、放射能が重要ではないというのは、「この議論」についてです。
 社会問題や政治問題として放射能なんてどうでもいいと言っているワケではありません。
 
 ここで考えなければならないのは、例えば「汚染地域が数百年単位で居住不能になったら」という部分に対して、これは本当に起こり得るモノなのかどうかという部分です。
 科学的に技術的に、本当にここまでのコトに成りうるのか、それは北斗の拳とかそういうフィクションのイメージで語ってはいないでしょうかという部分です。
 勘違いして欲しくないのは、やえはそういうコトが起こりうる可能性を否定しているというワケではないコトです。
 そうではなく、起こるのであれば、それなりの論拠を示すべきで、それがあれば比較して議論すべき問題になれる、していかなければならないというコトなのです。
 
 今回の原発事故、世界の終わりかのように言う人がいますが、しかし冷静に事実を積み上げれば、実は交通事故の数字を積み上げると、無視できないどころか、とんでもない大惨事な事実が見て取れると思います。
 この議論というのはここなんですよ。
 「つくるからには事故の可能性は当然ある」
 あります。
 これは否定できません。
 ただ、現実的に科学的に考える場合、「ある/なし」の二択で考えるというのは、かなり現実離れしているとしか言いようがありません。
 というか、実際人間生活の上では、こんな二択の選択を実際はしていません。
 自動車は事故が起こります。
 どうルールを整備しても、どう車の頑強性を高めても、絶対に死亡事故が起こります。
 これは現在の科学力で言えば100%と言えます。
 しかしこの場合、「事故が起こる/起こらない」だけで考えたら、これはもう自動車は廃止しましょうという結論になってしまいます。
 こんなの現実的ではないでしょう?
 そうではなくて、事故だけではない様々な要素も含めて考えて議論した結果として、現在の車社会があるワケです。
 原発問題だってここを考えましょうというコトなんです。
 

 例えば浜岡原発が爆発して放射能が偏西風で東に流れたら、最悪東京や横浜といった京浜地区が不毛の大地になる危険性もある訳です。そうなったら日本詰みますよね、間違いなく。

 
 ここも結局「ある/なし」の二択でしか考えてないワケです。
 まず「浜岡原発が爆発」とは、いったいどういう状況を指し示しているのか、そしてその状況は現実的に起こり得る可能性があるのかないのか、あったとしてどのくらいの可能性なのか、どういうコトが起こればそんなコトが起こるのか、そういうコトを丁寧に積み重ねなければならないのです。
 いまの日本の中で原発問題について言えば、こここそが一番おろそかになってしまっている部分です。
 ここが足りません。
 でもですね、真のリスクヘッジというのは、こういうコトを積み重ねるコトなんですよ。
 
 可能性を考えます。
 別の方のコメントで「原発の最大のデメリットは防衛上の弱点となる事ではないでしょうか」といただきました。
 これはその通りです。
 原発は攻撃対象の最重要要点になる要所でしょう。
 これは科学的に考えなければならないところですが、例えばミサイルでも9.11のような飛行機テロルにしても、これが原発に突っ込んだ場合どういう状態になるのかというのは考えなければならないところで、その状況というのは原子爆弾が爆発するようなイメージを持っている人が多いんだろうと思うのですが、しかし本当にそうなるかどうかというのは科学的見地で考えなければならないところだと思います。
 もしかしたらそういうコトも想定して大爆発しないように原子力発電所は設計建設されているかもしれません。
 それから、特にこれはミサイルの場合ですが、もし「東京や横浜といった京浜地区が不毛の大地」にさせるのであれば、原発を狙うというよりは、東京に核兵器を飛ばした方が確実じゃないでしょうか。
 まぁ戦術的にどっちがどうというのは専門家に任せるとしても、放射能による驚異という点については、ここは同じテーブルに上げて考えるべきリスクでしょう。
 つまりですね、敵国からの核攻撃をどう防ぐのかという部分と、敵国からの原発をどう防衛するかというのは、同じ意味として考えなければならない問題で、例えば弾道ミサイルを防ぐためにイージス艦を多数配置してミサイル防衛システムを装備しているワケですが、この中でですね、もし核ミサイルじゃなくてもミサイルが原発を狙っていたしても、これはミサイル防衛システムの中で同じように防衛できますよね。
 よってこの議論から得られるコトというのは、もっとミサイル防衛システムに予算をかけて精度を高めましょうというコトになるのではないでしょうか。
 放射能怖いというのであれば、その中でキチンと論拠を積み重ねていけば、結論の中の1つとして、ミサイル防衛システムが出てくるハズなのです。
 原発があってもなくても、放射能による不毛の大地化は可能なのですからね、核兵器によって。
 積み重ねた議論の結果、これが現実的な結論の1つなのではないでしょうか。
 
 また他にもですね、原発施設にテロリストが乗っ取って爆発させるとかいう可能性も無いコトもないですが、これは警察力や自衛隊力の強化をさらに進めるという点や、スパイ防止法などの法令のさらなる整備が必要だという結論が得られるのではないでしょうか。
 さらにこれはやっぱり現実的に考えなければならないコトですが、アメリカが国家ぐるみで日本の原子力発電所をどうにかしようとしているのであれば話は別らになりますけれども、北朝鮮ぐらいの科学力の国が、果たして日本の高度な何重にもセキュリティをかけている原発のシステムをどうにか出来る程の技術をテロリストに教え込むコトが可能なのかどうかというのは、やっぱり考えるべき問題でしょう。
 北朝鮮には核兵器はあっても原子力発電所は無いワケですからね。
 仮にこれから核兵器技術から原発を作ったとしても、さらにセキュリティ技術はまた別技術であって、それを日本の原発に勤めていない、しかも日本から見れば外国人が、それをどうにかする技術を得られるのかどうかは、これはキチンと科学的見地で考えて判断すべきコトだと思います。
 
 この問題はさらに別の見地からも考えられる点があります。
 例えば原子力発電所施設を一時的に占拠できたとしても、果たして1時間程度で爆発させるだけのセキュリティを破れるのか、1時間あれば十分に自衛隊が奪還できると思うワケで、こういう現実論もですね、積み重ねていかなければならないでしょう。
 原子力発電所を一時的に占拠されるだけで終わったというのではなく、頑強なセキュリティを築くコトで時間を稼ぐだけでも十分に意味のある、むしろそれこそがセキュリティの本義であるとも言えるのではないでしょうか。
 
 あとは、占拠された後、自爆するつもりで爆発物を爆発させるかですね。
 ただそれでもセキュリティの問題はあるでしょう。
 司令塔に潜入してそこで爆発させても、原子炉までそれが及ぶとは思えませんし、原子炉に潜入するにはやっぱり司令塔を占拠してセキュリティを破らなければならないワケですからね。
 どちらにしても、これもやっぱり科学的現実的に、この場合は軍事的に冷静に判断して議論していかなければならないコトです。
 考えれば考えるほどですね、現実的に考えなければならないコト、知らなければならないコトというのはたくさん出てくるのです。
 決して「放射能こわい」だけで0か1かの結論を得ていい問題ではないのです。
 
 1つずつ積み重ねなければなりません。
 事故が起こるというコトだけでも、様々なコトを想定して可能性を考えて確率を計算しなければなりませんし、事故が起きた後の想定も、現実的にどのような状況が起こり得るのか冷静に判断しなければなりません。
 「放射能がバラまかれた、わー、こわいー」、じゃダメなんですよ。
 こういうコトを、現実的科学的論理的なリスクヘッジを考えるために、こういう議論をしましょうと、その論拠を集めましょうというのが、この前のエントリーなワケです。
 
 ありかなしかじゃないんです。
 現実はそんなに単純じゃないんです。
 もっと色々なコトを考えて、調べて知って、それを積み上げましょうと言っているんです。
 それらを積み上げないと結論なんて得られないですよっていうお話しなのです。