消費税法案はどうなるか!?

2012年6月18日

 本日は消費税法案で揺れる国会の動きについて、政治評論家のあまおちりんさんをお迎えして解説していただきたいと思います。よろしくお願いします。
 
 オレは政治評論家ではないんだが、よろぴこ。
 
 
 さて消費税法案を巡り国会での審議と与野党での協議が行われているところですが、協議の方は15日で打ちきると自民党も公明党も言い、また来週には国会の会期末が迫っているという状況の中、今後どのような動きが予想されるのか、あまおちさん、お考えを聞かせて下さい。
 
 まずは民主党と自民党の立場を整理しておこう。特に民主党は足並みがバラバラだからな。
 
 はい。実はこの民主党の足並みがバラバラというところが、現在の国会の不透明さを形作っていると言えますよね。
 
 そうなんだよな。人によって言ってる事がバラバラだから、いやバラバラだけならまだしも、全く逆の事すら言うからタチが悪い。まぁ1つずつ見ていこうか。まずは野田総理だ。本来は民主党の代表でもあるわけだから最高責任者なのだが、現在の状況を冷静に分析すれば、ただの政府側の代表者という程度にしか認識されていない。ある意味歴代で最も力の弱い総理と言えるかもしれない。
 
 議院内閣制って、大統領制と違って立法府と行政府の距離が近いので、ある意味総理大臣の権限ってかなり大きいんですよね。そのために内閣は1人ではないのですが。
 
 んでその野田総理は今更説明するまでもなく、消費税を増税しようとしている。政治生命を賭けてと言ってるんだから、野田総理の選択肢は2つしかなく、法案を通すか、腹を切るかだ。
 
 腹を切るというのは?
 
 総辞職か解散かだな。どっちにしてももし消費税法案が通らなければ総理大臣としては終わりということになる。例えば小泉総理がもし郵政法案を通せなかったとしたらどうやっていただろうか。
 
 確かに、法案は通らなかったけど総理大臣は続けます、なんて通りませんよね。
 
 そう。だから時期はともかくとしても、野田総理としてはもはや消費税法案を通すか、自らの総理としての政治生命を終わらせるために腹を切るか、2つに1つしかないのだ。
 
 なるほどですね。じゃあ次は、民主党の方を解説してください。
 
 うむ。まずは小沢一郎一派を見てみようか。小沢一郎という政治家は権力がなによりも行動原理なので分かりやすいと言えば分かりやすい。いまは完全に民主党の中で反主流派、そもそも菅政権は「反小沢」がエネルギーとなって新政権誕生となったのだから、小沢がいま反主流なのは当然なわけだな。
 
 つまり権力が欲しい小沢一郎としては、反主流を貫くしかないということですね。
 
 そう。彼が望む望まないに関わらず民主党の内部には親小沢か反小沢かというイデオロギーの選択を迫られるのだから、小沢一郎本人には反小沢と対決するしか選択肢がないわけだ。
 
 よって現在の主流派が増税を勧めるなら、小沢一郎としては反対を言うだけだというコトですね。
 
 もし政権側が反増税を言ってたら、小沢は平気で増税派になってただろうよ。あいつはそういう人間だ。権力のコトしか頭に無い。
 
 まぁある意味分かりやすいですね。反対する勢力の反対のコトをやると。
 
 小沢がどう権力をその手に戻すのかの具体的方策がいまいち読めないんだがな。仮に民主党の代表選までもっていっても、小沢グループが立てる候補者が勝てるとも思えないし。
 
 「反増税」の看板で新党を立てて、第三極でも狙っているんでしょうか?
 
 小沢新党なんて票とれるかぁ?
 
 小沢チルドレン以外で小沢一郎についていきたいって思える人いるとは思えないですからねぇ。やえもよく分からないです。では次に、その主流派の立場を見てみましょう。
 
 となれば、党の事実上のトップ、輿石幹事長の立場だ。この人の立場は明確で「党を割らない」というのが行動の基本だ。どっちかと言えば「割りたくない」という願いかもしれんな。
 
 でも実際はなかなか難しいですよね。
 
 難しい。ただ狙いは1つだけだから分かりやすい。それは延長無しの国会閉会だ。
 
 ほう。来週会期末ですが、もう終わらせるんですか?
 
 そうだ。消費税法案も採決もしない。
 
 採決しないんですか。そしたら野田総理は辞めるしかないですよね?
 
 そう。でもこれだと党が分裂することはない。主流派も小沢派も態度をハッキリさせる必要がなくなるから、これで分裂する理由はなくなるわけだ。
 
 でもそれって、野田総理の首を切るっていう意味と同義ですよね。
 
 ここが民主党の不思議なところで、輿石幹事長も城島国会対策委員長も野田本人の首についてはそこまで執着はないようだ。本来は野田代表の部下のハズだが、両者共にそういう意識はなく、クーデターしようがなにしようが、民主党の分裂が避けられればそれでいいと思っているフシがある。
 
 ええと、つまり、野田総理には総理と代表は降りてもらって、消費税はうやむやにしたまま別の新代表を立てるっていうことですか?
 
 それが彼らの一番のシナリオだろうな。いまではもう増税は野田総理個人の主張みたいになってるから、新代表になればその旗も降ろせるだろうと踏んでいるんだろう。
 
 でも野田総理が総辞職を良しとせずに、国会最終日にでも衆議院解散したらどうするんですかね。
 
 ここがターニングポイントだな。野田総理が自らの政治家としての意地を見せるなら、ここで解散する。民主党は大敗北を喫するだろうが、民主党よりも自分の信念を貫くと野田個人の政治家としての意地を見せるのであれば解散するだろう。
 
 でもそこまでの勇気がなく、野田総理が民主党をとるというのであれば、総辞職というコトですね。
 
 そういうことだ。
 
 ある意味輿石幹事長と城島国対委員長としても賭けですよね。解散権は野田総理にあるのですから、可能性としては五分五分なワケです。
 
 仮に野田総理が意地を見せて解散して、その茶番劇に国民が騙されて、また民主党が過半数とったら、全民主党議員は万々歳なんだろうけどな。
 
 まぁ……それは無いと思いたいんですが。
 
 選挙はやってみないと分からんけどな。こればっかりは国民次第だ。
 
 
 では自民党に視点を移してみましょう。自民党の一番の目標はなんでしょうか?
 
 解散だな。
 
 自民党案の成立よりも解散でしょうか?
 
 んーと、自民党案、マスコミでは「自民党案の丸のみ」なんて表現しているが、自民党はもともと増税は公約として掲げ続けていて、前の参議院選挙でもその公約で勝利を得ているのだから、自民党が自民党の案で増税するというのは民意を得ている行為でもあって、よって自民党が自民党案を丸呑みした案に賛成するというのは言ってみれば当然の行為だ。自分の案に反対するのは民主党だけで十分だ。ただ、自民党案が成立し、なおかつ野田政権がこのまま続くという状況は考えにくい。ほぼ不可能と言っていいだろう。
 
 それはやはり小沢派の動きのせいですか?
 
 そうだ。自民党案が成立するということは、衆議院と参議院で「採決」をすることになるので、ここで小沢派が造反することになるだろう。となればやっぱり野田政権がこのまま続くとは考えにくい。だから自民党としては「採決を迫る=解散」という方程式がほぼ固まっているワケだ。
 
 なるほど。ですから自民党としては消費税増税は公約ではありますが、それは与党になってからでも十分に達成出来るワケで、解散と同時に為し得るなら万々歳、同時で無くても解散させられればそれだけで十分及第点だというコトですね。
 
 そうだ。そもそも菅政権の時から民主党が政権の座にいることが国益を失うと言っているんだから、野党として解散を迫るのは当然の話だ。今回は、解散と法案成立がほぼ同価値として同時攻略も可能な位置にいるので同時を狙い、同時が難しくても、どちらかと言えば解散が出来ればゲームクリアっていう状況だな。
 
 確かに、いま民主党が一番イヤなのが採決ですからね。
 
 そう。民主党が分裂するスイッチは採決だ。ただでさえボロボロの政党支持率の中で、なおかつ増税まで言っての選挙なんて勝てるとは誰も思っていない。であるなら、我が身かわいさで小沢派でなくても増税法案には反対してしまうっていう民主党議員も出てくるかもしれない。これら全ては採決があってこそ、その「造反というカード」が発動するわけだ。自民党の狙いはここにある。解散を狙うための一番の近道は「採決」にあるわけだ。
 
 でも民主党野田派と自民党が賛成に回れば法案が成立する可能性はありますよね?
 
 あるな。結局野田派というか主流派がどれだけ増税に賛成するのか、小沢派がどれだけ反対に回るのかの数によってだいぶ変わってきてしまうが、成立する可能性はもちろんある。
 
 では成立して、野田総理が小沢派を全て粛正して、それで終わりっていう可能性もあるんじゃないでしょうか。
 
 そうだな。理屈上はあり得るな。そしたら自民党、これが一番つらいのかな? どうかな? 増税した上に解散も出来ないというのはちょっとつらいな。もちろん筋としてはさっきも言ったように、自民党はずっと増税を主張しつづけていたのだから、政策論としては一番筋を通しているんだがな。
 
 政局論で見るとつらいと。
 
 ここがマスコミの意地汚いところで、普段は政策論議をとか言うくせに、自民党が筋を通すと政局論で批判するんだからな。
 
 あれだけ協議しろ協議しろとマスコミが大合唱しておいて、協議の結果が上手くいったのであれば、評価されても、批判されるコトなんてあり得ないですよね。
 
 全くだ。ただどうだろうな。自民党は、民主党がまとまるっていうのも条件として挙げていたのだから、衆議院で大量の造反が出たら、すぐに参議院で問責を出して可決させ、それ理由として衆議院での不信任案提出っていうのもあり得るかもしれん。造反の数で不信任案も可決する可能性が見えてくるからな。
 
 なるほど。それも筋は通ってますよね。
 
 通ってるな。あと自民党としては2つのシナリオがある。民主党がクーデター的に採決せずに国会をすぐに閉じてしまう場合と、そもそも協議が物別れに終わった場合だ。
 
 協議は明日15日が期限でしたっけ?
 
 うむ。いままで民主党は与野党協議をしても、「与野党協議をしている」っていうことを言い訳にして国会答弁とかはぐらかし、また責任にしても野党にもあるとか言い続けていたから、自民党も公明党もそれを警戒して、協議するのであればキチッと期限を区切るとしたわけだ。
 
 あくまで協議ですから、物別れに終わる場合もあるというコトですね。
 
 いま自民党は自民党案の丸のみを要求している。これは筋が通っている。交渉術がどうこうという技術論ではなく、谷垣総裁がずっと言い続けているように、そもそも今の民主党には消費税を議論する資格が無いわけだから、いまこの状態からしておかしいわけだな。でも自民党としては増税は公約に掲げて続けてきたことだから、もし自民党案であれば賛成するよっていうのは、当然だわな。「自民党案に民主党が乗っかる」のであれば勝手にしろと、そういうスタンスなわけだ。
 
 なるほど。
 
 まぁ民主党にもメンツっつーもんがあるんだろうから、多少なら妥協してもいいけど、でも基本理念は自民党のものにしろと。自民党のものであれば自民党は自民党案に賛成するのは当然だと。そうでなければそもそも民主党には増税を口にする資格なんてないんだから反対して当然だと。本来この問題というのはこれだけの話なんだよな。
 
 実は分かりやすいですよね。
 
 マスコミが屁理屈こねて、なんとか民主党の肩を持とうとするからぐちゃぐちゃになってるだけでな。
 
 ではもし明日までに協議がまとまらなかったらどうなるでしょうか。
 
 野田総理の出方次第だな。野田総理としては消費税増税が自らのデッドラインなんだから、協議がまとまらなかったから自分には責任はありませんとはさすがに無理筋だ。自分で政治生命賭けるって言ってるんだからな。だからこの場合は、国会延長するか、やぶれかぶれで採決に持って行くかだ。
 
 採決にもっていったら確実に否決されますね。
 
 しかも小沢一派の反対付きでな。自民党としたらこれが一番おいしいシナリオかもしれん。
 
 国会延長したらどうなるでしょうか。
 
 どうなるかな。しばらく今の状態が続くんだろう。自民党に再協議を求めるのかもしれんが、自民党は要求を変えないだろうから、野田代表が民主党内をどうまとめるかだな。まとまり切れなかったら……ま、やっぱり意地の解散か、白旗の総辞職かだな。
 
 では、国会が延長されずに閉会してしまった場合はどうでしょうか。
 
 閉会されてしまうというか、閉会されそうになったら、即刻問責と不信任案だろう。この場合不信任案に小沢一派が乗ってくるかどうかは分からないが、問責は通る。
 
 となれば、国会における野田内閣は機能不全に陥るコトになりますよね?
 
 そうだ。ただし問責が可決されても法的には総理は総理のままでいられるから、行政府としての仕事は続けることはできる。つまり次の国会までは総理大臣でいられるってことだな。
 
 次の国会がはじまるとどうなるでしょうか。
 
 当然全ての本会議と委員会が動かなくなるのだから、国会は何も機能しない。総理としてはもはや解散か総辞職しかない。この場合民主党は9月に代表選挙を党則によってやらなければならないコトになっているから、次の国会が始まるまでには新しい代表が決まっているんじゃないかな。
 
 自民党としては、最低限野田総理の首を取ったというコトになると。
 
 やっぱり解散権が総理にある以上は、野党が狙って解散なんて出来ないよな。
 
 ある意味このシナリオだと、輿石幹事長が望むシナリオでもありますよね。
 
 そうだ。だから昨日の国会でもやってたんだが、未だに民主党は国会延長の打診を自民党にしていないらしい。完全に輿石幹事長と城島国対委員長の狙いはここにあるという証左だな。
 
 とりあえず以上が立場の違いによる狙っているシナリオですね。
 
 やっぱりゲームでは無く、生の人間が動いていることなのだから、なかなか難しいわな。
 
 
 ではズバリ、解散はあり得るのか、そしてそれはいつになるのか、あまおちさんの考えを聞かせてください。
 
 一番早いので来週。この場合は民主党が自民党案を丸のみし協議が合意に至り衆参で採決が成されて小沢一派が造反する場合だな。小沢一派の数も問題になってくるが、場合としては解散せざるを得なくなる。また、協議が物別れになったとしてもやぶれかぶれで野田総理が採決にもっていく場合でも解散はあり得るな。
 
 ではもし輿石幹事長のクーデターで国会が閉じてしまって場合はどうでしょうか。
 
 この場合は、あれだけ増税を言って協議までさせたのに国会を閉じるとは何事だと自民党が不信任案と問責を出すだろうし、少なくとも問責は通るわけだから、野田内閣の寿命は尽きたと言えるだろう。ただこの場合すぐに解散するとは思えない。9月の民主党代表選挙まで粘るんじゃないかなぁ。
 
 では延長した場合は?
 
 それは延長した後の与野党の行動にかかってくるな。でも構図は全く変わらないから、時期が後ろにずれるだけだ。普通通常国会の延長はお盆までにはかからないことがほとんどだから、お盆選挙か。それはそれですごいなぁ。
 
 憲法で定められている1月に必ず開かなければならない来年の通常国会まで、ずーっと延長し続ける論もあるようですが。
 
 政治って、思想の議論と違って、答えと結論を出すものだから、期間を区切らないという行為はやってはならんと思うんだが、でもこれやっても、民主党内での代表選挙があるから、どっちにしても野田内閣は終わりだろ。
 
 この場合、ついに鳩山-菅-野田-新総理と4代続いてしまうワケで……。
 
 そう。民主党が散々批判してきた「選挙を受けていない総理」が自民党のそれよりも多くなるのだから、さすがにこれは持たないぞ。
 
 つまりどちらにしても近いうちに解散がありそうですね。
 
 ただこの場合は自民党も9月に総裁選挙だから、谷垣自民党ではない可能性もあるがな。
 
 なるほどぉ。でも新総理の顔の皮が厚すぎて、任期満了までやるっていう可能性もありますよね。
 
 あるな。輿石幹事長なんかはこのシナリオが理想だろうな。来年の衆参同時選挙っていうことになるわけだ
 
 でも国益の観点からすれば……
 
 どうにでもなぁれ。
 
 
 というワケで、かなり長くなっちゃいましたから、この辺でしめましょうか。以上がこれから予想される国会の動きでした。本日の解説は、昨日別のサイトのサーバー代を払い忘れてしまって半日ぐらいサイトが見れない状態にしてしまった、あまおち総統でした。
 
 おぉぉぉぉいいいいい、それここでは関係ねぇだろおおおおおおっ!!
 
 それでは、ばいに~。