3党合意には自民党の従来の主張通り景気条項が入っている

 さて。
 月曜火曜と、そもそも麻生総理にNOを突き付けたのは国民ではないか、菅内閣を生き残させ、3党協議すら後押ししたのは国民じゃないかというお話をしてきました。
 政党が出した政策にNOを国民から突き付けられれば、政党はそのメニューを変えるのは当然のお話ですという内容でした。
 でも今日は、実は思っていたより谷垣総裁は頑固だったというお話をしたいと思います。
 
 先週金曜日の自民党での臨時役員会・総務会後の石原幹事長の記者会見です
 

 谷垣総裁からは、「社会保障と税の一体改革についてどう出口を見つけていくかを踏まえて協議を進めてきた。協議に入るに当たり、3つの方針を示した。(1)15日までに結論、21日までに採決(2)民主党が社会保障制度改革基本法を受け入れる(3)税は累次の取りまとめの範囲内で対応。社会保障から協議に入ることを前提として協議に入りの了承を頂いた。ほぼ協議がまとまりつつある。与党の手続きがどうなるのか問題はあるが、今後の進め方について相談したいのでよろしくお願いしたい」との発言があった。こういう話があって議論があって、私のほうで、「極めて政治的な話なので、総裁に取り扱いをご一任頂きたい」ということを申しまして、ご了解を頂いたのが役員会の模様です。
 主な意見ですが、「消費税率8%あるいは、10%になる際の条件はあるのか」、これは当然のごとく、時の政権が、来年の秋ですが、今、議論の中で、成長戦略等々、或いは減災・防災を充実することも書いておりますので、そういう経済成長を前提に、時の政権が判断する。それにプラスアルファ、一年後に国民会議で社会保障の全体像を示す。この2つの縛りがかかっておりますので、自動的に2014年4月に消費税は増税されません。くどいようですけど、社会保障の姿が示され、かつ経済状態が良好で、なおかつ、今、申しましたように減災・防災、成長分野にしっかり投資が行われることを前提に、時の政府が判断する。そういう法律の枠組みに、今、税の専門家の方々に調整頂いている。
 その他、やはり法案でございますので、「非常に言葉が難しい。どう読むのか。わかりやすい説明が必要だ」との意見、また、「この法案を取りまとめ、民主党と共同提出して、解散に追い込めるのか」、「総裁が全権委任大使だから、野田総理も全権委任大使になるべきだ」というごもっとも意見がありました。以上です。

 
 太字のところをご覧下さい。
 自民党が求め続け、自民党と公明党はすでに党内手続きを終わらせている成案では、「成長戦略等」「減災・防災の充実」という「経済成長を前提」にして、それをその時の内閣が判断して増税するかどうかを決めるという仕掛けになっているという内容です。
 下の太字がもっと分かりやすいですから、そのまま書き出しますね。
 「社会保障の姿が示され、かつ経済状態が良好で、なおかつ減災・防災、成長分野にしっかり投資が行われることを前提に、時の政府が判断する」です。
 つまりその時の内閣が、社会保障も経済も良くなく、減災・防災、成長分野への投資が十分でないと判断すれば、消費税の増税は行われないというコトもあり得るという内容なワケです。
 「自動的に2014年4月に消費税は増税されません」なのです。
 これは石原幹事長が自民党を代表して、自民党の役員会と総務会(自民党の最高意志決定機関)で了承された内容だと発表しているのです。
 
 どうでしょうか、これは自民党の従来の主張通りなのではないでしょうか。
 
 もちろんですが、麻生内閣の時のそのままの内容ではありません。
 だって麻生さんは「日本経済は全治3年」とおっしゃっていたのですから、麻生さんのあの時の政策で言えば、少なくとも3年は増税は無いというコトだったのですから。
 でも現在はあの時とは状況が違いますし、そもそも「日本経済は全治3年」なんて格好いいコトを断言出来るのは麻生さんぐらいですから、そしてそれにNOを突き付けたのは国民自身ですから、あの時のコトは望めめません。
 望めませんが、でもそれでも少なくとも自民党は、勝利を得て国民の負託を得ている前の参議院選挙の公約については、この3党合意の中でキッチリと踏襲していると言えるのではないでしょうか。
 
 合意された成案文そのものを見ていませんから、具体的にどのような書き方になっているかが分かりませんから、どの程度自民党の参議院選挙の時の公約が踏襲されているかはやえには分かりません。
 また平成21年というのはもう3年も前のお話ですし、この3年間で民主党政権が日本をグチャグチャしてしまいましたから、あの時の計画のままで現在をそのまま考えられるとは思えませんし、そして3党合意という折衝が入りましたから、それぞれの事情を鑑みてある程度変節するのは仕方ないと思いますし、状況判断で変節してしまうのは、ある意味やるべきコトです。
 その辺は技術論の部分になるのでしょうから各専門分野の専門家に任せるとしても、でもそれでも基本精神の部分については、自民党は折衝ごとであった3党合意ですら自ら掲げている公約を盛り込ませて踏襲させてるコトに成功しているワケです。
 参議院選挙の公約に書かれていた「平成21年度税制改正法附則」や「中期プログラム」という文言があるのかどうかは分かりませんが、しかしこれで少なくともその基本的な考え方や精神というモノは完全に踏襲されていると言えるでしょう。
 今回の案は自民党案丸のみと言われていますが、この自民党の折衝能力は、素直に称賛に値すると言えるのではないでしょうか。
 
 まぁ自民党の手腕についてはともかくとしても、事実としてはこうです。
 税と社会保障の一体改革に関する民主・自民・公明党による3党合意においては、自民党が求め続けていた「社会保障や経済状況に関する条項」が盛り込まれているのです。
 これは自民党の従来の主張通りです。
 
 谷垣総裁は頑固ですね。
 一部では「民主党に増税をやらせた方が自民党は得だろ」みたいなちっちゃな政局論を語る人もいますが、そもそもここまで3党合意と報道されている中ではそんなモノ無意味だと思いますし、何より結局「その時の内閣が判断する」というスイッチを自民党自ら作ったのですから、その時の内閣が自民党政権だってあり得る、自民党は即時解散を求めている以上は十分それを想定した上での、自民党政権の内閣、もっと言えば「谷垣内閣」での消費税増税の閣議決定をする可能性を分かった上での、含んだ上での主張なワケです。
 それでも谷垣総裁は、国民に批判や罵声を浴びせられながらでも、従来の主張を押し通したのです。
 自らが泥をかぶる可能性も含んだ中での覚悟を決めたのです。
 これのどこが「自民党は得」なのでしょうか。
 谷垣総裁は頑固ですね。
 
 それにしても、やっぱりと言うしかないのですが、マスコミっていうのは卑怯で害悪ですよね。
 そもそも「自民党も参議院選挙の時には増税を公約にしてたじゃないか」と言っていた時ですら、自民党の景気条項については全く触れようとしなかったワケですが、いまも完全にそうですね。
 ただただ2014年に増税決定と、そう喧伝するだけです。
 大嘘です。
 害悪です。
 マスコミのウソには騙されないようにしましょう。
 
 でもこれで、自民党も筋を通し、基本的な精神は曲げずに、折衝にも勝って、自民党は自民党の政策を突き進めているというのは分かりましたね。
 自民党を評価する場合は、自民党が野党になってからも震災対策や様々な法案に対してどんな行動をとってきたのか、そして税の問題でも一切逃げずに正面から自らの主張を張ってきた事実をまず知ってから、その評価をすべきでしょう。
 評価は人それぞれですが、まずは事実を知らなければなりません。
 そして自民党はこういう行動を取っているのです。