狡猾な日本の外交

 今日はこちらの記事です。
 

 日本は制裁対象外=欧米の青果など禁輸-シベリア上空通過料見直しも・ロシア首相
 
 ロシアのメドベージェフ首相は7日、ウクライナ情勢をめぐる対ロ経済制裁の報復措置として、米国と欧州連合(EU)、オーストラリア、カナダ、ノルウェーからの青果物、肉類、魚、乳製品の輸入禁止を発表した。期間は1年。制裁発動国の一つである日本は対象外だった。
 日本は、ロシアが編入したウクライナ南部クリミア半島からのワイン輸入禁止など経済制裁を科している。ただ、ロシアとの関係への影響を最小限にとどめる思惑から、日本の制裁は限定的だったため、プーチン政権は欧米とは異なる対応を取ったとみられる。

 
 ギリギリのところで関係を保ち続ける日露関係ですが、今回もまた、綱渡りかのようなギリギリの関係を保ち続けるコトができました。
 先日日本がウクライナのマレーシア機撃墜事件に対してロシアに制裁をすると発表してから、戦後最高、いや有史以来最高の日露関係になったその友好関係がいよいよ決裂してしまうのかと思ったら、ギリギリなんとか踏みとどまりました。
 これについて「ロシアが日本と欧米とに差を付けて揺さぶりをかけようとしている結果だ」と言う人もいますが、やえはどちらかと言えば、日本とロシアのプロレスとも言えるような綱渡り外交の成果だと言えるのではないかと思うのです。
 
 実際日本がロシアに対して発動した制裁というのは、以下の内容です。
 

 40人、2社の資産凍結=対ロ追加制裁を閣議了解-政府
 
 政府は5日午前の閣議で、ウクライナ情勢をめぐる対ロシア追加制裁措置を同日付で実施することを了解した。クリミア半島の併合とウクライナ東部の不安定化に直接関与していると政府が判断した40人と2社に関し、外国為替法に基づき資産を凍結することが柱。クリミア産品の輸入も制限する。
 制裁対象となる40人には、ヤヌコビッチ前大統領やアクショノフ・クリミア自治共和国首長代行らが含まれている。2社はともにクリミア自治共和国域内の石油・天然ガス関連会社。ただ、いずれも日本国内に保有する資産はほとんどないもようで、制裁の効果は限定的とみられる。

 
 これ、記事も認める「効果が限定的な制裁」です。
 実際、限定的というよりも、実情としてはほぼ無意味な、形だけの制裁と言えるでしょう。
 確かに、1つの策に対して複数の効果を求めるというのは常套手段であり、ロシアも欧米と日本との温度差を狙った部分もあるかもしれませんが、でもそもそもこれは、日本の方が先手となって「形だけの制裁」を決めたワケであって、ロシアはそれを受けての「日本は対象外」ですから、これはもう両国がお互いにギリギリのラインでの友好関係の継続を求めた結果なのではないのかと考える方が自然でしょう。
 もしかしたらすごい水面下で調整があったのかもしれないと勘ぐるぐらいの、そんなギリギリさです。
 
 以前にも書きましたように、日本と欧米との立場は違います。
 特に、複数の大国が手を組めるヨーロッパと、一国だけで中国とロシアというG7並みの大国を相手にしなければならない日本とでは、全然立場が違います。
 そんな日本としては、ロシアと中国を向こうに回して二正面作戦を強いられるコトだけは避けなければなりませんし、しかし同時に、G7との関係も切るワケには決していきません。
 よって日本は、G7に歩調を合わせると見せつつ、ロシアと正面からケンカしない、そんな綱渡りな外交をしなければならないのです。
 

 米副大統領が日本の対露制裁を歓迎 首相と電話協議
 
 安倍晋三首相は31日、バイデン米副大統領と電話で協議した。米ホワイトハウスの発表によると、バイデン氏はマレーシア航空機撃墜を受けて日本が発表したロシアに対する新たな制裁措置を歓迎。また、ロシアに圧力をかけ、ウクライナを不安定化させる活動を止めさせるため先進7カ国(G7)が協調することの重要性を確認した。

 
 そしていまの日本政府は、それを見事に成功させているのです。
 どうも日本の国民やマスコミは、必要以上に政治を貶す上に、褒めるべき点があっても無かったかのようにスルーしてしまうところがありますが、しかしこれは賞賛に値するのではないのでしょうか。
 日本は世界外交において、メインプレイヤーとして独自の動きを見せて世界秩序のバランスを取っているのです。
 すぐに「日本はアメリカの言いなりだ」とか日本人自身が言ってしまいますが、そうではないコトぐらい、この一連の外交を見れば一目瞭然でしょう。
 むしろアメリカですら手玉に取っている、とは言い過ぎでしょうかね。
 
 いつもやえは言ってますが、外交は結局は人間関係ですから、それだけに政権が変われば外交の上手い下手が極端に変わる分野です。
 それは民主党政権やオバマ政権を見れば簡単に分かります。
 ただ、忘れては成らないのが、日本は「できる力」を持っている、というのは確かな点だというコトです。
 いつもいつも追従外交なのではなく、独自にやろうと思えば、日本という大国はそれだけの潜在力は持っているという点を忘れてはなりません。
 いくらマンパワーがあったとしても、基本的な国家の力が弱ければ宝の持ち腐れです。
 そういう意味では、日本には軍事力がソフトの面でかなり弱いという点が、やはりとても痛いところでしょう。
 これで日本に軍事力という力を得られれば、ますます世界外交で力を発揮できるハズなんですね。
 集団的自衛権程度で色々と揺さぶりをかける勢力もいますが、こうした現実を前にして、さらに日本が打つべき手は何があるのか、真剣に考えたいところです。