制度ぐらいは調べて欲しい

 「国民の見抜く力」シリーズになるのでしょうけど、今朝ほどちょっと気になるツイッターでのやりとりをみかけたのでご紹介したいと思います。
 自民党の礒崎陽輔参議院議員と、一般人の人とのちょっとしたやりとりです。
 

 国会事故調、これまで政府を追及指摘してきたことをかなり裏付けしていただいたことは、一定の評価をします。しかし、国民が真に知りたいのは、発災後1日、2日の内に水素爆発を防げなかったのか、技術的な真実であります。そこへの切り込みが甘い感じがします。
 
 甘い感じではなく甘かったら徹底的にしなくては。そういう体たらくだから自民党への信頼感がなくなるのでは?
 
 事故調の話をしているのですよ?
 
 だからこそ、もっと切り込んで欲しいのです。でもすぐに返信いただける姿勢には感謝いたします。礒崎さんの国会答弁はわかり易くて好きです。山本さんなどは返信しないばかりか発信力とかいってヒット件数ばかり気にしてますから・・・

 
 このやりとりを見て、まずどのようなご感想を持つでしょうか。
 その通りだって思うでしょうか。
 それとも、ん?って思うでしょうか。
 
 おそらくこの一般人の人というのは、福島原発の国会事故調査委員会のコトをよく知らないのだと思われます。
 多分ですがこの人、「国会」と名が付いているので国会議員が調査している委員会だと、つまり予算委員会や経済産業委員会とか、その辺の委員会と一緒だという誤解しているんだろうと思われます。
 だから国会議員である磯崎先生に「もっと切り込んで欲しい」と言っているのでしょう。
 でも残念ながら、まず基本的にここの部分が間違いなのです。
 
 国会の事故調査委員会は、国会に置かれていますが、そのメンバーは全て民間人です。
 国会議員は1人として入っていません。
 それはそもそも当然のお話なのですが、この事故調が設置された理由、つまりなんのために国会に事故調を作ったのかと言えば、それは公平中立の立場での調査が必要だと判断したからです。
 公平中立を保つために、政府から距離を置く国会の中に設置され、また同時に国会議員がメンバーに含まれていないワケなのです。
 
 原発事故の事故調は政府の方にも設置されているのですが、これは文字通り行政府の中に置かれている事故調査委員会で、その仕組み的にも完全に内閣の管理下に置かれている事故調です。 
 ですから例えば事故調のメンバーが「この案件に対して不手際を感じる」と報告書に書こうとしても、すぐに大臣とか副大臣とか官僚とかがやってきて、「ここはこうだったんだ。だからそれは間違いだ」と上から圧力がかけるコトが普通に出来るワケです。
 そもそもメンバー自体が野田内閣だけの判断で決めるコトが出来るワケですし、さらにその事務局は中央省庁の官僚なのですから、政府事故調とは最初から野田内閣と官僚の統制下にある事故調なワケで、これでは公平中立に事故を分析するコトなんてできはしないでしょう。
 
 こういう観点から国会の事故調は設置されました。
 国会事故調設置法はこの点を危惧した自民党が法案を作って与党にも飲ませて成立した法律ですが、この国会事故調には政治家は入りませんし、中央省庁の官僚も入らない仕組みになっています。
 ちょっと前に問題になりましたが、国会事故調のメンバーには正式な手続きを踏まない限り大臣や国会議員や官僚が接触するだけでも禁止だと、これは法律によって規定されているコトなのです。
 野田内閣はこれを破って以前問題になったワケですが、このように政党色や政治色、霞が関色を一切排除したモノが国会事故調なのです。
 さらにそのメンバーも、衆議院と参議院の議院運営委員会の合同協議会が推薦した上で両議院に承認を得た上で議長が任命するという、基本的に全ての政党が関わる形での公平さに十分配慮したシステムになっています。
 このように国会事故調は、民主党政府が自分達への自己弁護を一切排除した、もちろん自民党や他の政党にも肩入れをしない、公平公正な立場での事故調査委員会なのです。
 
 昨日国会事故調が報告書をまとめたワケですが、説明が長くなりましたが、国会事故調とはこういう存在ですから、国会議員である磯崎先生もその調査には一切関われません。
 むしろ関わってはいけません。
 そういう事情の上で磯崎先生はそれを受けて、「こへの切り込みが甘い感じがします」とコメントしたワケですね。
 さてこれをどう捉えるべきでしょうか。
 それは当然、国会と名が付きますが、システム的には全く「外の人間」として、客観的に事故調の報告書への感想を述べていらっしゃるんですね。
 我々一般人が事故調の報告書に対して感想を言ったのと全く同じ構図で、磯崎先生も感想をおっしゃっただけなのです。
 
 この構図をこの一般人の人は理解していないのでしょう。
 国会と名が付くから磯崎先生もこの委員会に関わっているだろうと、磯崎先生個人は関わっていなくても自民党は少なくとも関わっているだろうと、そういう思い込みからの「甘い感じではなく甘かったら徹底的にしなくては。そういう体たらくだから自民党への信頼感がなくなるのでは?」という発言だと思われます。
 つまり自民党が関わっているんだから、自民党の議員が他人事にように言うのではなく、もっと徹底的に主体的にやれよと、そんなコト言ってるから信頼感がなくなるんだと、そう言ってしまっているワケです。
 でも残念ながら、それはもはやとんでもないイチャモンだともう分かりますよね。
 だって磯崎先生も自民党も、国会事故調に関しては一般国民と同じ「外の人間」なのですからね。
 では「そういう体たらく」と言ってしまっている人自身に対しても、「貴方のせいで甘い感じになっているんですよ」って言ったら、この人はどう思うでしょうか。
 まさに磯崎先生の「事故調の話をしているのですよ?」という、この人は何言ってるんだろう的な心境になってしまうコトでしょう。
 でもこの人は、それぐらいメチャクチャなコトを磯崎先生に言っているのです。
 
 立法府と行政府の違いのお話もそうなのですが、これぐらいは正直自分で調べて欲しいと思うのです。
 ましてツイッターという誰でも見れる公の場で意見する、さらに現職の国会議員に直接言葉をぶつけるのであれば、最低限現存するシステムのあり方というモノを調べるというのは礼儀ではないのでしょうか。
 義務なのではないでしょうか。
 国会事故調はキチンとサイトも作られていますし、その構成や関連法律、報告書も逐次公開しています。
 当然メンバーも公開されているワケで、キチンと調べれば自分が国会議員にメチャクチャを言っているコトぐらいすぐに分かるハズです。
 こういうコトをせずして他人にデタラメを言うのは、それは国民の責任を果たしていないと言うしか無いのではないでしょうか。
 やえはそう思ってしまいます。
 
 それともこれもハードルが高いのでしょうか?