内側から見た谷垣総裁の評価を考察してみる

2012年9月14日

 ひさしぶりにあまおちさんが本気を出したみたいなので、今日はあまおちさん更新です。
 いつももうちょっと出してくれればいいんですが……(笑)
 
 
 はいどうも。
 ちょっと危機感というか、気持ち悪い空気とか、こりゃいかんのじゃないのかなぁと思って書くことにした。
 というのもね、政治家を天皇化させたら駄目よ。
 必要が無いのに批判するのも馬鹿馬鹿しいけど、タブーと化してもやっぱり駄目よ。
 なんかね、最近の谷垣さん、タブー化してないか?
 特に政治家側から。
 ちょっと前まで自民党の中からもいっぱい批判あったじゃん。
 3党協議をするかどうか、3党合意をするかどうかの時なんて、すごかったじゃん。
 「谷垣じゃ次の選挙は戦えない」なんて声、普通に聞こえてきてたじゃん。
 でもいま「谷垣路線からの脱却」とか言う人いなくなってしまった。
 なにかこう、谷垣総裁は天皇として別の段階に置いておき、それとは別のところで選挙しましょうみたいになってしまってはいないだろうか。
 これは絶対に良くない。
 政治家をタブー化させるのは自由主義にとっての害悪にしかならない。
 それは谷垣さん本人にとっても絶対に良くないことだ。
 
 一番いけないのが、「谷垣さんは3年間頑張ったんだから批判するな」というような言い方だ。
 確かに野党転落直後という誰も総裁をやりたがらない時に火中の栗を拾いに行った谷垣さんは立派だと思うし、心情的にはよくやったと思ってる。
 ただそれは、決して批判してはならない理由にはならない。
 それこそ「是々非々」で物事は考えなければならない。
 
 オレは谷垣さんは高く評価している。
 特に行政手腕の高さは財務大臣時代に証明もされているワケで、オレとしては「谷垣総理」を見てみたかった。
 だから心情的には谷垣総裁続投でも全然応援していたかった気分ではある。
 ただ、それと「事実からの分析」は別問題である。
 オレが谷垣さんをどう思っていようが、そして当然石原さん、安倍さん、石破さん、林さん、それぞれをどう思っていようが関係なく、「実際に起きている事実を受け止めた上での分析」は必要である。
 むしろ思想家名乗ってる以上は、心情的な部分を抜きにした上での事実の分析をしなければならないだろう。
 「自分は何があっても自民党支持だ」という立場を最初から決めている人間ならまだしも、少なくともオレはそうではないのだから、事実は事実として踏まえた上でそれを分析する行為というのは、政党や政治家を評価する上では絶対に必要な行為である。
 そういう事も踏まえた上で、谷垣総裁を巡る動きについて事実を分析したいと思う。
 
 「外から見ればいい人に映ってるかもしれませんが、身内からすればとてもいい人とは言えません」
 このセリフ、どこかで一度くらいは聞いたことあるだろう。
 もしかすれば自分の身で今現在そういうことになってしまっているかもしれない。
 もちろん外から見た評価も評価だからそれは自分の中での評価にして構わないが、しかし別角度から見ればそういう評価もあるってことも事実として1つ受け止めなければならないことだ。
 だから自分が・他の人が「オレはこう見るんだ」と言うのは一向に構わないが、それとこれとは別問題であり、事実を突き詰めて考えればこういうこともあるんだろうという話として聞いてほしい。
 だって本来、政治ってそういう表に出る事実を突き詰めた上で解釈して考えるもんだろ?
 だからオレはいつも通りそれをやるだけだ。
 
 谷垣さんは出馬を断念した。
 一方立候補者はこれで5人となった。
 任期ははじめから決まっていたから、この時期に総裁選挙をする事も分かっていた。
 その上で、「谷垣総裁の3年間」を踏まえた上で、5人の立候補者が出た。
 
 ただこれだけの事実をもってしても、では何が言えるのかを考えれば、結局自民党所属の国会議員の大部分の中では「谷垣総裁では駄目だ/駄目だった」と評価を下したという事だろう。
 よくこの場合石原さんのみがやり玉に挙げられるが、それは違う。
 何が駄目だったのかという部分は議員によって論拠が変わってくるのだろうが、とにかく「谷垣さんでは駄目だった」と思うからこその立候補であり、推薦人なのである。
 特に谷垣さんはギリギリまで立候補すると議員からも国民からもマスコミからも見られていたわけで、それを押して立候補したというのは、「谷垣ではなく自分(もしくは支持する立候補者)の方が総裁としては相応しい」と思わなければ立候補や支持なんてしない。
 そしてそれが今回、単純計算5人の立候補者に対してそれぞれ最低20人の推薦人、つまり105人の自民党国会議員が動いたのであり、よって「このままの谷垣自民党では駄目だ」という評価を下したわけだ。
 これは、会派離脱中の衆参の副議長2人を合わせても現在自民党所属国会議員は202人、つまり表には出ていないけど議員同士ではすでに約束をしているっていう人すら含まずに、単純に表に出ている人数だけを数えたとしても、「谷垣総裁のままでは駄目だ」「谷垣総裁の元では仕事が出来ない」と思った人が国会議員の中で過半数いるということになるのである。
 こういう事実が事実としてあるのである。
 
 石原さんに対しては執行部なのにっていう批判があるようだが、むしろ逆の見方だって出来る。
 例えば臨時株主総会で社長が電撃解任されたってニュースはたまに出るが、この場合社長の手腕や部下に対する当たり方に問題があったと見られる場合が多いだろう。
 実際のところどうなのかは個別案件だから一概には言えないが、ただこういう見方もあるのは確かだし、社長に問題があったという場合だってあろう。
 そう考えればやはり谷垣さんに対しても、むしろ執行部ですら支持されないような事情があったという可能性だって十分に考えられるはずだ。
 例えば他の幹部の話を全然聞かないような人だったのかもしれないし、逆に自分では何も出来なくて下の人が何かを持ってこなければ話が進まないような人だったかもしれない。
 もちろんこれは想像だが、しかしオレも含む一般国民は谷垣さんと一緒に仕事をしたことなんてないのだから、実はそういう面がある人である可能性は否定出来ないし、結局他の議員はついていかなかった事を考えれば、そういう可能性は十分に想像しなければならない事ではないのだろうか。
 
 こういう記事がある。
 

これが3党“解散密約”の全貌だ!実は“密約文書”ある
 
 公明党の漆原良夫国対委員長「文書を詰めなければならない。口頭で言った、言わないという話になってしまう。文書で残すということだ」
 自民党の岸田文雄国対委員長「形あるものを詰めないとダメだ」
 民主党の城島光力国対委員長「えらい作業だ」
 漆原氏「ギリギリの作業だ。それぞれ党内を抱えながらになる」
 岸田氏「ずっと表で行くのか、裏で行くのか」
 漆原氏「裏だね」
 岸田氏「全部表では持たない」
 城島氏「持たないっすよ」
 漆原氏「あとは水面下でやればいい」
 城島氏「それはそうだ」

 
 国会対策委員長間では「密約文書」があったとする記事だ。
 正直オレはこの記事だいぶ眉唾物だと思っているが、ただあの時の「近いうちに解散」という言葉が飛び出した党首会談の前に、国対委員長会談が行われたのは事実だし、さらに自民党の岸田文雄国対委員長は民主党の城島委員長に対して「そんな曖昧な文言では駄目だ。文章で出せ」と要求し、民主党の要求を突っぱねて、国対委員長レベルでの会談は決裂したという出来事は確かにあった。
 主要紙がこぞって伝えてたし、その報道をテレビで見た人も多かったはずだ。
 つまりこれは、自民党にとっては少なくとも岸田国対委員長レベルでは、「このままの民主党は出鱈目な対応を続けるのであれば、3党合意は破棄だ」と決定したという事であったのだ。
 国対レベルでは「3党合意破棄で構わない」としていたという事だ。
 
 ではこの先どうなったか。
 それはもう日本全国の国民が知っているだろう。
 「近いうちに」という一言をもって、3党合意は継続されたのである。
 日本中ズッコケたよな。
 オレもズッコケたよ。
 すなわち事実として残った事は、国対委員長は蹴った、でも総裁は受け入れた、という事実だ。
 
 当サイトとしてはこの事象を、「谷垣―野田間で今国会解散の密約があるとしか思えない」と評した。
 でなければとてもじゃないが谷垣さんの行為が説明つかないのである。
 今国会(もう終わってるが)中に解散しなければ絶対に総裁選が行われる、ここまでやっておいて総裁選になればとてもではないが谷垣さんが自民党議員の中で支持されるとは思えない、だから谷垣さんの道としては「3党合意を蹴る」か「解散の密約をした」かのどちらかしかないと、これも事実を踏まえた上での分析として、そう評したのだ。
 当時やえちゃんはこう書いている
 

 その上でもうちょっと考えましたらですね、谷垣総裁は総裁の任期が来月9月で切れます。
 つまり自民党は来月には総裁選挙をするってコトですが、仮に谷垣総裁が、消費税関連でここまでやっておいて党首会談までやっておいてこれで総裁選の時にまで解散出来ていませんでしたってなったら、とてもじゃないですけどまた総裁として信任されるとは思えません。
 そしてそんなコトは谷垣総裁自身がよく分かっているコトでしょう。
 ですから、ここも含めて党首会談の中でなんらかの確約を得ているのではないかと想像するのです。
 さすがに谷垣総裁も、自分の身を100%相手に預けるなんてコトはしないでしょう。
 
 よっていまの状況というのは、野田総理が約束を守って解散するか、もしくは約束を破られて谷垣総裁が失脚するか、2つに1つの段階に来たというところなのではないかと思います。

 
 当時はこの見方に関してさえかなり甘いと言われた。
 「ただ単にいつも通り谷垣が野田に騙されただけだろ」っていう評価の方が多かったと記憶している。
 そして結果は、まぁそうだったと言わざるを得ない。
 会期内の解散は無かったし、そのまま総裁選を迎えることになった。
 当サイトとしては「もしくは約束を破られて谷垣総裁が失脚するか」という部分になったわけだが、つまりこれをどう評価するか、特に自民党の国会議員はどう評価しているのかという部分も考慮すべき点であろう。
 
 そもそも自民党内でも民主党政権時に消費税をやる事に否定的な議員は多かった。
 それを谷垣総裁は「解散させることを優先に」という事で党内を押さえてきたわけだが、結局その結論の部分が果たされなかったのだ。
 それまでの過程の部分は良かった。
 谷垣自民党は本会議採決も1人か2人ぐらいの欠席だけで一致団結したし、法案自体は成立させることに成功した。
 でもこれは、「早期解散」の方向に舵を切った谷垣方針からすれば過程に過ぎないのである。
 よって、過程は100点といってもいいのだが、残念ながら肝心の結果が0点になってしまった。
 無理してでも消費税賛成に納得した議員にとっては、これはやっぱり納得しづらい結果だったのではなかろうか。
 また民主党と直接対峙していた国対委員長以下国対の議員も、なかなかに複雑な心境があったのではなかろうか。
 
 結局谷垣さんは総裁選に立候補しなかった。
 むしろ出来なかった可能性の方が高い。
 それは推薦人だ。
 自民党の総裁選挙は、まず20人の推薦人を集めなければ立候補自体が出来ない。
 でもそれが集まらなかったのではないだろうか。
 様々な声を総合すると谷垣さんの推薦人になるぐらいの支持の声を上げていたのは旧谷垣派(もとは加藤紘一議員の派閥ですね)の議員のみで、これは20人にはほど遠い数である。
 結局ここからも、総裁としての谷垣さんを応援する党内からの支援は集まらなかったと言えるのだ。
 党首会談の事も含めて本当に谷垣総裁でこの3年間良かった、これからも谷垣総裁でやっていける、と思うのであれば自ら名乗り出て谷垣候補の推薦人になるべきなのに、そういう人が20人も集まらなかったのだ。
 この事実も考慮すべき事柄なのではないだろうか。
 
 具体的な谷垣総裁への内部からの評価の言葉は分からない。
 なぜなら今谷垣さんは天皇化してしまって、内部からの批判がタブー化してしまってるからだ。
 しかしちょっと前までは批判はたくさんあったし、決して評価が高かったとは言いづらいものがあったのは事実だ。
 そしてその上で「党内の過半数は支持しなかった」「推薦人20人も集まらなかった」という事実がある。
 この事実は事実として受け止めた上での分析が必要であろう。
 
 もちろん党内からの評価の方が、各国民個人の評価より優先させるとは言わない。
 それでも谷垣さんを応援するっていう人は、それは自由だと思う。
 オレはそれを否定しないし、今でも谷垣さんの行政手腕は高いと思っている。
 でもこれは個人の見方という面での分析ではない。
 あくまで自民党内での動きを見た上での、個人的感情や評価を排除した上での分析である。
 特に総裁選っていうのはどこまでいっても自民党の内部事情に過ぎない。
 自民党のトップを決める選挙なのだから、党内の事情や評価も考慮対象だろうし、特に直接総裁の下で働く事になる自民党議員にとっては「仕事のやりやすさ」はかなり重要なファクターであるのは言うまでもない。
 よって今回のこの動きというものは、そういう面もあった可能性が十分にあるってことは、政治を分析する上では冷静に受け止めなければならないことだろう。
 
 ただ単に「自分が支持する人でない人」を「自分と敵対する人」を批判したり攻撃したりすればいいってものではない。
 なにより、政治家を天皇化させてはならない。
 何者もタブー視することなく、事実を事実として積み上げた結果として、政治を評価して分析すべきだ。
 谷垣さんの私兵であれば他人を攻撃するのも理解出来る行為であるが、少なくともオレは違う。
 自民党の私兵でもない。
 これからも冷静に事実を積み上げて分析していきたいと思う。