TPP:反対論を考えてみる 4

4.郵便貯金など○○がアメリカの餌食になる
 
 これ郵政民営化の時にも散々言われたモノですが、特に郵便貯金に関してはこんなコトを言うのであれば、まず日本国における郵便貯金の位置付けをキチッと考え直す必要があると思います。
 例えば自由貿易によって民間会社である郵便貯金が何らかの方法でアメリカの企業に吸収されたとしても、それは普通に「競争に負けた」という状態ですよね。
 もちろんやえはそんな状態を望んでいるワケでは決してありませんが、ただこれは前にも言いましたように、競争に負けるコトを制度の責任に押しつけるような言い方というのはTPPの制度を考える上では適切では無い物言いだと言えます。
 
 銀行業って民間営業じゃないですか。
 郵貯も現在は民間会社になっているワケで、ではTPPによる競争の中でなぜ郵貯だけが特別に保護されなければならないと言われるのでしょうか。
 他の銀行は競争すべきだけど郵貯だけはダメっていうのは理屈になりません。
 もし郵貯が日本国において特別な銀行だっていうなら、それは民間会社にすべきではなかったと言えます。
 例えば日本銀行という一般の銀行とは違う特別な役割を持つ銀行は特別に保護しなければならないと言うのは分かりますし、この場合もし本当に日銀が外国に買われる可能性があるのであれば、「日銀がアメリカに狙われる」っていう批判は筋が通ります。
 でも郵貯は本当にそう言うのに適切な存在なのでしょうか。
 これは人それぞれの価値観というよりは、民営化している一民間会社であるという事実の上に考えるべき問題です。
 一民間会社に向かって「国家として特別に保護すべき特別な存在」と言うべきなのでしょうか。
 それなら民営化すべきではなかったのです。
 
 日本の国債を最も買っているのは郵貯だというコトも知ってますし、繰り返しますが、やえはアメリカに屈しても良いとは毛頭も思っていません。
 ただこれは理屈として「民間会社を特別視する」というのは筋が通らないというお話です。
 郵貯の筆頭株主は日本政府ですが、民間会社には違いありません。
 国債も、基本的には誰でも買うコトができる、外国の企業でも国でも買うコトができるモノですから、そのルールを前提として考えるのであれば、それらを守るためには自由貿易のルールをねじ曲げて守れと言ってしまうのではなく、そのルールの中で守る手段を考えるべきでしょう。
 日本政府が郵貯の株の過半数を持っていれば、少なくとも郵貯は外資企業になるコトはありませんしね。
 
 郵貯に限らずいろいろなモノが「アメリカの餌食になる」なんていい方を聞きますが、それは果たしてどういうプロセスでそうなってしまうのか、具体的に中身を聞かせて欲しいです。
 やえはTPPの全てを知っているなんて言いませんし、知らないコトも当然としてあるでしょう。
 ですから、結果だけをパッと書くんじゃなくてですね、その結論に至るためにどのようなプロセスを経るのか、なぜどのようなプロセスを経るのか理由と根拠をキチンと書いてほしいです。
 議論する際においては、結論よりもむしろ過程の方が大切なのですから。
 
 というワケで、この問題に関しては、まず「制度としての問題」なのか「競争の結果として負けそうな問題」なのかをハッキリさせ、その上で「民間企業である郵便貯金」という性格を間違わずに認識する必要があるでしょう。
 そして日本の国債を最も買っている組織という特殊性を考慮して、では日本に最も国益がある状態とはどういう状態なのかを考える必要があると思います。
 少なくともただただアメリカが買いたたくなんていう陰謀論に近いような言い方、特にこれは民営化の時点で言われ続けての現状ですから、そのような論拠の無い議論が力を持つようなコトはもうやめるべきです。
 なぜどうしでそうなるのか、キチンとした議論を望むところです。
 
 
(つづく)