議員定数問題-民主主義の正義-

 議員定数について考えます。
 
 ここ最近、議員定数については減らすコトが正義かのように言われています。
 これに対しやえもこの話題については何度も取り上げまして、そして何度も同じコトを言ってきました。
 果たして「減らすコトが正義」となっている論拠はなんなのでしょうか、と。
 「減らすべき」と言っている人は、なぜ減らすべきなのか、減らすメリットはなんなのかという部分をキチンと説明してしません。
 唯一あるとすれば「経費削減」という部分ですが、しかしこの説明だけでは、どの辺まで減らすのが適切なのかという部分を説明しきれません。
 とにかくお金を使わないコトが正義であれば、議員は10人ぐらいにすれば、それはいまよりも格段にお金を使わないコトになりますよね。
 でもこんなコトは民主主義の否定であって、そう考えれば、ではなぜ「いまよりも減らさなければならないのか」という部分には「経費削減」という論拠は論拠として成り立たないのです。
 というワケで、じっくりとこの問題について考えてみたいと思います。
 
 まずハッキリとさせておきたい点があります。
 民主主義という枠組みで考えれば、むしろ「議員は多い方が正義」であるという点です。
 
 もっとも理想的な民主主義とは、国民全員が政治に参加するコトです。
 もっと言えば、全ての議案に対して全ての議員が賛否に投票できる決定権を持つコトです。
 民主主義とは王政などの「一部の為政者だけが政治を動かす」という制度のアンチテーゼから生まれた「国民全てが政治に参加し、その結果についても国民全員が負う」という考えの制度ですから、その理想型は「全ての国民が政治に直接参加する」というモノです。
 例えばここでよく出される例は古代ローマの政治体制です。
 某お風呂マンガでもちょっとだけ触れられていた気がしますが、奴隷などを除くローマの市民身分を持つ人は全て政治に参加する義務を負っていたワケで、これを民主主義の理想型だとよく例に出されるところです。
 
 ただこれを現代にそのまま当てはめるのは様々な意味で難しいので、現在のほとんどの民主主義国は、間接民主主義という手法を用いています。
 別の言い方をするなら、代議員制度です。
 つまり、政治に直接関わる人を国民が選挙によって選び、その国民の代表者によって政治を司ってもらおうという制度です。
 よってこの制度は、選挙という形では一般国民は政治に参加できますが、しかし政治の中身についての決定権は国民は一切関われない制度とも言えます。
 ですから、ここから考えても民主主義の理念から言えば「議員は多い方が正義」なのです。
 政治に直接参加できる人が多ければ多いほど理想に近づくワケで、一番の理想は「議員=国民」という議員数MAXの状態なのですから、「民主主義の理念」という論拠で考えるなら、議員数は多ければ多いほど正義なのです。
 
 代議員制度の質という点を考えても同じ結論が得られます。
 議員の数が少ないというコトは、その議員の背景にいる国民の数が多いという意味になります。
 国民10万人に100人の議員であれば、つまり国民1000人当たり議員1人というコトになります。
 その議員には1000人の意見が集約されているという言い方もできるワケですね。
 しかしこれが10万人に1人の議員であれば、10万人もの国民の意見がたったひとりの議員に集約されるコトになります。
 つまり議員が少なければ少ないほど国民ひとりひとりの声が政治に反映されにくくなる、国民にとってのきめ細やかな政治からは遠ざかる、というコトになるワケなのです。
 ですからこの点から考えても、民主主義の理想に近づく形というのは議員数が多いという状態だと言えるのです。
 
 間違ってはいけないのが、民主主義政治の正しさというモノは「結果が正しい」というところにあるワケではないというコトです。
 民主主義においてはむしろ結果は問題にしていません。
 あくまで民主主義は「全員が参加して全員で責任を負う」という制度ですから、「より多くの人が参加する」という点が重要なのです。
 「王というひとりだけの為政者が全てを決定していては、良い時は最高だけど、悪い時は最悪の結果にしかならない、最悪国家破綻する。だからそうではなく、できるだけ多くの人が参加すればまぁ最悪の結果にはならないだろう」
 これが民主主義なのです。
 
 よってここから導き出される結論としては「民主主義においては議員数が多い方が正義」であるという考え方なのです。
 もちろん最初にも言いましたように、国民全てが議員になっていては様々な部分で問題が起きますから現実的ではありませんのでバランスをとる必要はありますが、ただ原則としては「議員数は多い方が望ましい」という点は確認しておくべき点です。
 ですから考えるべきコトは、現実的な問題を踏まえつつ「どこまで増やせるか」という視点で考えるべきなのです。
 「どこまで減らせるか」は、民主主義の理念に反すると言えるでしょう。