日仏外務・防衛閣僚協議(2+2)の開催

 マスコミって、誰にも頼まれたワケでもないのに勝手に「自分たちは政府の監視者だ」という自負を持っていますよね。
 知る権利とか報道する自由とかは自分たちの特権だと思い込み、とにかく政府のを叩いて萎縮させるコトが民主主義であり自由主義だと勘違いしています。
 そしてそれが高じて、ちょっとでも政府に不具合なコトがあればそれを拡大解釈して連日連夜論理も何もなくただ感情的に罵詈雑言を投げつけて印象を悪くし、また逆に、政府の得点になるようなコトはとことん隠すか、申し訳程度にアリバイ程度にちょこっとだけで記事を作ってそれで終わりとかにして、流そうとします。
 それが「民主主義の正しいあり方」と思い込んでいるのです。
 政府発表とか総理会見とか、たまーに文字ペースで全文を載せている時もありますが、その伝え方は、いつもいつも悪意がこもっているとしか思えないような「解説」付きで伝えられるコトがほとんどと言えるのではないでしょうか。
 
 違いますよね。
 
 政府の行動を評価するのは国民です。
 マスコミではありません。
 マスコミは、ただ国民に伝えるだけの橋渡しの役でしかないハズです。
 特に政府というのは国民の意思を受けて与党となった政党が中心となって組閣される組織ですから、その行動に対しては、まずはそのままを伝える義務がマスコミにはあるのではないのでしょうか。
 政府に都合が良いからとか悪いからというのは、二の次三の次のハズです。
 国民の意思を受けて組閣されている政府の公的発表は、まずは国民が生の情報を獲た上で、その評価については国民自身が行わなければならないのです。
 政府に都合が悪いのか、それとも得点になるのか、それはマスコミが判断するモノでのではなく、そのままの情報を得た国民自身が行うべきモノのハズなのです。
 日本のマスコミは、ここを一番勘違いしているワケです。
 
 先日、日仏外務・防衛閣僚協議(2+2)が行われました。
 日米での2+2は史上初であり、日本にとってはアメリカ・オーストラリア・ロシアに次いで4カ国目、フランスにとってはロシアに次いで日本は2カ国目なんだそうです。
 これ、本来はとてつもなくすごいコトですよ。
 

 日仏外務・防衛相共同記者会見概要
 
 (ファビウス外務大臣)
皆様、本日はようこそ。私、国防大臣ジャン・イヴ・ルドリアンとともに、この外務省の公館に、日本の同僚であります岸田文雄外務大臣、それから防衛大臣の小野寺五典大臣をお迎えしております。今回また岸田大臣と再会できて大変嬉しく思っております。と言いますのは、何度もお目にかかっておりますので、今朝、我々の間で別途、非常に内容の濃い会談をいたしました。

 
 早速日本の防衛省が外相防相共同記者会見の全文を載せていますが、これをザッと読むだけでも、日本にとって重要なコトが盛りだくさんです。
 いくつか気になるところをピックアップしてみましょう。
 
■フランス・ファビウス外相発表
・フランスは実は今までこうした体制(2+2)はロシアとしか行っておりません
 →日仏関係のさらなる強化の新しい段階であると考えております
・(日仏はお互い)自由、民主主義、それから人権、そして法治国家の価値、さらには平和という価値を持っている国である
・日本のコミットメント、特にアフリカの平和のためのコミットメント、さらには開発のためのコミットメント、といいますのは、アフリカ大陸というのは我々一緒にこれから益々一緒に活動していきたいと考えているからです。それからまた、具体的な形での日仏のバイの関係を進化していきたい
・対策としては海賊対策、さらにはアフリカの平和維持能力の構築というところを一緒にやっていく、さらには防衛装備品協力、これについても我々の、両国の国防、それから防衛というところの技術、それから維持、製造のところの協力ということになると思います。
・来年もまた「2+2」が今度は日本に場を移して行われます
 
 まずフランスの外務大臣からの発表という視点からのこれらの発表ですが、多少のリップサービスはあるのかもしれませんが、非常に日本をフランスは重要視しているというのが全文の雰囲気から見て取れるでしょう。
 いま一覧には上げませんでしたが、この2+2は、オランド大統領が訪日された時に安倍総理との会談で是非開催しようというコトで決まったモノであり、またファビウス外相と岸田文雄外相とは何度も会って「非常に内容の濃い会談」をしているようで、ここからだけでも当事者同士ではかなり信頼関係が築けているのが窺い知れます。
 
 そしてさっきも言いましたように、フランスにとっては「2+2」という枠組みはロシアに次いで日本が二番目の国であるというコト、そしてそれは「自由・民主主義・人権・法治国家・平和」という価値観を共有しているからこそのモノだというコトを、全世界に向けて発表しているワケです。
 ここの部分の、基本的価値観の共有というのは、まず信頼関係を築く上でのもっともベースとなる部分になるだけに、非常に重要でしょう。
 実は全世界的に見れば、ここを実質的に徹底できている国っていうのは、そう多くないですからね。
 形だけ「民主主義」とか「共和国」なんて言っても、朝鮮民主主義人民共和国なんて国もあるワケですから。
 
 また当然、これは中国にも言えるコトです。
 やえも何度も言ってますように、中国は法治国家ではありません。
 それは中国国家自身が、自らの国家の憲法によって定めているコトです。
 「憲法より中国共産党の方が上だ」と。
 つまり、法律憲法よりも、中国共産党の決定の方が「上」なのです。
 そういう国に対して今後「自由主義陣営」としてはどう対峙していくのか、もちろん経済面などにおいてある程度は付き合う必要はあろうかと思いますが、その国とどう付き合うのかという部分については、今一度考え直す必要があるでしょう。
 法治国家という価値観ひとつとっても、なかなか日本人はそれが当たり前だと思ってこの価値観を保持している意味を軽く感じているようですが、中国であれば、例えば中国企業が何らかの形で損害を日本企業に与えたとしても、その企業が中国共産党の幹部の一族経営企業だったために、中国国内においては共産党が法律を曲げて損害賠償はしなくていいという決定を下したとしたら、もう日本企業にとっては泣き寝入りしかするコトができないんですね。
 こんなの日本では考えられないコトです。
 政府の決定でもなんでも、まず優先させられるのは法律であって、誰の経営であっても法律で賠償責任があれば賠償しなければならないのであって、日本ではそもそも政府とか政党がそんな決定を下せるワケがないんですね。
 それも、法律にそんなコトが記載されていないからです。
 共産党が決定を下すのも、それして法律よりもその決定が優先されるコトも日本では考えられないコトですが、しかし中国ではそれこそが常識なのです。
 このように中国は「基本的価値観」がまず違う国であり、ここの違いはどうしても国が違うだけに存在するコトは認めなければならないワケで、ではその上でどう付き合うのかという点はよくよく考える必要があるワケです。
 そして日本は「自由主義陣営」なのですから、その立場を十二分に活用する必要があのではないでしょうか。
 
 フランスの外務大臣はさらに重要なコトを述べています。
 今後、アフリカの平和維持と開発に、日仏が共に共同で当たっていきたいとの発表です。
 フランスは歴史的にアフリカとの関係が強い国です。
 一年間ぐらい前にアルジェリアの事件がありましたが、あれのほぼ当事国のひとつがフランスでもありました。
 そういうフランスという国が、「具体的な形での日仏のバイの関係を進化していきたい」という言葉を発する時点で、これはかなり大きな出来事だと言えるでしょう。
 日本も安倍総理が今年の最初の外遊先をアフリカに選んだことからも、安倍内閣としてもアフリカ外交は特に力を入れていると言える中で、アフリカと歴史的つながりの強いフランスが歩調を合わせてくれるのであれば、これほど日本にとっても力強いコトはないでしょう。
 もちろんフランスによっても日本の様々な「力」は益のあるコトでしょうし、この日仏のアフリカ政策は今後の日本にとっても大きな意義があると言えるハズです。
 
 またそのために「海賊対策」や「平和維持活動」、さらに「防衛装備品協力」についても協力していこうと発表されています。
 これは今後日本がどういう役割を求められているのか、よくよく日本人は考えるべきでしょう。
 例えば日仏で共同で平和維持活動をアフリカで行っても、フランス軍が何らかの組織に攻撃された場合には自衛隊は手出しができないのです。
 これではなんのための「共同」なのか分かりません。
 こういう現実をよくよく考えていかなければならないと思います。
 
 そして最後に、来年もまた日仏2+2を行うと約束をされました。
 これを単発のセレモニーにするのではなく、中長期的な視点からの日仏のパートナーシップを強化していく起点にしたワケですね。
 これも大きいですよ。
 いま挙げたモノがリップサービスに終わるのではなく、キチンと具体的に現実的に前進させていく意思が両国にあるという意味なのですからね。
 
 長くなりましたので今日はフランスの外務大臣の発言しか紹介できませんでしたが、それだけでもこんなにも重要な点が数多くあるのです。
 なぜ日本のマスコミは、これをもっと具体的にシッカリと国民全体に広がるように報道しようとしないのでしょうか。
 どうせこれを伝えると安倍内閣の得点になるからやめよう、ぐらいに思っているのではないのでしょうか。
 よくそれで「報道の自由」とか言えますよね。
 国民から情報を秘密にしているのはマスコミ自身なワケです。
 
 というワケで長くなりましたので今日はこの辺にしておきますが、必要であればまた日本の岸田外相、また日仏両防相の発言も今後ピックアップしたいと思います。