迷走、橋下大阪市長

2014年2月5日

 「迷走」という言葉しか思いつきません。
 さすがにこれは、無いですよ。
 

 橋下市長、出直し選へ 辞職、「大阪都構想」問う
 
 日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長は一日午後、東京都内のホテルで開かれた大阪維新の会の会合で「大阪都構想」の是非を問うため市長を辞職し、自ら再出馬する意向を表明した。関係者によると、三日に大阪市で記者会見し、市議会議長に辞職を申し出る方向で調整している。これに先立つ党大会で共同代表辞任も示唆したが、党内では続投を求める声が大勢となっている。 
 会合で、橋下氏は「わがままを許していただき、一政治家としてやらせてほしい。組織決定するわけではなく、応援しなくてもいい」と訴え、一任を取り付けた。
 「市長選だけで知事選はしない。日本維新幹事長の松井一郎大阪府知事には参謀の役割をお願いしたい」と大阪府知事選とのダブル選は否定。一方、自らが市長選で敗北した場合、松井氏も知事を辞職することになると説明したという。
 公選法は、市長から辞職の申し出を受けた議長が市選挙管理委員会に通知した日から、五十日以内に市長選を実施しなければならないと規定。三月二日告示、十六日投開票や、九日告示、二十三日投開票の日程が浮上している。
 橋下氏は二〇〇八年一月、大阪府知事に初当選。一期目途中だった一一年十一月に大阪市長選にくら替え出馬し、府知事選に挑んだ松井氏とともに勝利した。大阪府市は法定協議会で都構想の制度設計を進めてきたが、新設する特別区の区割り案絞り込みが大阪維新以外の会派の反対で実現せず、橋下氏らが反発していた。

 
 最近すっかり影が薄くなったと思ったら、いきなりこれですよ。
 つまり、大阪都構想を住民投票のような形で問うて、橋下市長の思惑では自分が選挙に出れば勝つと踏んでいるので、それをもって「市民は都構想を支持していてるんだ」→「都構想に反対するのは民意に反する」という論法を持って、自らの政策を強引に推し進めようという腹づもりなのでしょう。
 
 ハッキリ言って、何もかもが間違っています。
 
 おそらく今回のこの橋下市長の動きを批判する人は、デタラメだとかメチャクチャだとか言うと思うのですが、確かに発想自体がメチャクチャですでに身内にすら批判されている有様だったりして、選挙を私物化しているっていう面もあるのですけど、これは感情論とか極論とか暴論以上に、法治国家のありようとしてそもそも間違っていると言わざるを得ません。
 簡単に言えば、橋下市長は日本国内における政治システムを理解していないか、もしくは理解している上で「悪用」しようとしているのか、どちらかとしか言えないのです。
 
 なにが間違っているのか。
 この都構想、誰に決定権があるのかと言えば、それは市議会なんですよ、たぶん。
 いやなんでたぶんなのかと言えば、府議会の可能性もあるのでたぶんなんですが、とにかく少なくともですね、知事や市長の権限だけでは都構想はできません。
 都構想を最終的に決定するのは、大阪市議会もしくは大阪府議会ですよね。
 もっと具体的に言うと、直接的な橋下市長のこの発想は、市議会で区割り条例案に各会派が反対して可決の見込みがないから、という理由が発端のようで、つまりここまで書けば分かると思うのですが、都構想にしても区割り条例案にしても、それを審議し可決するという決定権を持つのはあくまで「議会」であって市長や知事ではないんですね。
 それなのに、問うべきは議会であるにも関わらず、なぜ「市長選挙」をするのでしょうか。
 
 筋違いも甚だしいのです。
 
 一言で選挙と言っても、その内容によって意味合いは違います。
 多くの人はそこまで意識していないのかもしれませんが、それは意識していない方が間違っています。
 つまり、知事選挙なら「法令に定められている知事としての権限を行使する人物を誰にするのか」を決めるのが知事選挙なワケです。
 こう書けば当たり前だとは思いますよね。
 当たり前なんですよ。
 ですからいくら知事選挙に当選したとしても、「法令上、知事として与えられている権限」以外のコトは行使できません。
 例えば、参議院選挙の地方区と知事選挙というのは選挙区が全く同じですから、仮に同時に選挙すると有権者も全く同じになりますけど、でもそれぞれ意味合いは違いますよね。
 参議院選挙で当選した人は「法令上、参議院議員として与えられている権限の行為」が認められるだけであって、決しで知事の権限を行使できるようになるワケではありません。
 もちろん逆もそうです。
 選挙とは本来そういうモノです。
 いくら有権者自身が意識していなかったとしても、それは意識していない方が悪いとしか言いようがありません。
 
 つまり、大阪市長選挙は、あくまで「大阪市長として与えられる権限を行為する人物を決定する選挙」なのです。
 ここに「都構想」とか「区割り条例案」が入り込む余地はありません。
 もちろん提出者としては市長に権限があるワケですが、しかし橋下市長の主張は条例の成立であり、これは議会に権のあるモノですから、ここの場面において「市長選挙」が一切入り込む余地はないのです。
 いくら市長選挙を行ったとしても、何度したとしても、この構図は全く変わらないのです。
 
 橋下市長の主張のデタラメさが分かったでしょうか。
 もしこれが議会に対して民意を問うというのでしたら分かるのです。
 確かに強引で独善的ですが、いつぞや小泉総理がやったように、法案が議会(国会)で可決しないのであれば、その議会を解散して信を問おうという手法であり、制度的には否定できるモノではありません。
 まぁあの時は参議院で否決されて衆議院を解散という、ちょっとどうかなと言わざるを得ない部分もありましたが、しかし「権が議会にある件を問うために議会選挙を行う」というのは、民主主義に適う行為と言えるでしょう。
 しかし橋下市長には、この建前すら存在せず、まったく理屈になっていないのです。
 あるのは、ただ「自分の言うとおりに政治が動かないのはイヤだ」という駄々だけです。
 
 そもそも選挙を住民投票のように使うのもどうかと思うんですけどね。
 そんなコトをやっていたら、ただでさえスピードの遅い民主主義政治のというシステムにおいて、ますますブレーキを踏むコトにしかならないのですから。
 そのための代議員制度であり、そして任期なのですから、その選挙時にオープンにされている「いつまでその議会構成なのか」という任期の間を守るというのもひとつの「民意」なのではないのでしょうか。
 そもそもいまの市議会の構成だって、民意の結果によるモノなのですからね。
 
 橋下市長の迷走はどこまで続くのでしょうか。
 そろそろ大阪市民にも目を覚ましてもらいたいところです。