災害を政府批判に利用する卑怯者

2014年2月19日

 あまおちさんがツイッターで激おこプンプン丸になっちゃってますので、連載の途中ですが予定を変更して、「雪害が起きているのに安倍総理は高級天ぷらを食べてるなんてけしからん」というトンデモ批判に対する、そのデタラメさを指摘しておきましょう。
 
 まずこの問題は2つの問題が混在していますので、ここを明確に分離させます。
 
 1つは、「総理大臣という職責にある者としての職務執行として適切だったかどうか」という問題。
 もう1つは、「災害中に高級料理なんて食べてるんじゃない」という、見た目・感情論としての問題、です。
 
 この2つは完全に別問題です。
 例えば前者の問題をそれは違うと指摘すると「一国のリーダーの姿勢じゃない」と後者で問題をかき混ぜ、後者は違うと指摘すると「食べ物の話じゃない、対応に問題があるんだ」と前者で問題をかぎ混ぜるような卑怯者が、これが本当に多いんですね。
 でも明確にこの2つは別問題です。
 こなんコト言う人は、もはや批判のための批判が目的だと断じるしかないと、指摘しておきたいと思います。
 
 ではまず1つめの「総理大臣という職責にある者としての職務執行といて適切だったかどうか」という問題について説明していきます。
 
 すっごい基本的なコト言います。
 現代人は、生きていく上では、一人で何でもできるワケではありません。
 例えば、自分でお米や野菜を作り、料理をして、余ったものは自分で流通に流して小売りまでして、その利益を自分で銀行業をして管理し運用し、また悪人が出れば自分で逮捕して裁判し適切な罰を与え、火事が起これば自分で消火し、そんな時にそなえて保険も運用しつつ、家屋を建築して建て直して、さらに外国が攻めてきたら自分で対峙して外交までこなす。
 こんなコトできる人なんていません。
 特に現代は完全分業制であり、それぞれが自らの職責を果たすコトで社会の一翼を担い、全体としてバランスを取っているワケですよね。
 そしてこれは行政の中においても同様のコトが言えます。
 中央省庁だけでも10数省あるワケで、例えば災害に対峙する組織というのは、消防と警察、また雪害で言えば除雪車などを装備する国土交通省と地方自治体の土木部ぐらいがその担当部であり、その上に、ありゆる場面に対応できるという面から自衛隊が非常部隊として備わっているワケで、逆に言えば他の部署は災害には対応出来ません。
 それはあくまで役割分担であって、全く悪いコトではなく、ごくごく普通の、こんなのは今さら言うまでもない当たり前のコトですよね。
 でも実は、こんな当たり前のコトが全く理解できない人がいる、これらを頭の中で理性的に整理できない人が、実は驚くほど多かったりするのです。
 
 では総理官邸とは何をするところかと言えば、それは日本の行政全ての頭脳であるワケです。
 会社で言えば取締役会とか役員会と言えばいいでしょうか、全体を見渡した上で政策決定と指示を出す部署です。
 よって、官邸は災害に対する実働部隊は持っていません。
 こんなの本来言うまでもないコトですよね。
 仮に官邸のスタッフ全員が被災地に行ったところで、装備もノウハウもないのですから、むしろいるだけ邪魔でしょう。
 つまり災害の際においても、災害に限りませんが、官邸とか総理とか大臣とかいうのは、あくまで指示を出すコトが仕事であり、逆に言えば情報を判断するコトと指示を出すコトしか出来ないんですね。
 繰り返しますが、こんなコトは本来は言うまでもないコトです。
 
 次に「災害対応」という部分を考えます。
 これはステージごとに行うコトが変わってきます。
 例えば、災害が起こる前に雪害のように発生予想が出来るなら、災害前に警報を出したり重機などを備えておくというステージ。
 次に災害が起きてしまった時には、まず最初のその場の対応としては、生命の安全と救出活動が最優先となるステージになりますね。
 災害発生初日から数日は、まずこの作業が最優先されます。
 また半日~一日ぐらいズレる形で、被災者の安全確保という作業のステージが発生します。
 そのステージでは、被災者の避難場所や食料などの、最低限生命維持するために必要な措置を整える必要が発生してくるワケです。
 そしてこれらが確保されれて少し落ち着ければ、次の大きな対応をするコトになります。
 今回で言えば、道路の復旧、電気の復旧、水道の復旧などでしょう。
 これらは「生命維持作業」とはちょっと遅れて行わなければなりません。
 なぜなら、例えば食料の運搬と道路の復旧は、食料の運搬の方が優先させられるワケで、もちろん運搬のためには最低限の道路確保が必要ですが、それはあくまで本当に最低限で十分なワケで、言ってみれば自衛隊の悪路対応車両で運搬できればいいワケで、その際にもし道路復旧の工事を始めてしまっては、その自衛隊車両すらふさいでしまうコトになりますから、ここの優先順位の順番は前後しないようにしなければなりません。
 ここまでが「対応」というぐらいのコトでしょう。
 そこまで急がなくても死人が出る状況にはなくなるぐらいの対応が出来たら、今度は次のステージに移ります。
 次のステージは、「対応」というよりは「対策」の段階です。
 住む家を無くした人に対してはどうすべきかとか、そもそもこれぐらいの雪害にはどう備えておくべきだったのかとか、もっと広い道路を確保しておくべきだったのではないかとか、そういう大きな視点での対策ですね。
 このように、ひとことに「災害対応」とか「対策」と言っても、これぐらいやるコトは別々であり、またステージも変わってくるのです。
 
 今回は災害対策のお話ではなく、政府批判に対する指摘ですから、ここをお話ししますね。
 つまりこのように理性的に整理した場合、では政府の仕事とは「どのステージ」で「具体的に何をすべきなのか」というコトを考えなければならないワケです。
 そしてそれは、「政府」と一言で言っても、それはそれぞれの関係部署で役割分担があるワケで、官邸や総理が何でもかんでもやりばいいってモノではなく、大臣ですらそれぞれ担当があるのですから、それぞれの関係部署が適切に動いているかどうかを見なければなりません。
 行政府のどこの組織がどう動いているのかを見て判断し、キチンとその部署が動いていれば、それは「政府はキチンと対応している」と表現するのが通常だと言えるワケです。
 
 では最初のステージである、災害発生以前の段階での情報の告知ですが、ここは政府だけに留まらずマスコミも大きな役割を負っているワケですけど、今回においてはここはキチンと告知されていたと見るべきでしょう。
 天気のコトなんて100%予想できるワケではありませんが、先週の週末にとんでもない雪が降る可能性が高いってコトは、おそらく日本中の人が知っていたと言えるぐらいは告知が行き届いていたかと思います。
 
 問題は次からです。
 よくよく冷静に考えてください。
 ここは災害が発生した直後の問題です。
 日にちで言えば、14日の金曜が降り始めで、災害レベルになったのは15日土曜日から16日にかけて、ぐらいですね。
 で、ここでは何をすべきなのかというコトを考えれば、さっき言いましたようにかなり早いステージの対応、つまり生命維持や救出、そしてちょっと遅れて避難場所の確保や食糧の確保です。
 ではこれはどの部署がどう対処すべきなのかと言えば、第一義的には消防と警察でしょう。
 災害に対する通常時からの備え、特に人命救助などの対応は消防と警察が担っていますよね。
 まさかここでいきなり官邸が出張る場面ではありません。
 そもそも場面において官邸スタッフが何が出来るのか、ちょっとやえにはあまり想像が付きません。
 また日本はキチンとした法治国家であり、歴史も長く、また災害は多い方の国ですから、通常の備えからして災害に際してはどう行政は対応すべきかというのはだいたいマニュアル化されています。
 人命救助は特に消防は日頃からそれ専門に対応しているのですから、その訓練もキチンとしているワケで、この点に関しては特に官邸から命令が下るまでもなく通常業務として活動出来ますよね。
 そして通常装備である消防や警察だけでは対応できない場合は、本来業務ではないけど対応能力がとてつもなく高い自衛隊に出動要請する、というマニュアルです。
 それは今回キチンと機能しています。
 こちらの記事です
 

 各地で車が立ち往生、家屋の倒壊するなど事態の深刻化を受けて、山梨県は15日、陸上自衛隊第1師団に災害派遣を要請したという。山梨日日新聞が報じた。

 
 繰り返しますが、まずこのステージでは何をすべきかと言えば、まずは命の危険が間近にある人を救出するコトです。
 例えば雪崩に巻き込まれた人や、家屋の倒壊に巻き込まれた人などの救出が最優先です。
 人員や装備などのリソースは有限ですから、全てのコトを一度にできるハズもなく、つまり最初のステージとしては、例えばいくらお腹がすいている人がいたとしても、その人は後回しにして雪崩に巻き込まれた人を救助しなければなりません。
 優先順位っていうモノは災害時にもある、いえ、災害時だからこそあるのです。
 そしてこのステージの場合、果たしてどの部署が担当するのかと言えば、そうですね、やはり消防と警察と、そして自衛隊です。
 逆に言えば、これらの部隊以外はやるコトがありません。
 敢えて言うなら、先ほどの記事の中にありましたように、次のステージでの避難先の確保とか情報の告知とかでしょうけど、これは国の出先機関や地方自治体ができる限りのコトはやっていたワケです。
 

 国土交通省甲府河川国道事務所はTwitter上で、各市の緊急避難先や最新の道路交通情報を発信。車両を放置して避難先に行く場合は、ダッシュボードに運転手の連絡先のメモを置いておくように呼びかけている。
 NHKによれば、山梨市、北杜市、大月市は、車のドライバーや列車の乗客のために、市の施設を避難所として解放しているという。

 
 このステージにおいてもやはり官邸ができるコトがありません。
 むしろ無駄にその場にいても邪魔なだけでしょう。
 
 繰り返しになりますが、冷静に考えた場合、日本の中のどの部隊が、このステージにおける「力」を持っているでしょうかと考えれば、やはり消防警察自衛隊しか思いつきません。
 そうした中において、ではこの場面に対して「官邸は総理は何をしているんだ」という批判をしても、それは果たして適切だと言えるでしょうか。
 つまりこの批判というのは、「出来るコトがあるだろ、なぜそれをやらない」という意味なワケですが、しかし逆に問いたいですよね、「官邸はこのステージにおいて何が出来るんですか?」と。
 自衛隊出動の要請は知事が行うコトになりますし、出動命令は防衛大臣が出すコトができ、必ずしも総理の命令である必要も実はありません。
 そして結果を見ても、キチンと自衛隊の出動は成されていますよね。
 よって官邸がこのステージで出来るコトっていうのはこれ以上無いワケで、あとあると言えば、地方自治体や現地の国の出先機関から情報が上がってきていればそれをまとめて精査するコトぐらいであって、しかしそれは食事がとれないほどでもなく、ましてその情報は次の次のステージぐらいで活用すべき情報であるのですから、ますますこの段階において「食事を取るな」とかというレベルではないのです。
 
 長くなってしまいましたが、言いたいコトは簡単です。
 それぞれのステージでは何をすべきでそれはどの部隊がすべきなのかというコトを冷静に判断し、もし官邸の動きを評価したいなら官邸という部署はこの場合何が出来るのか、出来るコトがあれば何をしたのか/しなかったのかを明確にしてからにしなさいってコトです。
 そして今回の事例で考えれば、初期のステージで官邸や総理がすべきコトは非常に少なく、そしてやるべきコトはキチンとこなしていると見るコトが出来る、という結論が自然に出てくるコトでしょう。
 
 まして、防衛情報なので正確なウラはとれないかとは思いますが、この辺の情報が正しいとすれば、
 

 伊藤隼也 ‏@itoshunya
 山梨県の知人市長に電話で現地の情報を聞いた。朝から孤立化しており救急車も走れない状況。県に自衛隊出動を要請したが、現在は100名が待機だけしている状況だと。さらに自衛隊は大雪では出動をしないと言われ大いにお怒りでした。この状況で急病人が出たらどうするんだ?自宅にヘリは飛んで来ない

 
 自衛隊は法律の範囲内で動けるところまでは動き、要請と命令があった際にはすぐに動けるように準備は整えておいたんですね。
 事前に。
 法令的に要請と命令がなければ自衛隊は活動はできないワケですが、しかし活動前の準備は知事からの要請がなくても出来るワケで、例えば部隊を移動させ、雪に対応する装備整えて、命令発令と同時に動けるように待機してたという、要請が無くても出来るまでのコトまではしていたんですよね。
 もちろんその自衛隊の動きは、防衛大臣と総理大臣の権限の下でのお話です、自衛隊は行政機関なんですから。
 ちゃんとやってるじゃないですか。
 当たり前ですが総理大臣というのは国の行政機関の長ですから、地方自治体の部隊までには命令を下す権限はないワケですが、その中において自分が動かせる自衛隊という部隊を、災害前からキチンと対応させているワケで、これは総理や官邸も含めた上の「行政としてキチンと対応している」と表現すべき事例と言えるでしょう。
 
 「官邸は何もしてない」とか「包括的な対応が官邸は出来ていない」とか言いますが、それって具体的にどのような行為を指すのかを教えて欲しいです。
 自衛隊や国交省の担当部局だけが動いているコトに対して「包括的に動いていない」と言うのであれば、果たして今のステージにおいて他にどの部署が何を出来るのか、法的根拠が分かる形で明示してほしいです。
 だって、出来ないコトをしないから批判するって、あまりにも理不尽すぎるじゃないですか。
 それって「じゃあアナタは今何をしてるんですか?なぜ救助活動をしていないんですか?」と言うのと同じなんですよ。
 公務員と一般人は違う、なんて言いますが、違いませんよ、「出来ないコトをやれ」って言っているのは全く同じなんですから。
 そんなの批判じゃないですよ。
 ただのイチャモンです。
 
 公務員や役所や総理大臣はスーパーマンではありません。
 それぞれが役割分担をしている中で担っている仕事が違う、それぞれがそれぞれの仕事を請け負っているだけの存在でしかありません。
 そして官邸や総理や政治家は、ある程度落ち着いた後のステージでの仕事が待っています。
 つまり、喫緊の生命維持への危機がとりあえず無くなってから、では大雪害の時は事前にどうしておくべきだったのか、食料備蓄や、そもそも外に一歩も出れない場合はどうしたらいいのか、もっと道路を広く多く配備しておくべきだったのではないか等、そういう広い視野での対応ですね。
 こここそが官邸や政治家の仕事です。
 そしてそれは、もうちょっと先のお話ですね。
 今回の「天ぷら批判」は週末のお話であり、そのステージにおいては情報を集めてみる限りにおいては、十分に総理としての職責を果たしていると言うしかありません。
 「総理大臣という職責にある者としての職務執行といて適切だったかどうか」において、もしこれ以上批判するのであれば、キチンと事実を提示して、ではどうすべきだったのか、その行為が本当に可能だったかどうかを具体的に挙げなければなりません。
 それをせずしてただ批判するだけであれば、それは批判のための批判でしなく、もはや誹謗というレベルであって、被災者をダシにして政府批判だけの卑怯者だと断じるしか他ありません。
 
 
 長くなってしまいましたので、次は「災害中に高級料理なんて食べてるんじゃない」という、見た目・感情論としての問題についてを説明したいと思います。
 こっちの方が悪質です。