煙のないところに火を付けるマスコミ

 昨日の更新で、集団的自衛権に関する議論について全く別問題・別議論が必要な案件をわざとごちゃ混ぜにして、単純に「賛成派・反対派」の陣営分けをして自民党内が分裂しているとマスコミが煽りはじめている、というコトを指摘しました。
 早速その最たる記事が出ましたので、この際紹介と指摘をしておきます。
 こういうマスコミの煽動に騙されないようにしたいところです。
 

 集団的自衛権 改造にらみ「自民内闘争」 うごめく旧主流派
 
 安倍晋三首相(自民党総裁)が意欲を示す、憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認をめぐり、自民党第2派閥の額賀派(平成研究会)は27日、勉強会を開き、丁寧に議論していくことを確認した。旧田中派の流れをくむ額賀派は長く主流派の地位を占めてきたが、安倍政権発足後は存在感が薄らいでいる。党内に慎重論がくすぶるこの問題は、国会閉会後に想定される内閣改造をにらみ、首相を牽制(けんせい)するにはうってつけの側面もあり、同じくリベラル色が強い岸田派(宏池会)とも連携し、首相への圧力を強めようとしている。(村上智博、内藤慎二)
 
▼額賀派
 「個別の案件ごとに考えていかなければならない。政府の有識者会議『安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会』の報告が出てきたら、われわれの考え方を整理していく」
 27日の勉強会で額賀福志郎会長はこう語った。党では安全保障法制整備推進本部で31日から議論することが決まっているが、「われわれの考え方」と表現するあたり、首相の出身派閥、町村派(清和政策研究会)に次ぐ第2派閥としてのプライドをうかがわせる。
 かつて隆盛を極めた面影は、今ではすっかり薄くなったが、それでも、額賀派に目を光らせる青木幹雄元参院議員会長の存在は大きい。
 勉強会では集団的自衛権の行使について「極めて抑制的に認めるべきだ」との意見は出たものの、行使容認に否定的な意見は出なかった。勉強会が始まる直前、額賀氏は講師の高見沢将林官房副長官補に「政府は丁寧に議論してほしい」と注文をつけており、あくまで求めるのは慎重な議論。そこには内閣改造を見据えた「条件闘争」のにおいが漂う。
 
 ▼岸田派
 第3派閥の岸田派も27日の総会で、金子一義最高顧問が派としての勉強会開催を宣言。ただ会長の岸田文雄外相は総会後、勉強会を取り仕切る宮沢洋一党政調会長代理に「党を割るような話じゃない」と突出しないようクギを刺した。こんなことをあえて語るのも、名誉会長の古賀誠元幹事長が「閣議決定による解釈改憲はルール違反だ」などと首相を批判し続けているためで、派内には古賀氏の発言に戸惑いもある。
 
 ▼石原派
 「実績としたい気持ちは分からないでもないが、軽佻(けいちょう)浮薄だ」
 石原派(近未来政治研究会)も27日、勉強会を開き、最高顧問を務める山崎拓元副総裁が、憲法解釈変更による行使容認を目指す首相を、めった切りにした。
 在日米軍の合憲性が争われた昭和34年の砂川事件の最高裁判決を根拠に解釈変更で一部行使が可能になるとの見解を示している高村正彦副総裁についても「牽強(けんきょう)付会だ」と切って捨て、一気に首相に対する「抵抗勢力」の一角に躍り出た。
 各派の狙いはさまざまだが、首相主導の「政高党低」の現状に歯止めをかけたい思惑では一致しており、せめぎ合いは今後も続いていきそうだ。

 
 記事のいやらしさを理解して頂くために全文を引用しましたが、まずタイトルからして煽動丸出しですよね。
 「改造にらみ」「自民内闘争」「うごめく」「旧主流派」
 なんですか、この矢追純一さんも真っ青になりそうな煽り文は?
 もうマスコミの常套手段ですが、センセーショナルなタイトルで読者の印象をまず強く見せつけ、マスコミが誘導したい方向に読者のイメージを植え付けさせておいて、しかし本文では事実から大きく逸れないようアリバイを作っておく、という典型的な記事です。
 例えばまず額賀派の記事の部分ですが、ここではキチンと「額賀氏は講師の高見沢将林官房副長官補に「政府は丁寧に議論してほしい」と注文をつけており、あくまで求めるのは慎重な議論」と書いており、これってやえが昨日も書きましたように「自民党内では集団的自衛権そのものを否定する議員はほぼいないぐらい」という指摘に合致するワケですよね。
 しかしそれなのに、その後に続く文章が「そこには内閣改造を見据えた「条件闘争」のにおいが漂う」ですから、なんですか「においが漂う」ってどんなにおいがしたのか聞きたいぐらいの、完全に記者の主観でしかない、事実の指摘にすらなっていない印象操作が行われているワケです。
 全然タイトルと合致してないじゃないですか。
 
 また、岸田派への記事も、やえが昨日指摘した通りなんですよね。
 「名誉会長の古賀誠元幹事長が「閣議決定による解釈改憲はルール違反だ」などと首相を批判し続けているためで、派内には古賀氏の発言に戸惑いもある」とありますが、よく読んでください、古賀名誉会長の注文はあくまで「閣議決定による解釈改憲はルール違反」であって、これは憲法解釈論・憲法論であって、決して集団的自衛権そのものを否定する言い方ではないんですよ。
 ただの手続き論です。
 「集団的自衛権そのものへの議論」と「憲法解釈だけでいいのかどうかという議論」は、これは全く別モノなのです。
 繰り返しになりますが、後者に対して反対と言ったとしても、それは「集団的自衛権に反対」と表現するのは全く事実と違う表現になります。
 そしてこういう手続き論というモノは、党内闘争とか党を割るとか、そういうお話になる問題ではありません。
 思想の違いではないですから。
 例えば郵政民営化は、これは思想の違いです。
 郵政民営化の時は亀井静香ちゃん先生のように一部が割れてしまいましたが、しかしそれは「どう民営化するのか」という手続き論で意見が分かれていたのではなく、もう思想の部分である「民営化の是非そのもの」について意見の対立があったので、ああなってしまったワケです。
 しかし今回のは違いますよね。
 もはや議員を引退している古賀さん自身の考えは分かりませんが、少なくとも自民党現職議員さんの中で集団的自衛権そのものに反対する方ってそうはいないハズですし、古賀さん本人もこの記事だけ見れば決して思想の部分で意見対立しているのではなく、あくまで手続き論で異論があると言っているだけであって、ただの手続き論で意見が違うだけなんですね。
 となれば、やっぱりこれは記事が煽動するような「自民内闘争」なんて表現は、全くの不適格だと言わざるを得ないのです。
 
 ここまでやえが昨日指摘したコトがズバリ記事にあらわれるともはや苦笑しか出ないワケですが、たぶんこれからさらに集団的自衛権の問題が話題に上がれば上がるほど、このようなミスリード記事が増えると思われます。
 騙されないでください。
 そもそも議論をするコト、異論があるコトは、良いコトなのです。
 要は、党や内閣の間で議論をまとめられるかどうかが重要なのであって、ひとつの答えをまとめる間には議論はあってもいい、いえむしろ民主主義なのですから議論すればするほど良いと言えるでしょう。
 その中で、民主党という政党は与党の時に全然答えを出すコトが出来なかったからダメだったのであって、よもや異論があるからダメと言わんばかりの今の空気は、むしろ共産党か絶対主義かと言いたくなるような空気の強要ではないのでしょうか。
 ですから、国民は是非だまされないようにしてください。
 異論がある議論があるっていうコトだけで「自民党はバラバラだ。ダメだ」と思ってはいけません。
 それは異論の存在を認めないという最も民主主義から離れた考え方です。
 でも少なくとも自民党はそういう政党ではないのですから、マスコミのミスリードの騙されないよう、注意してこの問題を見て欲しいと思います。