いい人と思われたいのか、それともワガママだけど強い人と思われたいのか

 日本の外交はいま岐路に立っていると言えるでしょう。
 
 これまでの日本外交は、ひとことで言えば「世界中からいい人と思われるための外交」でした。
 戦争など世界規模で政治が動いてしまう事案には関わらない、他国から多少のコトを言われても目をつむって耐える、でも必要ならお金を払う、そんな外交を日本はこれまで展開してきました。
 そしてそれは成功してきたと言えるでしょう。
 経済大国になり、諸外国からの好感度もかなり高く、イスラム教国に対してすら知名度と好感度は相当なモノがありますよね。
 それがこれまでの日本外交だったワケです。
 
 しかし、時代が変化したのか、それと共に国民の考え方が変わってきたのか、諸外国の変化に伴ってのコトもあるのでしょう、「いい人外交」は許されないという声が最近日本の国内で高まってきています。
 いや厳密には「他国から多少のコトを言われても目をつむって耐える」という部分が我慢ならなくなっているのでしょう。
 これまでは懸案事項があってものらりくらりと問題化自体を避けてきた日本外交ですが、これからは問題には正面から立ち向かい、そして負けない外交を、日本国民が望んでいるワケです。
 
 ただしここでシッカリと考えなければいけないのが、「いい人」と「強い人」は、少なくとも国際社会の国家においては両立しないというコトです。
 アメリカは強いです。
 これ自体に異論を挟む人はいないでしょう。
 でもいい人ではありません。
 むしろ嫌われ度の方が高い国とすら言えるでしょう。
 他にもフランスなどは強国と呼べるのでしょうけど、フランスだってアフリカに対しては軍事的手段を用いるコトを躊躇いませんし、現在もシリアに空爆を行っています。
 また経済的にはそれほどでもないですけど大国とされるロシアも、様々な面で国際社会に対して強硬な手段を用いて、その強さを見せつけていますし、中国もそうですね。
 でも両国は決して国際的に好感度の高い国ではありません。
 まして中国なんかは民主主義国家ですらないですから、法治を無視してでも利益を確保するコトが可能な、究極のワガママ国家と言える存在なワケです。
 
 日本が今後どんな外交を展開していくべきか、それはそれぞれ考え方があるでしょう。
 しかし、いい人なのと強い人なのはトレードオフであり、どちらともを同時に求めるコトは出来ないコトは自覚しておく必要があります。
 強さを求めるのはいいですが、それはこれまでの日本の好感度を削っていくコトになります。
 もちろんそれは一つの選択ですから、ダメと言うつもりはありません。
 ただ、これまで通りのいい人のまま強いさを求めろと言うのであれば、それこそワガママな主張にしかならないというコトは自覚する必要があると思うのです。
 
 例えば、先日の南京大虐殺がユネスコの記憶遺産に登録されたという件で、ユネスコへの日本の負担金をカットすべきだという意見が出ていて、政府も検討しているというニュースも出ているようですが、やはりこういう国際機関への負担金をカットする行為というのは、印象の問題としては悪い方向に働いてしまうコトでしょう。
 繰り返しますが、それが悪いコトとは言いません。
 それでも日本の主張のためにすべきだ、強い外交を目指すべきだというのは、ひとつの選択として存在し得るオプションでしょう。
 ただその場合にもデメリットはいるというコトは自覚すべきだと思うんですよね。
 決して、自分たちが思っているままに動けば、世界は上手くまわるというコトにはなりません。
 
 今後日本の外交はどういう方針でいくべきなのか、決して良いコトばかりではないというコトを自覚しながら考えていかなければならないでしょう。