日本にとっての朝鮮半島

 日本と北朝鮮との交渉がまた動き出しました。
 拉致問題そのものはキム・ジョンウンにとって自分自身には直接関係しない問題ですから、ここらで一つの区切りを付けたいという思いがあるのかもしれません。
 とにかく、日本にとっても拉致問題が前進するコト自体は望むべきコトですから、この流れはこれで良いでしょう。
 ただ、長期的な観点で見た場合、北朝鮮というより朝鮮半島は日本にとってどういう形が一番望ましいのかという部分について、ちょっと考えてみたいと思います。
 
 日本にとっての朝鮮半島の「価値」とは、シナ大陸に生まれ出る国家(以降便宜上「シナ国家」と呼びます。※中国とは中華人民共和国並びに中華民国の略語でしかなく例えば清や元などを指し示す言葉ではないからです)と、ロシアの南下政策に対する「防護壁」の役割にあります。
 有史以来、シナ国家とロシアは大陸主義的な拡大主義をとる国であり、余裕があれば領土拡大を目指す、それが正義だと思い込んでいる国家であり、日本は常にその脅威にどう対抗するのかに心血を注がなければならない歴史をたどってきました。
 世界大戦期の日本の朝鮮併合も、朝鮮がシナ国家からキチンと独立しひとつの独立国家として機能していれば、日本にとってはシナとロシアとの壁になるのでその方が都合が良かったのですが、当の朝鮮自体が独立する気概を見せず、このままだとシナやロシアの属国のまま対日戦争への前線基地になりそうだったので、致し方なく併合したという側面もあったワケです。
 朝鮮併合は、日本が朝鮮の地を欲しかったのではなく、ただ単に壁が欲しかっただけなのです。
 そしてそれは今でも事情は変わらず、ロシアは今は対日はともかく、シナ国家である中国は、経済が好調になった途端にまた時代錯誤な拡大主義をとりはじめ、日本だけに限らず多くの周辺国に対して領土の強奪を謀っていますよね。
 こういう状況を前にして、もし朝鮮半島が全て完全にシナ国家の支配下に置かれたら、日本にとってはますます面倒なコトになるのは火を見るよりも明らかだと言えます。
 
 では朝鮮半島がどういう形にあるのが日本にとって望ましいのでしょうか。
 言うまでもありませんが、もはや日本は朝鮮半島なんかに興味はありません。
 あの土地、土地というか、あそこの民族を同胞として見るのは不可能です。
 そもそもさっきも言いましたように、朝鮮併合は地理的な意味が日本には大きかっただけであって、むしろ植民地支配的には朝鮮半島だけで見れば赤字だったというデタラメな経営法をとっていたワケですから、「シナやロシアの防護壁」という意味以上の価値を日本は過去も昔も朝鮮半島に見いだしてはいないんですね。
 秀吉でさえ、攻めたのはシナの国であって、朝鮮半島はただの通り道としてしか認識していませんでした。
 すなわち日本にとっての朝鮮半島とは、その領土や人間に金銭的価値を見いだしているのではなく、とにかく「シナとロシアの防護壁」になればどんな形であっても構わない、というところが本音なのです。
 
 と考えれば、朝鮮半島は統一されていない方が日本にとっては便利であるというコトが分かります。
 朝鮮半島が分裂しているというコトは、その国同士は反目し合っているワケであり、よって例えその中の一国がシナやロシアの支配下に入ったとしても、その国とは反目している別の朝鮮半島の国は自動的に反シナ・反ロシアになりますから、その状況では簡単に「対日最前線基地」とはなれません。
 まぁ放っておいても朝鮮半島はその歴史の大部分を複数の国で構成していたワケですが、むしろそれは日本にとっては望ましい姿だったと言えるでしょう。
 極端な言い方をすれば、朝鮮半島は不安定な方こそが日本にとってはメリットだと言えてしまうのです。
 
 では今を考えればどうかと言えば、今は朝鮮半島は2つの国家が存在しており、これは日本にとって望ましい姿なワケです。
 そうです、韓国と北朝鮮とが存在する方が日本にとっては望ましく、統一される方がデメリットになるんですね。
 特に反日をこじらせすぎてしまった韓国の方が主導となって統一なんてされてしまったら、まさしくシナ国家の対日最前線基地にされてしまいかねないでしょう。
 日本にとっては北と南と分裂している(元々統一されていた時期の方が短いのですから「分裂」という表現も違う都は思いますが)方が都合が良いのです。
 
 そういう意味で、中国と韓国が急接近している中で日本が北朝鮮と対話を再開させたのは、これが意図的なのかどうかはともかく、とてつもなくベストな行動だと評価できるのではないでしょうか。
 もちろん北朝鮮はその政治体制からそう簡単に手を組むべき相手ではありません。
 しかし中国や韓国への揺さぶりという意味では、もっとも効果的な手段とも言えます。
 言ってみれば日本としては、別に北朝鮮もしくは韓国と友好関係を築く必要はなくてですね、韓国と北朝鮮の足並みを乱せば、それだけで十分なワケですよ。
 ですから、韓国が中国と接近している中において、日本が北朝鮮を使うコトで揺さぶりがかけられれば、それだけで目的は十分に果たされるのです。
 いま中国と韓国は、相当焦っているのではないのでしょうか。
 
 これからの日本の、韓国に対しても北朝鮮に対しても、まずは日本のメリットである「シナとロシアからの防護壁」という観点をまず第一に考えて、その付き合い方を考える必要があると思います。
 北朝鮮との交渉がどうなるのか、拉致問題の「解決」とはどういう状態を指し示すのかいまいち不明瞭ですが、どちらにしても過去よりは日朝の対話は盛んになっていくんだと思われます。
 その上で日本として忘れてはならないのが、当たり前ですが日本の国益であり、そしてその国益の大きな部分を占める「シナとロシアからの防護壁」ついてを真剣に考えるべきだと思います。
 日本の国益はどこにあるのか、日本にとっての朝鮮半島とは何か、間違えずに冷静に判断したいところです。