数の力を党利に悪用する民主党

 さすがにこれはあまりにもひどすぎる上に、なにやら広く報道されていない気がしますので、取り上げようと思います。
 こちらの件です。
 

 おおさか維新「民主許せない」…質問時間配分で批判
 
 おおさか維新の会の下地幹郎政調会長は12日の衆院予算委員会で、政府にほとんど質問せず、異例の民主党批判を展開した。
 民主党は「与党でも野党でもない新しい政党を目指す」というおおさか維新の会のスタンスに反発。与党が慣例で野党に譲った約7時間分の質問時間を、おおさか維新の議員数に応じて配分しなかった。
 これに対し、下地氏は予算委で「民主党の行為は許せない」と攻撃。首相も「野党が分配すればいいだけの話だ」と肩入れした。

 
 これ、国会独自の慣例に基づくお話なので、まずはその解説からしておきましょう。
 
 国会の委員会では各会派(≒政党)が政府に対して質問を行うワケですが、その質問時間は会派に所属する議員の人数に応じて割り振られます。
 簡単に言えば、人数の多い会派には多くの時間が与えられ、人数の少ない会派には少ない時間しか与えられません。
 議員数とは国民の意思の反映によって決められたモノですから、より多くの国民の意思が反映された会派に多くの質問時間が割り振りされるというのは民主主義として当然のコトでしょう。
 
 よってこの原則からすれば、基本的に審議時間が一番多く割り振られるのは与党第一党となります。
 いまで言えば自民党ですね。
 例えば審議時間の原則はこんな感じになります。
 
例)
委員会総時間:10時間
会派人数:自民50人・民主20人・公明10人・おおさか5人・共産5人
 ↓
質問時間:自民5時間・民主2時間・公明1時間・おおさか30分・共産30分

 
 これが原則です。
 
 ただし実際の国会運営においては、与党の質問時間はそんなに長くありません。
 実際のとろこは、野党第一党が一番質問時間が多いという運営がなされています。
 これは、政府からより距離を置いている野党に質問時間を多く与えるコトで、立法府と行政府の距離を測るという目的で行われている慣例です。
 もっと分かりやすく言えば、与党は政府に対して厳しい質問をしないの(実際国会中継を見れば分かりますが、実際はそんなコトはないんですが)で、野党に配慮する形で野党に多くの時間を与えているっていうコトなんですね。
 
 では具体的にはどういう形で野党に時間を与えているのかというコトなのですが、委員会の時間は限られていますから、単純に野党の質問時間を増やすという方法ではありません。
 先ほどの例で言えば、自民が5時間質問した上に民主にさらに4時間与えて6時間としてしまうと、総時間をオーバーしてしまいますよね。
 よって実際には、「与党の質問時間をある程度削って、その削った分を野党に与える」という形をとります。
 先ほどの例で言えば、例えば「自民の5時間分の4時間を野党に与え、自民の質問時間を1時間とする」という形になります。
 こうするコトで、総時間を変えるコトなく、野党の質問時間を確保しているんですね。
 
 今回自民は、この慣例に従い、自らの審議時間を野党に与えました。
 実務的には、この与党分の時間をまず野党第一党である民主に預け、その上で民主が野党各会派に割り振りするっていうのが通常の作業となります。
 そして普通であれば、この与党から与えられた時間は野党間でも議員数に応じて比例的に割り振られるコトになります。
 例で言えばこうなります。
 
例)
原則質問時間:自民5時間・民主2時間・公明1時間・おおさか30分・共産30分
 ↓
自民4時間分を野党(民主20:おおさか5:共産5)が配分
 ↓
野党配分量:民主160分・おおさか40分・共産40分
 ↓
実質質問時間:自民1時間・民主4時間40分・公明1時間・おおさか1時間10分・共産1時間10分

 
 本来はこうです。
 しかし今回の問題はこの「野党の配分量」の部分にあります。
 本来のこの形あれば全く問題はなかったのですが、しかし今回はなんとも野党第一党の民主がその権力権限を使い、おおさか維新の会に「自民党分の時間」を全く与えなかったのです。
 例を取るとこうなります。
 
例)
原則質問時間:自民5時間・民主2時間・公明1時間・おおさか30分・共産30分
 ↓
自民4時間分を民主と維新だけに比例配分(民主20:共産5)
 ↓
野党配分量:民主192分・共産48分
 ↓
実質質問時間:自民1時間・民主5時間12分・公明1時間・おおさか30分・共産1時間18分

 
 ちょっとこれ、ひどすぎると思いませんか。
 本来自民の時間であったものを与えられただけに過ぎない「他人の時間」を、さも自分たちのモノかのように民主はふるまって、自分たちの都合だけでおおさか維新の会に割り振らなかったのです。
 その結果、比較としておおさか維新の会の質問時間はとんでもなく短くなってしまいました。
 さらに悪質なのが、この「本来おおさかが受け取るハズだった自民分の時間」を自民に返しているならまだしもなのですが、民主はその大部分までを自分たちの時間に横取りしてしまっているのです。
 小汚いとか、そんなレベルを超えていると思いませんか?
 本来は自民の時間であるモノなのに、民主はさも最初から自分のモノかのように振る舞い、数の力を持っておおさか維新の会の時間を潰したのです。
 
 普段、自民党のコトを「数の力を背景とした暴力的な国会運営」と言いながら、自分たちこそがまさに「数の力を背景とした暴力的な国会運営」をしているのです。
 まして「野党分に比例して配分する」という手続きを事務的に処理するためだけの野党第一党という立場なのに、その便宜上の権限でしかない力を悪用して自分たちの党利党略に使ったのですから、その悪質さというのは何にも比べられないほどだと言わざるを得ないワケです。
 
 だからおおさか維新の会も、委員会審議という場で異例の野党への抗議を質問の中で行いました。
 ここでしか正式に発言できないんですよね。
 なにせ、秘密会である「理事会」では、多数決という数の力でおおさか維新の会の抗議を封殺するコトができるのですから。
 
 また同時に、いつも自民党に対して数の力カズノチカラと唱えているマスコミも、この本当の数の暴力には何も言わないんですよね。
 あまりにも勝手です。
 本来これは、国民の投票の結果を表した議員数に応じた質問時間という民主主義の根幹に関わる問題であり、政党間の駆け引きだけに終わらない、民主党による民主主義の否定という大問題のハズなんですけどね。