劇場型政治の危うさ

 予定を変えて、ちょっと例の築地移転問題について一言言っておこうと思います。
 
 多少過激な言い方になりますが、小池知事は自らの立場を固めるために築地市場移転問題を生け贄にしたのではないかと言わざるを得ません。
 この問題、決して「コンクリートの空洞」そのものが問題ではないハズなんですね。
 この移転問題で一番重要なのは「安全かどうか」です。
 まずここを確認したいです。
 
 勘違いしないでもらいたいので言っておきますが、決してやえは、コンクリート空洞がいいと言いたいワケではありません。
 むしろ、コンクリート空洞の善し悪しなんかを議論している時点で、本来の議論から遠ざかっているんですね。
 今回やえが問題にしたいのは、議論の持っていき方です。
 小池知事、まずコンクリート空洞を絶対悪だと決めつけた上で、それに関わった人を断罪するコトで自らを正義の位置に固定するような手法を採ってしまってはいないでしょうか。
 自分以前の人は間違っていて、自分はそれを正す正義の味方だと位置づけるワケです。
 まぁ古今東西、政権や王朝が代わるたびに採られてきた手法ではありますが、こういう一方的な断罪の手法を用いてしまっているのではないかと、大変に危惧するのです。
 
 例えば、なにやら石原元知事が記者会見で空洞方式について言及したからというコトでテレビなどに吊し上げにされていましたが、これ、おかしいですよね。
 さも石原元知事が記者会見で言及したから空洞が決まったかのような伝え方をしていましたけど、実際その会見を見れば、単に空洞は可能性のひとつとして一例を挙げていただけっていうのはすぐ分かります。
 だいたい記者会見ですよ?
 そこは都政の政策決定をする場でないコトは明らかであり、そして決定を伝える会見でもなかったワケですから、どういう方式にするかの決定は後日正式な都の中の会議で決まるっていうのは言うまでもありません。
 つまりこれだけで「可能性のひとつとして提示してみただけ」っていうのが簡単に分かるワケです。
 まさか、可能性を言うだけで批判されるっていうのは、あまりにも非自由主義過ぎますよね。
 むしろ為政者としては、あらゆる可能性を検討するコトの方が重要であり、そういう意味ではむしろ石原元知事のこの見解は褒められこそ、批判されるコトではありません。
 むしろ批判する方が間違っていると言うべきです。
 
 でもマスコミは石原元知事は吊し上げられました。
 空洞方式を口にするだけで悪かのような雰囲気のもと、検討するコトさえ許さないという前提でのつるし上げです。
 これって絶対違うと思うんですね。
 一番重要なのは、「盛り土=正義・空洞=悪」の方程式に当てはめるコトでは決してないワケで、どの方法が最も安全かを確認するコトです。
 更に言えば、もしかしたら、石原知事時代に様々な検討された結果として空洞形式が最も安全だというコトで決定が成されたのかもしれません。
 よって今やるべきは、そういう検査などの資料を精査するコトであり、またいまの段階での安全性を冷静に考えるコトです。
 少なくとも、今のまだ精査が終わっていない段階で空洞は絶対悪だとしてそれに関わった人間を次々に断罪する行為に害はあっても得も意味もあるとは思えません。
 意味があるとすれば、小池知事の足下が堅くなるコトぐらいでしょうか。
 
 繰り返しますが、いまこの段階でコンクリート空洞が正しいかどうかなんてコトを判断する材料も知識もやえは持ち合わせていませんので、その是非を問うているワケではありません。
 問題なのは議論の進め方です。
 どうも小池知事ははじめから築地市場移転問題を都政第一歩の目玉としてやり玉に挙げようとしていたきらいがあり、その上でちょこっと調べてみたら空洞が見つかり、それ見たコトかと精査もせずに一気に悪玉に祭り上げてしまったのではないのでしょうか。
 これはやっぱり間違っていたと言わざるを得ません。
 本来であれば空洞が見つかったのであればまずはその経緯を精査をすべきだったのです。
 だって少なくとも小池知事にとってはある程度時間を掛けて精査しなければ、これまでの経緯なんて分からないハズなんですからね、これまで都議会議員でも都の職員でもなく、初めて都政に参画するコトになったのですから。
 だったらもっとマスコミにオープンにする前にすべきコトがあったハズでしょうと。
 最低限、現状の安全に関する調査、各数値は計った上で、その結果が危険だったのであれば、その時に「このように危険だ」と公表すべきだったと思うのですが、実際のところは逆でしたよね。
 それなのに実際に行ったコトは、「空洞が見つかりました。とんでもないコトですね。前までの知事は何してたんでしょうかね」であり、水質調査などもわざわざマスコミを引き連れて行っていましたよね。
 やっぱりこれ、色々と順番が違いすぎる気がしてなりません。
 しかも安全基準適合無いという結果でしたし。
 
 これらの結果、もはやマスコミは問答無用でコンクリート空洞=悪になっていて、それに関わる人間を断罪するコトで視聴率を稼ぐ思考になってしまっています。
 しかしこれは正しい政治の行いなのかどうかは、大変に疑問が残ります。
 もし今後の調査の結果、いまの方式の方がより安全だと判明する可能性だってあるワケですし、しかしそうであったとしても、おそらく小池知事は今さら方針転換できないでしょうし、仮にしたとしたら今度は石原元知事に対してはかなり悪質な名誉毀損をしたコトになります。
 手間もお金も様々面でも損失ですよね。
 また、そもそもとして現段階でコンクリート空洞が悪だと確定しているワケではないのに、悪かのように言ってしまっているコト自体が間違いなんですよね。
 また仮にコンクリート空間が盛り土よりも危険度が高いというコトが判明したとしても、それは当たり前ですが確定した時に方針の撤回や処分を行うべきです。
 仮定の状態で他人を断罪していい理由なんてありはしません。
 そしてそれが現代日本で行われる正しい政治であるハズがないのです。
 
 いまこの問題については冷静になれない人が多い気がしてなりませんが、本当にここのところを冷静になってよくよく考えてもらいたいです。