日韓合意という“国際的な”強力なカード

 あけおめでございます。
 今年はどんな年になるのか分かりませんが、ぜひよい年になればいいと願っています。
 皆様どうぞ今年もよろしくお願いします。
 
 さて、総理大臣の評価論の続きを書こうと思っていたのですが、ちょっといま話題になっている日韓合意の件で、ホットなウチに今一度言っておきたいコトがありますので、今日はそちらを書かせて頂きます。
 
 一昨年末当時はだいぶ悪く言われていた日韓合意ですが、実際はこのように、日本にとって強力なカードになっています。
 ここで勘違いしてはいけないのが、日韓合意とは「日本が10億円払うから、韓国は慰安婦像を撤去しろ」というお金がトリガーになって発動するような構図の合意ではない、というコトです。
 正確には、日韓合意とは双方がそれぞれが履行すべき行為を並行的に規定されたモノです。
 
 日本は財団設立のために10億円を拠出する。
 韓国は大使館前の慰安婦像の撤去に努力する。
 両国はこの合意で慰安婦問題が解決されたので、以後国際的な場でこの問題を蒸し返さない。
 
 これらはそれぞれ別モノの履行項目であり、例えば仮に韓国が一方的に10億円を日本に送金したとしても、だからといって日本が合意内容を履行した事実は変わりませんし、韓国が合意内容を履行していない事実も全く変わりません。
 「日本が10億円払ったから韓国は履行しなければならない」のではないのです。
 韓国としては、日本がどんな行為を行ったとしても、仮に日本がまだ10億円を拠出していなかったとしても、それでもやっぱり韓国は慰安婦像などの合意内容に対する履行の義務は存在します。
 10億円は条件でもトリガーでもありません。
 ただの日本側の履行内容なだけなのです。
 
 そしてだからこそ日韓合意は強力なカードになっているのです。
 しかもこれは「国際的に強力なカード」です。
 間違えてはいけないのが、日本は決して韓国だけを相手に外交をしているワケではありません。
 韓国はどう思っているのか知りませんが、日本は常に国際社会に対して外交を行っているのであり、韓国に対する態度も、全ては国際社会に日本がどう映るのか、国際社会に対して日本のプラスになるかどうかを基準にして外交を行っているのです。
 ですからもちろん、日韓合意も国際社会の中における外交の1つとして結んだワケであり、国際社会に向けた効果を狙ってのモノであるワケです。
 
 その上で日韓合意は日本にとって大変プラスになっていると言えます。
 なぜか。
 一番大きい理由は、先ほど説明しましたように、日韓合意は条件が合致したら成立するという構図のモノなのではなく、合意自体がまず成立という形になっており、その先にそれぞれ両国が内容を履行する形になっているという構図になっているからです。
 すなわち「相手がどうあれ、自分が履行すれば、自分側はそれで終わり」なんですね。
 そして日本はすでに履行しているワケです。
 ちょっとアレな韓国人はともかく、理性ある法治国家の国民であれば日韓合意の内容をキチンと読めばそれぐらい簡単に分かるコトですから、「日本は合意を守った。一方韓国はどうか」という単純な問いに対してどう答えを出すかなんて、まさに言うまでもないコトなのです。
 「お互いに自国内のコトを履行する」という、並行的な内容だからこそ、どちらかの行動の是非と賛否が一目瞭然になるのです。
 
 そしてもう一つ大きなコトが、この日韓合意の一次ソースがフルオープンにされた記者会見で日韓両国の外相の生の言葉によって発表されたという点にあります。
 当時は「なぜ文章じゃないんだ」という批判もありましたが、文章ではどうしても解釈に差が出てきかねません。
 特に違う言語間でのやりとりなんですから、微妙なニュアンスも含めて完璧に同じ文章を作るコトは不可能です。
 よって日韓合意は、それぞれの国民に向かって自国の外務大臣が直接言葉に出して合意内容を発表するコトによって、そういう後々の齟齬を消し去っています。
 そして同時に、これを全世界にテレビという逃げ場のない方法で発表するコトで、二国間だけではない全世界の人間を証人とするコトに成功しました。
 先日岸田外務大臣がヨーロッパ訪問中にこの問題について「国際的に高く評価されている」と言ってましたが、テレビによって全世界に広く告知された合意なのですから、どこに行っても日韓に関係ない地であったとしても、堂々と「日本は合意を履行している」と主張するコトができるのです。
 
 ハッキリ言って、このロジックの前に、さすがの韓国人も真っ向から否定できていません。
 ですから「日韓合意の範囲外だ」ではなく「日韓合意を破棄しよう」としか言えないんですね。
 まぁお金を返せば破棄できると思っている姿は正直滑稽だと言わざるを得ないのですが、とにかく、日韓合意がこの問題の強力なカードになっているコトは、これでもう完璧に証明されていると言えるでしょう。
 
 慰安婦問題については、過去何度も言ってますように、一番の原因は日本のマスコミにあり、そしてそれを享受した日本国民にあります。
 河野談話も、当時は「なぜ明確に日本の責任を認めないのか」という声が大きく、むしろ保守系からは「日本軍の直接的な関与はなかったと政府が認めて良かった」という声があがったぐらいでした。
 これは当時の日本の雰囲気がなせるワザであり、先日の更新に対する反応でもどうしても昔の日本の雰囲気が理解できない人がいて、それはまぁ仕方ないのかもしれませんが、しかしそれを今の時代になってから政治家や政府に責任を転嫁させるというのは許されるモノではありません。
 こうした歴史に終止符を打ったのが日韓合意なんですね。
 
 これは合意直後にも言いましたように、日本国民としては、これをシッカリと冷静に受け止めて、何より「日本は誠実に履行している」という事実を確認する必要があります。
 そして「履行していないのは誰か」というコトも確認するコトです。
 一番愚かしいコトは「日韓合意なんて結んだ日本政府はけしからん」と、相手を利する言動をとるコトです。
 日韓合意の一番のキモは、10億円でも慰安婦像でもなく、「国際的にこの問題は終わりだ」と宣言した点です。
 同時に、日本も韓国も国際社会の中でこの問題を蒸し返さないというところにあります。
 これが日本にとっては一番のメリットなのであり、ここさえ守れば韓国国内でどんなモノ建てようが、特にどうでもいいのです。
 だって外国から仮にそれについて聞かれても「日韓合意で終わったコトだから」と説明できるのですからね。
 それなのに韓国がわざわざ日韓合意を履行しようとしないのですから、日本とすればそれなら「誠実に履行しなさい」と言うしかないワケで、それで全てなんですよね。
 「日本は履行した。では韓国はどうか?」と言えばいいだけのお話を、なぜ自国政府批判に繋げなければならないのか、そんなのは全く無意味ですよね。
 このように日韓合意は、日本にとって国際的な強力なカードになっているのです。
 
 そしてもし、万が一にでも合意が破棄されるようなコトになれば、それは破棄した方が悪いのです。
 当たり前です。
 この時こそ日本人は冷静に当たり前のコトを当たり前に言う冷静な判断が必要となるでしょう。