なぜ国内制度を外国との交渉で決めなければならないのか

2012年4月15日

 今日の朝のワイドショーもどきの番組で、コメンテーターか誰かかこんなコトを言ってました。
 
 「反対派は国民皆保険制度が破壊されると言っているが、外務省は、交渉の中で出てくる可能性はあるぐらいにしか言っていない。つまりそんなのは交渉次第なんだから、早く交渉のテーブルに着くべきだ」
 
 意味が分かりません。
 なぜ日本国内の制度の問題を、外国との交渉の中で決定されなければならないのでしょうか。
 国内の制度は国内で、つまり自国民の中での議論によって決定されるべき問題です。
 そんなの当たり前ですよね。
 
 これがまだ貿易の問題とかでしたら外交問題でもありますので分かりますが、しかし少なくとも国民皆保険制度はそういう問題とは質が全然違います。
 例えば、日本がもともと自由診療の国で、その中で薬とかの分野で自由貿易すべきとかでしたら、ちょっと医療の問題なのでなんでも自由というのもどうなのかとは思いますが、それを考えないコトにすれば分からないコトもありません。
 でも混合診療禁止の制度、国民皆保険制度とは、まずその基本設計に、『全ての国民がお互いに補完し合う形で誰しもが安価に医療を受ける権利を保障する』という思想が根底にあるモノであって、これは経済とは全く無関係ない思想による制度なのですから、ここを経済問題でもって崩すというのは、全くの筋違い、的外れの意見です。
 もし医療の世界でも自由貿易をと言うのでしたら、最低限まずは国内の議論によって「国民皆保険制度」という制度を廃止すべきという結論を得てからが筋です。
 その後であれば自由貿易にするかどうかという議論が起きても良いとは思いますが、しかし、国民皆保険制度という国民がお互いを補完するという意味合いの制度を壊すために、自由貿易という経済問題を持ち出すのは、もはやデタラメとしか言いようがありません。
 
 アメリカには王様はいないから、日本も天皇という制度は廃止しようと言っているようなモノです。
 いえ、アメリカの国家元首は選挙で決めるから、日本の国家元首たる天皇も選挙で決めるべきと言っているようなモノです。
 ひどすぎますよね。
 
 まずは国内議論ですよ。
 なんで国内制度の問題を、外国と話し合わなければならないのでしょうか。
 そもそも外務省が「交渉の中で出てくる可能性がある」という時点でアウトです。
 もし外務省が「絶対にTPPでは国民皆保険制度が崩されるような事態にはならない」と言うのであれば、それは安心する1つの材料にはなるでしょう。
 でも、交渉する余地がある時点で、「制度としては国民皆保険制度が崩れる仕掛けも組み込まれている」のが確定なのですから、もはやこの事実は「TPPは欠陥制度」というコトを証明する証拠にしかなりません。
 TPPのシステムとして、他国の主権問題に関わる触れてはいけない部分まで手を突っ込めるようなシステムになっているワケです。
 これはもう制度として欠陥ですよ。
 どの国にだって、他国の経済ではない、国民の基本思想に関わる問題をいじる権利なんて持っていないのです。
 まずは経済問題だけしか扱えないようなシステムにするのが先なのではないでしょうか。
 
 しかも、昨日と内容がかぶるのですが、結局「交渉次第だから交渉すべきだ」というのは、TPPがどう日本に国益をもたらすかという説明にひとつもなっていないんですね。
 この説明は、反対論をやりこめようとしているだけの、稚拙な反論のための反論にしかなっていません。
 そうではなくてですね、反対の人を説得したいのであれば、いまTPPに参加すべきと言っている人は当然なんらかの日本のメリットがあるという根拠を持っているハズなのでしょうから、それを説明すればいいのです。
 それだけでいいのです。
 もしそれが納得しうる理由であれば、賛成者も増えるでしょう。
 やえも納得すれば賛成しますよ。
 それなのになぜ、TPPに参加すべきだと言う人は反対する人の意見に反論するばかりなのでしょうか。
 
 ましてこの国民皆保険制度のお話は、反対派の懸念を払拭するコトが出来ていないばかりか、むしろ反対せざるを得ない理由を強化させるコトにしかなっていません。
 交渉すればいいではなく、まずは日本にとっての国益とは何か、メリットとは何かという部分を説明するのが先でしょう。
 そしてまずそれがあってから、ではその国益の中身についての議論をするコトが出来るのです。
 これができていないいまは、スタート地点にすら立っていないと言わざるを得ないでしょう。
 
 なにやら聞けば聞くほど、調べれば調べるほど、TPPへの不信感が高まるばかりです。