もうちょっと都構想について

2012年4月15日

 さて、もう皆さんご存じかと思いますが、新しい大阪市長が誕生しました。
 元大阪府知事の橋下さんが、けっこうな差を付けて、前職の方を破って初当選されました。
 

 選挙:大阪ダブル選 「橋下維新」が制覇 市長選圧勝、知事に松井氏 都構想、推進へ
 
 大阪府知事・大阪市長のダブル選は27日投開票され、市長選は大阪維新の会代表で前知事、橋下徹氏(42)が、現職の平松邦夫氏(63)=民主府連支援、自民府連支持=を破り、初当選した。知事選は大阪維新の会幹事長、松井一郎氏(47)が、前同府池田市長、倉田薫氏(63)=同=と弁護士、梅田章二氏(61)=共産推薦=ら6人を破って初当選した。「大阪都構想」を掲げる維新が大差で両選挙を制したことで、府市は15年4月の都制移行に向けた制度設計に入る。実現には法改正が必要なため、維新は国政進出も視野に既成政党への攻勢を強める。
 
 ●大阪市長選確定得票数●
 
当 750,813 橋下徹 <1>諸新
  522,641 平松邦夫(1)無現

 
 選挙結果については、やえは大阪の事情をよく知りませんので特にコメントはありませんが、とにかく橋下さんが新しい市長として、これから色々と改革をされていくのでしょう。
 注目です。
 
 で、この前からの橋下さんの言う都構想について、web拍手でコメントを頂きましたので、ちょっと考えみたいと思います。
 橋下さん、これで晴れて市長になったのですから、この都構想をどのように進めていくのか、そういう意味でもキチンと考えてみたい問題です。
 

 地方分権の件について、無知なので質問も兼ねて。
 橋下氏は「大阪都構想によって地方分権が進む」という主張をしているわけですが、都の構造にして大阪市などを複数の「区」に分解すると、 大雑把にいえばその地域の管轄が市ではなくなり、府(都?)の管轄になる、ということでいいんでしょうか?
 その区域の自治を今まで市が行っていたのを、今度から府が行えるようにしましょう、ということでしょうか?
 今まで、都道府県よりも小さい「市」に自治権を与えていたが、それを取り上げるということに繋がるんでしょうか?(間違ってたら指摘してください)
 この解釈で正しいとするならば、下位の市に「分権」されていたものが、上位の府に「集権」されるわけなので 「地方分権」と「都構想」はどうしたって矛盾しますよね。分権って主張しているにも関わらず集権しちゃってるわけですし。
 それとは別にもう一つ知りたいことがありまして。 「大阪市は現在人口多すぎて行政きついからもっと小さい区に分割したほうがいい」といった記事(橋下氏の主張?)も見かけるのですが、 この観点から見て都構想はどうなのか、やえちゃんの意見を聞いてみたいです。もしよければお願いします。

 
 いい質問ですねぇ(池上さん風)
 まずですね、基本的なところを復習しましょう。
 区についてです。
 
 現在日本の中で使われる言葉としての「区」には二種類あります。
 東京の中に存在する区、「特別区」と呼ばれるモノ。
 もう一つは、政令指定市との中にある「区」です。
 どちらも「中央区」とか「北区」とかいう使い方をするので混同しがちですが、これは全然別モノだというコトをまず確認してください。
 
 特別区の方の「区」は、枠組みとしては地方自治体であり、他でいう市町村と同じ仕組みであって、よってそこには選挙で選ばれる政治家が就く区長がいて、また同じく選挙で選ばれる政治家が就く区議会議員が存在します。
 この構図は、市長と市議会議員がいるのとまったく同じです。
 一方政令指定都市の区は、それはただの分類上の呼び名に過ぎず、区長という役職はありますが、これは市役所の1つのポストに過ぎず、選挙で選ばれる政治家ではありません。
 仕事の内容はもちろん違いますが、「○○課長」という、そういうポストの1つと思ってください。
 ですから、政令指定都市の区には議会がありませんし、区議会議員もいません。
 東京の特別区は1つ1つが地方自治体であり首長と議員がいる、政令指定都市の区はただの区分分けの名称の1つでしかない。
 特別区と政令指定都市の区にはこういう違いがあるという風に思っていただければよろしいかと思います。
 
 もうひとつ確認するコトがあります。
 では「政令指定都市」と、それ以外の「市町村」と、「特別区」は、権限や仕事との内容的にどう違うのでしょうかという問題です。
 これ細かいところまで言い出したら1冊の本が書けそうなぐらいの分量になるでしょうし、そもそもやえもそこまで詳しいワケではなく、むしろ専門家でないと言えない部分っていっぱいあると思いますから、ものすごく簡単な言い方になるのですが、まず、政令指定都市については都道府県並みの権限が与えられていると言えます。
 厳密にいえば都道府県よりは小さい、例えば警察の管轄は都道府県のみですし、 病院の設置に関する許可も都道府県だけなどいろいろとあって、詳しくはウィキペディアでよくまとめられていますのでご覧になっていただきたいのですが、つまり厳密に言えば都道府県の方が権限は大きいですけど、逆に言えばここに記載されているぐらいしか違いが無いワケで、つまり「都道府県並」と言ってもいいぐらいは同じぐらい力があると言えます。
 よって権限を記号で表しますと、「都道府県≧政令指定都市>市町村」と書くコトが出来るでしょう。
 
 では「特別区」はと言いますと、こっちもウィキペディアが詳しいのですが、例えば「特別区は「上下水道」・「消防」などの事務に関しては単独で行うことができず、特別区の連合体としての「都」が行っている」とありますよう、一部市町村より権限が小さいモノもあります。
 また税収についても一部市町村との違いがありまして、ちょっと長くなりますが、
 

 市町村民税(法人分)、固定資産税、特別土地保有税は、「都区財政調整制度」(地方自治法第282条)により、財政調整の原資となり、都と特別区とで協議の上、都条例で配分割合を決め、特別区の財源不足額に応じて、財源調整交付金として各特別区に交付される。国有提供所在地等所在市町村交付金、国有資産等所在市町村交付金、特別とん譲与税は、通常は市町村に交付されるが、特別区の区域においては都の収入となる。都市計画税を原資とした都から特別区への補助金として、都市計画交付金がある。地方交付税制度上も、都と特別区の区域については、両者の基準財政需要額と基準財政収入額を算定した上で、道府県分と大都市分として合算して算定(合算特例)されることになっている。

 
 このように、市町村では直接市町村に入る税金の一部が、特別区の場合は都に入るようになっているなど、市町村より権限が小さい部分もあります。
 ただし良く読むと、結局配分を変えて別の区に振り分けるというコトになっていますから、これは地域差を少なくしようという、そういうシステムだと言えるワケで、そこまで極端に小さい権限というお話でもないでしょう。
 よって権限の記号で表しますと、「市町村≧特別区」と書けると思います。
 
 まとめますと、「都道府県≧政令指定都市>市町村≧特別区」ですね。
 
 ちょっと長くなってきましたので、続きは次回以降にしようと思いますが、以上のコトを踏まえた上で、まず最初の質問の回答です。

 橋下氏は「大阪都構想によって地方分権が進む」という主張をしているわけですが、都の構造にして大阪市などを複数の「区」に分解すると、 大雑把にいえばその地域の管轄が市ではなくなり、府(都?)の管轄になる、ということでいいんでしょうか?
 その区域の自治を今まで市が行っていたのを、今度から府が行えるようにしましょう、ということでしょうか?
 今まで、都道府県よりも小さい「市」に自治権を与えていたが、それを取り上げるということに繋がるんでしょうか?(間違ってたら指摘してください)

 これにつきましては、大阪都になれば、その土地の直轄……と言う表現が適切かどうかはちょっと分かりませんが、一番身近で小さい地方自体は「区」になるワケで、地方自治体が都だけになるというコトではありません。
 まず一番小さい範囲の地方自治体となる、いままでの大阪市で言う「区」とは違う特別区の「区」には、区長がいて、区議会議員がいて、区職員がいるという形になるワケですね。
 今の大阪市には区長も区議も区職員もいません(区役所とその職員はいますが、あれは市役所の職員です)が、都にすると、市長や市議や市職員がいなくなる変わりに、区長・区議・区職員が誕生するコトになるのです。
 
 これによって変わるコトは、範囲と権限です。
 地理的な問題で、市は広いですが、区は狭いですね。
 れにより、いままで大阪市は中央区から都島区まで全ての「区」と呼ばれる地域を管轄し、大阪市長もこの中においては大きな権限を持っていたワケですが、これが特別区となると、大阪市という括りは消滅し、区長は自分の区内だけにおける権限しか有さなくなります。
 かなり権限を有する範囲が地理的に狭くなるワケなんですね。
 仮に区の分け方がいまと同じ地域であるとすれば、中央区には中央区長が誕生して中央区議会議員も生まれて、それらの政治家は中央区の中だけを色々といじれる権限を有するコトになります。
 政令指定都市であれば市長や市議が、中央区でも都島区でも、その問題を扱うコトが出来たワケですが、特別区になると都島区の区長が中央区の問題に手を出そうとする行為は越権行為になってしまうのです。
 法的に、そのような権限は与えられなくなるのです。
 
 それと権限の強さも、さっき言いましたように、政令指定都市である大阪市よりは区はかなり小さくなると言えます。
 「都道府県並み」から、「市町村並み」に変わるワケですね。
 よって、「大阪都」になれば、今までの大阪市の中に政令市ではない市町村がいっぱい誕生するという感じの感覚でいいでしょう。
 
 ですから、都にしたら旧大阪市の範囲が都の直轄地になるという感覚は違います。
 直轄地という感覚で言えば、「区」の直轄地になると言う方が近いでしょう。
 二重行政の問題で言えば、東京都の中にも都立の学校や図書館があるのと同時に、区立の学校や図書館もありますから、これは他の市町村でも一緒ですよね。
 市があって県があって国があるのと同じように、区があって都があって国があるようになるワケです。
 
 こういう構図になりますから、「都道府県よりも小さい「市」に自治権を与えていたが、それを取り上げる」というコトにはなりません。
 市にあった自治権は、さらに区に分散されるという言い方の方が適切だと思います。
 ただし、権限の強さは政令市よりも区の方が弱いですから、その差分の権限は都道府県に取り上げられるという言い方はできるかもしれません。
 まぁ政令市でなくなるワケですから、普通の市町村に戻るという感覚でいいかと思います。
 
 でですね、区は政令指定都市よりは権限が小さいですから、では知事の視点から見れば、それはやっぱり政令指定都市の市長よりも区長の方が意見を言いやすいっていうのはあると思います。
 
 
 (つづく)