都構想って「大東京に並ぶ大大阪にする」ためのモノなの? (下)

2012年4月15日

(つづき)
 
 さて前フリが長くなりましたが、やえが聞きたいのはですね、では果たして「都構想」とは何を目的としたモノなのかというところです。
 
 都構想はあくまで手段です。
 目的ではありません。
 ある目的があり、それを達成するための手段として都構想というモノがあるハズです。
 というか、そうでなければなりません。
 決して都構想が目的になってはならないのです。
 
 その上でもし「この大東京に並ぶぐらいの大大阪にしないとだめですよ」という目的を達成するための都構想であれば、これもやっぱり論拠としては全く乏しいとしか言いようがありません。
 そもそも「並ぶ」というモノがどういうモノなのかという問題もあるのですが、例えば経済規模なのか人口なのか、まぁいろいろあるワケですけど、ただどれにしてもこれは、別に東京が「都」という行政システムだからこそトップになり得たワケではないというコトは、冷静に考えておくべきコトです。
 東京は日本の中でトップの人口と経済規模だというコトは誰も否定しません。
 それは数字が証明しています。
 でもそれは、都というシステムではなく、むしろ東京が首都だという事実と、そして歴史が育んだ結果であって、行政システムの恩恵ではありません。
 
 東京は首都だからこそ人が集まり、結果としてお金も集まったのです。
 この首都という意味は法的なモノとかそういうのではなく、実質的なお話です。
 実質的に首都だからこそ、そこに集まった方が何かと便利だからと多くの人が自然と思ったからこそ、色々なモノが東京に集まったのです。
 そしてこれは、江戸時代から始まった数百年の歴史もあります。
 
 徳川家康が江戸を本拠地にしたコトで、実質的な行政の首都は江戸になり、江戸は当時の世界でもかなり有数の人口を誇る巨大都市に成り得ました。
 これが仮に江戸ではない土地で幕府を開いていたら、別のところが首都としてその機能を果たし、規模も別のその土地で栄えたコトでしょう。
 ある意味大阪もそうですよね。
 あの辺は古代から中世にかけてずっと首都の周辺地域であり、その恩恵によって商売が栄えた土地であるという歴史的事実があるワケです。
 東北地方でも中国地方でも九州でもなく、近畿のあの辺が栄えているのは、首都だったという歴史があってこそなのです。
 
 江戸時代もその前の時代も、都というシステムがあって、それによって栄えたワケではないですよね。
 結局「首都」という、人が集まりやすい実質的な行政の集合点があるからこそ、その地域が栄えるワケです。
 
 ですから、いまの大阪が東京並みになるのであれば、それは首都機能を大阪に移転するというのが一番合理的と言えるでしょう。
 それだけとは言いません。
 首都機能が無くても、経済規模が大きくなる可能性は、例えばニューヨークの例を見れば決してゼロだと言うつもりはありません。
 でも、少なくともいまの東京のここまでの規模になった理由の大部分は、東京が江戸自体から続く首都だったという点は無視できない観点です。
 そして首都は2つ置くコトは出来ません。
 
 決して東京は「都というシステム」にしたから発展したワケではない、というコトは事実として踏まえる必要があります。
 
 もし橋下さんが「この大東京に並ぶぐらいの大大阪にする」という目的のための手段として都構想を考えているのでしたら、それは多いな勘違いだと指摘するしかありません。
 まったく論拠たり得ていません。
 むしろ逆です。
 様々なモノが、人口やお金が東京並みになった時こそ、都という行政システムが相応しくなると言えるのではないでしょうか。
 以前規模のお話で色々と言いましたが、規模のお話をするのであれば、ここまでいかなければ無意味だと思います。
 それとも、「都」という名前が付けば東京に並んだつもりになるのですかと、言いたくもなってしまいます。
 
 大阪が発展するコトは望ましいコトです。
 それだけ日本の国力が強くなるのですから、それはもう是非とも頑張ってもらいたいです。
 でもそれは、決して都構想、つまり「法律を変えて大阪府を大阪都という名称に変えて、行政システムも変える」というコトだけでは不可能なコトです。
 もっと別の方法で橋下さんには樺って貰いたいです。
 大阪府知事時代に財政がどうなったのかというお話はまたあろうかと思いますが、しかしその“失策”をシステムのせいにしてはいけません。
 それが大阪市でなければならなかったのであれば、今度こそその手腕を発揮して、大阪を発展させてほしいと思います。
 
 都構想については、今後も書くかもしれません。
 なぜなら、結局都構想はなんの目的を達成するための手段なのかという部分が、いまだに見えないからです。
 誰も説明してくれないからです。
 そしてそれなのに、都構想という3文字だけがマスコミを通じて一人歩きしているからです。
 こういう実体無きキャッチフレーズの一人歩きは、例えば「政権交代」のような大失敗の再来になりかねません。
 ですからやえはやえの出来る範囲で批判をしてくさびを打っておきたいのです。
 
 これからも橋下さんは政界で注目をされつづけるひとりとなるでしょう。
 橋下さんは実行力のある人だと思っています。
 だからこそ、その言葉を虚構にしないようにしてほしいと思うのです。