一律給付金騒動の真実を探る-前編-

 お久しぶりです!
 突然ですが、あまおちさんがTwitterで投稿したものを、これはちゃんとブログに記録しておくべきだとか言い出して、やえに書き直してやえがアップしろとか突然のパスを投げてきたモノですから、新しいリボンと引き換えに受けました。
 というワケで、Twitterのぶつ切り文章を、やえの言葉に書き直してここにアップし直します。
 
 右も左もイッてよし!
 バーチャルネット思想アイドルのやえです。
 お題は「一律給付金騒動の真実を探る-前編-」です!
 
 さて。
 正直、やえもここ最近のマスコミやネット上の言説には違和感しかなかったんですよ。
 なにが違和感かと言えば、確か、この問題を巡る幹部クラスの政治家の発言は、3月前半~中頃まではこうだったハズなんですね。

・麻生財相(政府):現金反対
・二階幹事長(自民党):商品券
・岸田政調会長(自民党):現金給付
・斉藤幹事長(公明党):一人10万円

 いまネットで言われている印象の中で一番の違和感は自民党の岸田文雄政調会長です。
 何やらTwitter上では岸田政調会長は「限定30万円案を作った人」と言われている感じですが、しかしそもそもは現金給付の道筋を付けていたのが岸田政調会長だったという記憶がやえにはあるからです。
 なので、では事実はどこにあるのか、この辺を中心に様々な資料を引用しながら、それぞれの政治家の発言を追ってみたいと思います。

 まずネット上でよく言われているこの人から検証してみます。

・玉木代表(国民民主党):一人10万円

 これについてはやえはあまり発言に記憶がないで、まずは調べてみました。
 その結果、このツイートが出てきました。

明日発表の新型コロナウイルス対策第二弾の説明を与党から聞いたが、too little too lateだ。急速に経済が収縮しており一旦PB目標は先送りして ①家計減税(含む消費税減税) ② 1人10万円程度の簡素な給付措置 ③債務の支払猶予 を検討すべき。 これらを含む最低15兆円規模の緊急経済対策が必要だ。

https://twitter.com/tamakiyuichiro/status/1236927700662489088

 3/9のツイートです。
 早くから発言していたと言われているだけあって、一律現金10万円案に近い言い方をしているようには見えます。
 ただ、これをもって一律と主張したかというのはだいぶ微妙で、確かに「1人」とは言っていますが、しかし「一律」とは明言していないんですね。
 例えば限定配布の30万の時だって「1人30万円」と「世帯30万円」とでは意味合いはかなり違う上に、どちらでも日本語としては別の意味として成り立ちますから、「1人」だけでは「一律と言った」とは言いにくいと思います。
 もちろん、かなり早い段階から給付について言及しているのは確かでしょう。

 次に政府・与党についてですが、こちらについては次の記事がうまくまとめています。

急転直下! なぜ10万円に?(4/22付記事)
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/34154.html

 まず麻生財務大臣ですが、記事にもありますように、安倍総理が決断するギリギリまで現金給付には反対でした。
 これは麻生さんが総理大臣の時に行った1万2千円現金給付がうまくいかなかったコトのトラウマからのようです。
 ただこれは別のお話になりますが、麻生さんは安倍総理よりも当選回数も年も上だし麻生さん自身も総理経験者であるのにも関わらず、財務大臣としての主張はするけど現職総理の決定には必ず従うという姿勢をずっと貫いておられて、これはとても立派だなとは思います。
 これはなかなかできるものでもないですよ。

 次に自民党二階幹事長ですが、こちらはさきほどのまとめ記事には出ていませんが、二階幹事長もかなり初期から現金に反対していました。
 どっちかと言えば商品券派でしたね。

二階氏も現金給付に待ったをかけた。周囲に「商品券だよ。使わせるようにしなきゃ」
https://www.sankei.com/politics/news/200325/plt2003250040-n1.html

二階氏は「何かあるたびに現金を給付しなければいけないということではダメだ」と否定的だ
https://www.sankei.com/premium/news/200327/prm2003270008-n3.html

 このように、安倍政権を支える政府と与党の最高責任者である副総理と幹事長が共に現金に反対という、なかなか見ないタッグが生まれています。
 もちろん政策ありきですから、それぞれの政治家観からの発言なのだと思いますが、しかしこれ、本来ならなかなか切り崩すのが難しいツートップ布陣になっているというのが実際のところでしょう。
 まして両人とも派閥のトップですから、現職議員には高すぎる山になっちゃっていると言えるでしょう。

 では次に公明党に目線を移します。
 公明党はちょっと分かりにくいのですが、大きな流れで言えば、30万案が提示された直後はそれを了承し、しかし突然4月に10万円で噴火したって感じでしたね。
 どうもNHKの記事によれば創価学会に抗議の電話が鳴りまくったらしいです。
 ただまぁそれだけでは検証になりませんから、公明党幹部の給付に関する発言について頑張って探してみました。

個人に対し現金給付とクーポン券を組み合わせたハイブリッド(混成)が良い。現金給付は、所得制限をどこに引くのかで時間がかかるため、即効性という意味では一律にお渡しするのが良い

https://www.komei.or.jp/komeinews/p60897/

 3/23の記述です。
 公明党サイトの「ニュース」のコーナーで見た感じにおいては、給付への言及はこれが一番古いと思われます。
 ただし「現金10万円を一律」ではなく、「商品券もあり」の上で「所得等の制限無く一律」という言い方をしています。
 この辺、麻生財務大臣と同じように貯蓄に回るコトを危惧していたのかもしれません。
 また商品券と言えば、日本で初めて、小渕内閣でしたっけ、政府発行の商品券を出したのが公明党発案だったというのは、よく知られる話ですよね。
 
 さらに言えばですね、後述しますが、玉木代表もオール現金とはこの辺では言ってはいないようで、商品券を示唆している発言を同時にしています。
 このようにこの時期の多くの政党幹部においては、商品券の方が有効と考えていたフシがあります。
 
 最後に、立場を見極めるのが難しい、自民党の岸田政調会長です。
 よく言われている30万円案ですが、しかしこの30万円案を党内でまとめたというのは確かではありますが、それは4/3政府との協議後(NHK記事)の話だというのがポイントとなります。
 あくまで「政府と協議した結果の話」というのがポイントです。
 ですから、岸田政調会長が自分だけではどう考えていたのかというコトを探るためには、岸田政調会長が政府協議より前の段階で何をどう主張していたのかを探る必要があるワケです。
 
 そしてそれを探してみると、ニュースを追ってない人にとっては岸田政調会長が30万発案者だと思われがちなんですけど、しかし岸田政調会長は当初は“自民党幹部では珍しく”現金給付を言い続けていたというコトが分かってきます。

 例えば上記のNHKまとめ記事にはこうあります。

「国民生活を守るため、1人ひとりにしっかりと届く、手元に残る対策を講じなければいけない」と述べるなど、現金の一律給付を主張していた。

https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/34154.html

 
 この発言は結構重要です。
 「1人ひとりに」「手元に残る対策」です。
 まずは覚えておいてください。
 
 3/22のNHK日曜討論でも、現金給付について言及しています(ただしここでは商品券についても言及)。
 

自民 岸田政務調査会長 「現金給付をはじめ、思い切った対策を考えなければならない。税金や社会保険料の延納や税金の減免、それにクーポンや商品券といった形も考えられる。リーマンショックの時と昨年末の経済対策の2つを大きく上回る規模を考えなければならない。消費税は議論を拒否するつもりはないが、引き下げを見込んで事前の買い控えが生じてしまうという逆の効果も想定される」

https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/32216.html

 こういった経緯を見ますと、岸田政調会長は3月中頃までは麻生・二階を向こうにして、現金給付で動いていたのは確かだろうと思われます。
 そしてこの前後の17・18・26日に、岸田政調会長は安倍総理と会合を持っています。

安倍晋三首相は26日、首相官邸で自民党の岸田文雄政調会長と約30分会談した。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策を巡り意見交換した。自民党は3月中に政府への提言をまとめる予定で、対策の柱となる現金給付の手法などに関して協議した。(2本目の記事より)

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO56967960Y0A310C2PP8000 https://r.nikkei.com/article/DGXMZO57275380W0A320C2PP8000

 つまりこれは、3月の上中旬においては現金給付が実現するよう発信したり公明党などと調整したりしつつ、3月中下旬においては安倍総理や政府側とも折衝していた、そしてその結果として3/26~4/3の間のどこかで安部岸田の間で30万限定配布の調整が行われた、と見るべきかと思われます。

 もうちょっと岸田政調会長を深掘りしてみます。
 東洋経済記事です。

リーマンショック後に組んだ補正と同じ発想で、個人に直接お金を投入するというようなことも考えなければならないと思っている。ただ、時代は随分変化した。仮にクーポン券や商品券となると、準備に時間がかかったり、莫大な予算がかかったりしてしまう。商品券をこれから印刷したとしても、4月、5月までに間に合うか?ということもあり、そういったことも考えないといけない。

https://premium.toyokeizai.net/articles/-/23210

 記事中にもありますように3/12のインタビューのようで、つまりはこの時点で岸田政調会長には現金給付案があったようだというのがこれで分かります。

 以上のコトから、岸田政調会長には

・4~5月までには給付すべきという考えがあったこと。
・商品券には速度の面から疑問符を付けていたこと。

 というコトが分かると思います。
 
 ただし、東洋経済インタビュー後に行われたNHKの日曜討論では商品券も言及していますので、麻生財相・二階幹事長や公明党への配慮をしていたのだろうコトも見えてきます。
 この辺、岸田政調会長にとって見れば、金を出す直接権限のある財務大臣と、党内では上の役職になる幹事長らへの配慮は必要なんだろうというコトなんでしょう。
 日曜討論はある程度「党の代表」としての発言が求められますし、それだけに中間管理職的な辛さが垣間見えますね。

 だいぶ長くなっちゃいましたので、一旦ここでまとめます。
 箇条書きにしますと

・玉木代表は3/9に現金を言及。確認できる中で最速。
・麻生財相は安倍総理決断ギリギリまで現金反対。
・二階幹事長は商品券から4/14に突如一律10万発言。
・公明党は現金と商品券を言及。4月から一律10万。
・岸田政調会長は3/12に現金言及。4/3安倍総理会談後に30万案党内まとめ。

他野党は3/22日曜討論の引用から

・立憲:現金給付も1つの選択肢だが、広く給付することには否定的な声が多い
・維新:給付付き税額控除のような困っている人たちに直ちに現金
・共産:現金給付は、これまで景気回復の対策としては有効ではなかった

 との発言からまとめると、立憲民主党と日本維新の会はこの段階では限定案ですし、共産党なんか現金を全否定していることが分かります。
 共産主義からすれば全国民平等主義からして国がお金を出す方が主張に合うような気がするのですが、まぁそれはここでは触れないコトにしましょう。
 
 いまの段階で振り返ると、なにやらずいぶん言っているコトが変わっている人達がいますねと言いたくなっちゃいますね。

 そして岸田政調会長についてですが、限定30万案は安倍総理・麻生財相と共に岸田政調会長の責任の元決定されたのは事実ですが、ただそれは政府と与党の中で様々な調整をした後の統一見解の話なので、玉木代表Twitterなどの「私案」と比べるのはフェアではないでしょう。
 よって「私案」という意味では、岸田政調会長の現金給付案はかなり早い段階で提案されていた、と表現するのが適正かと思います。

 逆に統一見解で言えば、国民民主党のサイトによれば国民民主党としての10万円給付を決定したのは3/18となっていますので、これでも十分早いのですが、3/9よりもそれなりに時間は経っていると言えるでしょう。

 またこの政策発表記者会見における質疑応答の場面では

やはり現金が一番早くて便利というところがあるのですが、おっしゃるとおり貯蓄に回ってしまう可能性も高いので、その点については、例えば期限つきの金券を新たに政府から発行するとか、あるいは期限つきの電子マネーやポイントとして給付するということも考えていきたいと思っています。

https://www.dpfp.or.jp/article/202722/%E7%8E%89%E6%9C%A8%E9%9B%84%E4%B8%80%E9%83%8E%E4%BB%A3%E8%A1%A8%E8%A8%98%E8%80%85%E4%BC%9A%E8%A6%8B%EF%BC%92%EF%BC%90%EF%BC%92%EF%BC%90%E5%B9%B4%EF%BC%93%E6%9C%88%EF%BC%91%EF%BC%98%E6%97%A5%EF%BC%88%E6%B0%B4%EF%BC%89

 と、商品券やポイントを示唆していますので、実は玉木代表と国民民主党はこの段階では、全て一律現金だとは考えていなかったコトが分かります。
 次回で詳しく考察しますが、3/18の時点でも玉木代表は「一律10万円」と断言できておらず、この時点での玉木代表の主張というのは「1人10万円程度の価値の何らかの手当を、ある程度配布対象を限定して給付を行うべき」と言っていたと表現するのが一番近いと思われます。
 さっきも言いましたが、この段階においてはどうしても貯蓄に回ってしまうので現金配布に抵抗がある人が多かったので、この時点では給付派としてはわりと普通の意見かとは思います。
 
 一方、岸田政調会長だけがここの意見が全く違います。
 何度も出している3/22NHK日曜討論ですが、こちらの記事にはこう書かれています。
 

岸田氏は「手元に流動性が残る形の対策を講じなければいけない」とし、税金と社会保険料の延納や、税金の減免にも触れた。

https://www.asahi.com/articles/ASN3Q5SJ4N3QUTFK003.html

 手元流動性とは「手元にあって何にでも使える流動的な資金が、どの程度あるかを示す指標」(こちらから引用)であり、これは当然として預金額も含まれるので、つまり手元流動性を目的に現金給付を推し進めていたというコトは、岸田政調会長は初めから給付金が貯蓄に回っても良い、むしろそのために行うべきだと主張していたコトが分かるワケです。
 先ほど紹介したNHKの

「1人ひとりに」「手元に残る対策」

 というフレーズも、これに合致します。
 手元流動性を確保するための現金を一律に給付すべきだという意見ですよね、これ。
 
 そしてここが他の幹部とのスタンスの違いに出ているワケです。
 玉木代表をはじめ岸田政調会長以外の多くの政党幹部が商品券について遅い段階までまで捨てきれなかったのは、全ては貯蓄に回ってはならないという危惧からだったワケですが、岸田政調会長は逆に貯蓄に回っても問題ない、むしろそうあるべきだという考えがあったので、かなり早い段階で商品券を否定できていたと言えるでしょう。
 同時にこれは岸田政調会長の早期現金給付論者だったという証拠とも言えると思います。
 
 
 とりあえず、すんごく長くなったので、今回は以上とさせていただきます。
 次回は、玉木代表に焦点を当てて考察してみたいと思います。
 どうぞよろしくお願い致します。