電力自由化の難しさ

2012年4月15日

 いま東京電力が上から目線で企業に対して料金の値上げを迫っています。
 

 東電、値上げ請求拒否後に再契約した大口顧客に4月の値上げよりさらに高く料金設定
 
 東京電力の4月から始まる企業など大口向けへの平均17%の値上げをめぐり、また新たな波紋が広がっている。
 街の人は、「ひどいですよね。何か上から目線で」、「とんでもない話。何様だと思ってる」などと語った。
 東京電力は、27日の会見で「新しい契約料金に賛同できないと、契約が成り立たないので、電気をお届けすることが難しい」と語った。
 東京電力は、値上げを拒否した場合、電力の供給を止める可能性を示唆した。
 
 東京電力は、値上げを拒否したまま契約の更新を迎えた場合、すぐには電気を止めず、PPS(特定規模電気事業者)を紹介するという。
 しかし、あるPPSは「東京電力の値上げ発表以降、2~3倍の問い合わせが来ていますが、現状の客で電気の供給は、いっぱいいっぱいです」とコメントした。
 そのうえで、もしPPSとの契約ができず、結局、再び東京電力と契約する場合、驚きの契約内容が明らかになった。
 東京電力は会見で「今より、2割高い料金で設定しています。最後のご判断は、お客様(契約者)にしていただきます」と語った。
 平均17%の値上げよりもさらに高い、およそ2割高の料金を払う可能性があると、東京電力は主張している。
 東京都の猪瀬副知事は「結局、自分たち(東京電力)がいなければ、あんたがた困るでしょ? っていう、独占にあぐらをかいた意識がずっと残っている」と語った。

 
 やえはこういう態度は本当にダメだと思っています。
 東京電力は倒産させるワケにはいきません。
 そうしてしまうと賠償が出来なくなってしまうからです。
 賠償が税金だけで賄われてしまうコトになるからです。
 ですから、最低でも賠償が終わるまでは、東京電力とその社員たちには賠償金のために汗を流して働いてお金を稼がせなければならなりません。
 だから多少東京電力に税金が注入されたとしても、最後まで責任を持たせるという意味で倒産させてはならないと思っています。
 でもですね、この態度はダメですよ。
 「規約外の値上げをするけど、イヤならそっちから連絡してこい。連絡がないなら合意したと見なすからな」なんてのは、乱暴と表現する以外なんと言えばいいのでしょうか。
 規約外のコトをしているのは東京電力なのに、その態度はいったいなんなんでしょうかと言いたくなります。
 こんな態度はダメです。
 
 やえは本当は東京電力は国営化、半国営化と言った方がいいかもしれませんが、そうすべきだと思っています。
 東電は生かさず殺さずの状態にして、赤字でもいいからしばらくはそのまま経営させ、さっき言いましたように賠償金のために働いてもらうっていう形をとるべきだと思っています。
 どうせ賠償などが終わって一段落したら絶対に黒字になる企業なのですからね、いま赤字でもいいじゃないかと、まして原子力損害賠償支援機構を通じて税金が注入させているのですからね、そのままいまはやらせるべきだと思うのです。
 またこの半国営化には別の意味もあります。
 今回のような、ほとんど強制的な値上げなどをさせないためです。
 
 説明するまでもありませんが、電力会社はほぼ独占体制になっています。
 東京電力管内で東電以外から電力を買うコトはかなり難しいです。 
 実際東京都が、中部電力でしたかね、に電力が買えないかと聞いたところ、むずかしいという返事を得たというニュースが一ヶ月ぐらい前に流れていました。
 このように、東電関内の企業などが東電以外からの電力を買うのは事実上不可能と言っていいワケです。
 ですから、このように安易値上げなんてというコトはしてはならないハズなんです。
 
 民間会社だから赤字経営しろとか言うのは無理だし、値上げするというのも自由だろっていう意見もあるようですが、しかし電力会社は他の民間会社とは比べられません。
 法的に認められた独占企業だからというのが一番大きな理由ですし、また現在は税金が注入されている、特別に保護されている存在だからです。
 普通民間会社が値上げをするっていう場合は、それは倒産という最悪の事態との天秤にかけての決定です。
 値上げをすれば下手をすれば顧客が減って会社が持たなくなって倒産してしまうかもしれない、こういう事態を天秤にかけて、それでも値上げするしかないと思えば値上げし、そうでないなら値上げしないのです。
 でも東電は違いますよね。
 いくら値上げしても、東電は倒産しません。
 顧客が離れようがないワケですし、そしていまは国策として東電は倒産させないよう保護しているからです。
 こんな状態で他の民間会社と一緒に比べたらダメですよ。
 絶対に倒産しないと分かり切っての値上げなんて、こんなのは卑怯ですよ。
 まして他の選択肢がないのを分かってて「他から買え」なんて、どこのヤクザの脅しですかと。
 だからここは本当は、政府がシッカリと舵取りをしなければならない場面なハズなのです。
 
 ただ、国民もひとつ冷静に考えるべき部分はあります。
 例えばこの独占体制があるから東電が天狗になるんだ、電力は自由化すべきだと言う意見をよく聞きますが、しかしいまの段階では自由化なんて出来ないですよ。
 いまの段階とは、いまの発電施設のコトを言います。
 つまり、仮にシステム的にどこの電力会社からも電力が買えるようになっていたとしても、いま東電関内の企業が一斉に他の電力会社から電力を買おうというコトになったら、とてもじゃないですけど発電量が足りません。
 そもそもそういう理由で東京都は中部電力に断られたんですからね。
 ですからですね、この「電力を自由化しろ」という論は、日本中で発電する量を、無駄が出ても多量に発電させておく、それぐらいの発言が出来る設備を整えておくという前提が必要なワケなのです。
 
 例えばいまの日本ではどこにいても食べ物は買えるコトが出来ます。
 コンビニに行けばまず必ずおにぎりがありますよね。
 しかしこれは、需要量よりもかなり多くの供給をしている、つまりとてつもない廃棄量という裏側があってこそ成り立っているコトなのです。
 あまってもいいからいつでも食べ物を買えるように整えておく、これがいまの日本の「どこでも食料が帰る」という状況です。
 
 電力も一緒です。
 もしどこからでも買えるように、いつでも電力会社を選べるようにするためには、その電力会社は今の発電量よりもかなり多く作っておく必要があります。
 そうしなければ結局「ウチでは売れません」というコトになって、自由化とは呼べない状況になってしまうでしょう。
 しかしここで考えなければならないコトは、いまは原子力発電が悪という風潮になってしまって、なおさら電力供給量が日本全体で減ってしまっているという現実です。
 もはやこの夏は危ないとすら言われているワケで、この矛盾というのはシッカリと国民が考えなければならないのではないでしょうか。
 
 原子力を作るな、でも電力は自由化しろっていうのは、大きな矛盾をはらんだ問題なのです。
 この問題は他にもいろいろと視点がありますが、ここはひとつひとつ冷静に考えていかなければなりませんし、優先順位を定めていくべき問題だと思います。
 やえの中では、いまのところは「東電は生かさず殺さず赤字経営させろ」っていうところですかね、優先順位は。
 ですから、とりあえず自分の思うとおりに好き放題わーっと言うのではなく、一長一短あるコトを認めて、その中で整理して考えていかなければならないと思います。
 原発やめろ、東電つぶせ、値上げはするな、でも自由化はしろ、電気は好きなだけ使わせろ、っていうのは、ちょっと我が儘になってしまってはいませんでしょうか。