皇統問題1 「男系」とは系統のあり方ではなく資格

 改めまして皇統の問題をおさらいしていこうと思います。
 やえの考え方はこちらにまとめているのですが、当時は悠仁殿下もご誕生されていませんでしたし、なにより画面がピンクですから(笑)、もう一度今度はブログでまとめていきたいと思います。
 また、出来ましたらQ&Aも作っていきたいと思っていますから、もし疑問や質問や批判がありましたら、どうぞご遠慮なくコメント頂ければと思います。
 よろしくお願いします。
 
 ではまず第一回目は、「男系」とは系統のあり方ではなく資格というお話です。
 
 ここをよく思い違いしている人って多いと思うのですが、「男系」という考え方は、系統のあり方の考え方ではありません。
 現在の天皇と次の天皇との間柄、現在の天皇と先代の天皇との間柄などの、天皇と天皇との関係を示す考え方ではなくてですね、例えば「今上天皇から東宮殿下に継承されたら男系での継承だよね」っていう言い方は間違いです。
 正確には、「東宮殿下は男系の人です」「悠仁親王は男系の人です」という言い方をするのが正しくて、資格というとちょっとアレな感じはしますが、現代の感覚で言えば、「男系」とは天皇に即位するための必要最低絶対条件の資格という風に考えるのが正しい捉え方なのです。
 
 現在の天皇における男系とは、「自分から見てお父さんのお父さんのお父さんの…お父さんが神武天皇」というのが定義です。
 「悠仁殿下のお父さんのお父さんの…は神武天皇だから、悠仁殿下は男系の方だ」という言い方ですね。
 ここで重要なのが、「お父さんが天皇」という考え方ではない、この定義の条件にはそれは含まれていないという点です。
 つまり自分のお父さんが天皇でなくても、自分は天皇になる資格はあるというコトです。
 これはちょっと考えれば当然で、例えば悠仁殿下には皇位継承権が現在でもあるワケですが、しかし悠仁殿下のお父様でいらっしゃる秋篠宮殿下が天皇でなくも皇位継承権はあるコトは皆知っているコトですよね。
 そして当然現代の皇室典範にも「男系」が明記されていまして、その上で悠仁殿下にも皇位継承権があるのですから、悠仁殿下は男系の資格を有している方だというコトが言えるワケで、この実例を見ても、男系とは「自分のお父さんが天皇」という点は条件には入っていないというコトがハッキリしていると分かるワケです。
 あくまで男系というモノの条件は、「お父さんを遡れば神武天皇に行き着く」というだけの意味しかないのです。
 
 ですから、天皇と天皇との直接的な関係は、天皇に即位する際にはあまり意味はありません。
 もちろん皇位継承権の上位下位についてはここは密接な関係になります。
 基本的に皇位継承権第一位は天皇の実子長男だというのは長い歴史を見ても明らかなコトですが、しかしこれはあくまで継承権の順列に関係するルールであって、単に継承権を得られるかどうかの「権利」に係るルールではありません。
 天皇に即位出来るかどうか、皇位継承権を得られるかどうかというのは、現代では皇室典範によって様々なルールが規定されていますが、天皇の長い歴史を見れば唯一「男系」というルールのみが天皇の資格を縛っていたと言えるのです。
 
 また、男系は直接天皇に繋がらなければならないという意味でもありません。
 これも結局は同じコトになるのですが、男系とはあくまで資格であって、天皇と天皇との関係を示す考え方ではありませんから、直系とかなんとか、そういう考え方は意味を成しません。
 例えば悠仁殿下の場合は、自分から見て祖父が天皇ですからまだ直接の繋がりがあるように見えるので、だから天皇に即位する資格があるんだとかいうように勘違いしてしまいがちですが、それは直接的には天皇の即位には関係がありません。
 現在においても、第六位の皇位継承権者は寬仁親王殿下という方なのですが、このお方は今上陛下から見て従兄弟に当たる方になります。
 もうちょっと分かりやすく言いますと、昭和天皇のご兄弟のご子息というコトになります。
 で、ですね、現在もそうなのですが、継承権としては悠仁殿下の方が上ですから、まぁ年齢の問題がありますけど、例えば悠仁殿下が即位した後に、寬仁殿下が即位するという可能性も、これはあるワケです。
 この場合、悠仁殿下と寬仁殿下の間柄を示す適切な日本語ってちょっとないですよね。
 「お爺さんの従兄弟」ですから、ここまでくるとちょっと一般常識で考えれば「直系」とは言えない間柄と言えるでしょう。
 でもそれでも、現在の皇室典範で言っても、そういう継承のされ方が行われる可能性はある、実際の皇位継承のルールとしては明文によって確立しているワケで、長い歴史の天皇の皇位継承権としては間違っていない正当なルールでの継承と言えるのです。
 
 これは過去に似たような例はたくさんあります。
 こちらウィキペディアに天皇の系譜である皇統譜が転記されているのですが、こちらの46代と47代の天皇の間柄をご覧になってみて下さい。
 (46)孝謙天皇と(47)淳仁天皇ですね。
 ご覧下さい、この二方の天皇の間柄はどう説明すればいいのでしょうか、日本語としては一言で示す言葉はないと思います。
 敢えて言うなら「お爺さんの従兄弟」ですね。
 
 さらにいきましょう。
 同じページの48代と49代の天皇の間柄を見て下さい。
 ちょっと表現のしようのないぐらいの間柄です。
 敢えて言うなら「親戚」でしょうか。
 でも多分、現代の感覚でしたらこれぐらい離れていると「親戚」と言うのも憚れるぐらいの間柄でしょう。
 ひいひいお爺さんの兄弟の孫ですよ。
 自分に当てはめて考えて、顔が浮かぶ人っていますかね。
 もはや他人ですよね。
 
 でも、天皇に即位するにはこれでも問題がないワケです。
 これはひとえに、天皇継承のルールが「男系」という点のみにあるという証左です。
 最低限「男系」という資格を有していれば天皇に即位するコトが出来る、というコトがここから見て取れると言えるでしょう。
 
 まずここの頭のスイッチを切り替えてみてください。
 男系とは何かと聞かれたら、それは資格だと認識して下さい。
 天皇と天皇との間柄を示す概念ではありません。
 あくまでその人個人だけの資格に関する概念なのです。
 
 万世一系と言うとどうしても一本の直線で引かれた線のようなイメージを持ってしまいがちですが、もちろん行ったり来たりしながら皇統は一筆書きはできるワケですけど、でもそれは一本の直線という意味ではないのです。
 男系という資格を持つ人が常に天皇に即位するコトで、最終的には一筆書きが、たまには線の上をなぞって戻って辿るコトもありますけど、最終的には一筆書きが出来るという意味であって、万世一系もどちらかと言えば「辿れば初代天皇である神武天皇に遡れる」という点の方が重要だと言えるのです。
 男系とは、その線を表す概念なのではなく、その人の資格を表す概念なのです。
 
 
 さて次回は、「男系」という珍しい考え方が現代にも残っている理由という点を考えてみたいと思います。