予算の作り方

 今日は政治の仕組みについてのお話です。
 
 予算ってどうやって作られているのでしょうか。
 と聞くとちょっと考えてしまう人が多いと思いますが、例えば「財務省が自分達の省益を守るために都合良く作っているんだ」っていう発想の人は世の中に少なくない数がいると思います。
 また例えば「時の政権が自分達の政権維持のために地元にバラまくために予算を使っている」と思っている人も結構な人数いると思います。
 まぁそれは絶対にないとは言いません。
 田中角栄はそういう手法で権力を握っていったというのは否定出来ない事実ですからね。
 でもそれでも、その前の基本的な視点というモノが、これだけでは抜け落ちているのです。
 
 今朝あまおちさんが、あるツイートをしました。
 

 公共工事は「古い」のか「不要」なのか、この両者は全く別概念だけど「古い」はイコールで「悪」には繋がらない。繋げるなら論拠が必要。「不要」なら東京人の奢りかと。政令市の広島市内ですら未だに離合できない道があったりする。

 
 分かりやすく口調をいつも通りに勝手にしました(笑)が、このツイートに対して色々な反応が返ってきたんですね。
 基本的には「何言ってるんだ、東京にも公共工事必要だ」というモノです。
 様々な意見が色々といっぱいあまおちさんのところに来ました。
 「首都高の補修をしてもらわないと困る」「いやこっちの幹線道路はどうなっているんだ」「鉄道の補修は夜やってるから見えないだけで、本当は急務の工事なんだぞ」
 みなさん身近な問題として常に感じているコトなのでしょう。
 多分これは東京に限らず、もちろん広島に限らず、日本全国の人が同じような思いを持っている人は少なくないと思います。
 どうしてここはこんなに不便なんだろう、危険なんだろう、早く整備してくれないのだろう、そうみんな思っていると思います。
 
 日本の予算ってこうやって作るんですよ。
 現場の人が「必要だ」と思うからこそ、それを上に上げて予算として計上するのです。
 具体的に言いますと、地方自治体や中央省庁の出先機関が現場に立って必要性を感じれば、それを本省に上げていき、各省庁の本省はその各地の予算計上を受けて案としてまとめます。
 これを概算要求と言い、それを財務省に出すんですね。
 で、財務省はその各省庁の出してきた概算要求を精査してさらに1つにまとめて、「予算案」を作ります。
 そして予算案を内閣に示すのです。
 もうちょっと先を言いますと、形式的に言えばそれを内閣が閣議決定して国会に提出し、衆参で可決したら(予算は衆議院だけの可決でも成立しますが)予算が成立するというコトになります。
 流れとしてはこうなのですが、つまりですね、予算の最初の最初は全て「現場の声」というコトは知っておいて欲しいのです。
 
 日本の予算は財務省や国会議員が、現場を知らずして適当に作っているワケでは全くありません。
 むしろ現場から上がってきた声を国会議員が受け止めて、それをどう配分するかのやりくりをしているのです。
 一番良いのは、現場の声に全てOKするコトです。
 これをすると本当に無駄な予算も紛れ込んでしまう可能性があるのである程度の精査は必要ですが、予算が余りまくっているのであれば、総スルーが最も良い方法だと思います。
 でも現実は違います。
 歳入は減り続け、毎年国債を発行しなければやりくりできないというのが日本の財務の現状です。
 ですから、財務省や国会議員の予算に関する仕事というのは、上がってくる予算案に対してどう優先順位を付けるかという作業なんですね。
 財務省や国会議員が予算の入り口ではありません。
 むしろ出口です。
 入り口は「現場の声」なんですよ。
 
 現場の声はみんな切実で、大切だと思っているからこそ上に上げるのです。
 ですから全ての案は全部大切です。
 これは予算を担当する役人さんの意見でなくても同じですよね。
 今朝あまおちさんにツイートをおくってきた人は、全員が身近な問題として必要だと思うからこそ「ここの工事を早くしてほしい」と言ったのです。
 そしてもっと言うと、みんな「他の所よりも自分の所の方が優先順位は高い」と思っているのだと思われます。
 「広島には工事がまだまだ必要だ」って言うと「東京だって」と出てきたのですから、やっぱり「自分のところが最優先」と思うのは、ある意味仕方ないコトであり当然のコトだと言えるでしょう。
 
 予算とは、この思いがこもったモノが1個所に集まってくるモノなのです。
 
 全の予算には予算額と同時に、「自分のところが最優先だ」という思いも同時にこもっているモノです。
 でもお金は限りがあります。
 ではそれをどうするのかと言うと、そこを財務省や国会議員が精査するワケです。
 どれも大切なのは分かった上で、でもこっちの方を優先させようと「優先順位を付ける」のが国会議員の予算に関する仕事なのです。
 「現場の声」を潰す作業ですから、ある意味残酷で、しんどい作業ですよね。
 このように出口は残酷な精査によって決定されます。
 しかし忘れて欲しくないのは、入り口の部分は、つまり予算の基本精神とは必ず「現場の声」が第一声となって作られたモノであるというコトです。
 予算とは、予算を担当する仕事をしている人ではない一般の人ですら「ここは他よりも優先させて工事して欲しい」と言うぐらい、それほどの「思い」がこもっているモノだというコトは忘れて欲しくありません。
 決して予算の仕事は、上から目線で、自分の利益のためだけに作られている、雲の上の存在かテレビドラマの中のような「自分とは全く関係ない世界の話」ではないコトは知って欲しいのです。
 
 この機会に自民党の「国土強靱化計画」について触れようと思ったのですが、思ったより長くなってしまったので次の機会にさせていただくとして、まず理解していただきたいのは、予算っていうモノは基本的に「現場の声」だというコトです。
 どんな予算も、現場の人が必要だと思っているからこそ予算として計上しているのであって、全ては「人の思い」がこもっているモノなのです。
 ですからまず予算というモノを考える場合は、「そこに住んでいる人」がいるってコトをしっかりと踏まえてほしいです。
 その人の存在を無視しないで欲しいのです。