中選挙区制を考える

 中選挙区制度を考えてみます。
 
 中選挙区制度とは、その選挙区内でだいたい4~6人ぐらいの人が当選するという選挙の制度です。
 これは現在地方議会の議員選挙で採用されていますし、一昔前は衆議院でもこの制度が採られていました。
 近年小選挙区制度では結果が極端から極端に変わるというコトで、もう一度中選挙区制度に戻そうという意見があります。
 しかし中選挙区制度では、勝ち負けだけではない結果が出る、つまり一番手にならなくても選挙区によっては6番手でも当選となりますから、ある程度極端な結果にはならないだろうという点からです。
 ではデメリットはないのでしょうか。
 
 やえが考える中選挙区制度の一番のデメリットは、政党がひとつにまとまりきれない、もうちょっと言うと「政党の意見」がまとまりきれない点にあると思っています。
 なぜかと言いますと、中選挙区はさっき言いましたように複数人の当選者が出ますから、同じ選挙区に同じ政党の立候補者が複数人立候補するコトになってしまうので、結果、同じ政党同士でも戦わなければならなくなるからです。
 こうれば立候補者としてはどうしても「他人とは違う」「この人よりも自分の方が優れている」とアピールしなければなりませんから、現実的問題として絶対に「同じ政党の立候補者が同じ主張で戦う」というコトはあり得なくなるワケです。
 ですから中選挙区制度にすれば「同じ党でも別の意見を言う人」が必ず出る、これはもうシステム上絶対出るモノになってしまいますから、それはイコールで党内の意見がまとまりにくくなる、そして、国民からしたらわかりにくいコトこの上ない政党のあり方となってしまうのです。
 
 実際中選挙区制度だった時、この選挙制度が起因して派閥政治が隆盛を極めました。
 選挙で勝ち抜くためには、同じ政党である以上は平等に応援しなければならない政党の支援よりは、その候補を集中的に応援できる派閥の方が頼りになったからです。
 もちろんその時だって自民党は自民党としての意見を集約して政権を担ってきたワケですが、あの時は二大イデオロギー体制(自由主義経済の自民党vs計画経済的社会主義経済の社会党)だったからこそという面は否めません。
 やえは派閥を否定しませんし、派閥ごとに政策論争するコトはむしろ望むところではありますが、しかし選挙において同じ政党同士が争うというのはあまり見たくありません。
 選挙ってどうしても感情的な部分が残りますしね。
 ましてそれで意見が同じ政党の中でバラバラになってしまえば、果たして選挙とはなんだろうというコトになってしまうのではないでしょうか。
 
 妙なお話ではありますが、55年体制の時というのは、政権を担当するのは自民党しかあり得ないとほとんどの国民が思っていました。
 選挙の時も、時の総理が勝敗ラインを定め、そのラインに達していなければ例え自民党だけで単独過半数を占めていてもマスコミは「○○政権大敗」とか書いていたモノです。
 そういう時代においては、まぁ中選挙区制、派閥政治もいいでしょう。
 党内での政権交代が、イコール国民の声として政治に反映されていたワケです。
 
 でも今の時代、それはもう無理です。
 繰り返しますがやえはそういう55年体制の自民党の派閥政治を否定するモノではありません。
 それはそれで安定した政治が行われていたワケですし、だからこその高度成長などの様々な出来事があったのです。
 これを全否定するのは、むしろ現実無視でしょう。
 でもですね、今の時代はもう無理ですよ。
 勝敗ラインが「政党で過半数」と認識している現在は、もう党内政権交代での政治は無理です。
 
 だから中選挙区にするってコトは、今の時代の考え方に合わせた上で派閥政治を産む土壌を蒔くワケですから、新たな政治混乱に繋がってしまうのではないかと危惧します。
 いまの日本の政治状況で党内がバラバラだとどうなりますでしょうか。
 実証されています。
 民主党政権は、まさにそうでしたよね。
 党内バラバラ、それぞれが好き勝手なコトを言うけど、でも責任は誰も取らない。
 これでは政治は前進しません。
 最悪、中選挙区制度になるとこのような政治が常に行われてしまい、常に不安定な政治が続いてしまうのではないでしょうか。
 
 これは政治に限らないのですが、物事が上手くいかないからと、その責任を全て制度のせいにしてしまうのは下策と言わざるを得ません。
 制度は制度で、必ず一長一短あります。
 民主主義だってそうです。
 専制政治の方が優れている部分はたくさんあります。
 しかし民主主義だって優れている部分があるワケで、その上で民主主義政治を選択しているのですから、無いものねだりをするのではなく、あるモノをどう活用するのかを考えなければなりません。
 小選挙区制は極端から極端に流れるとは言いますが、果たしてそれは本当に制度だけの問題なのか、まずここからも考え直してみる必要があるのではないでしょうか。