言葉はその事情を正しく表現するモノ

 言葉ってその事情を正しく表現するモノじゃないですか。
 もし言葉が事情を正しく表現していないのであれば、その言葉はまったく意味を成さないどころか、むしろ存在自体が無意味なモノとなるでしょう。
 また逆に、いくら言葉を飾って本質とは異なる表現でもって言葉を紡いでも、その事象が言葉の方に変わるコトはありません。
 事象が事実であり、言葉が言葉である以上、本質は事象にあるのですから。
 
 最近「後進国」っていう言葉を使わなくなりました。
 理由はハッキリとは分かりませんが、おそらく「配慮」からだと思われます。
 「遅れている国」と書くのが憚れるっていうコトなのでしょう。
 ここのところ「発展途上国」とか「開発途上国」って言い方をしますね。
 でも残念ながら、こうやっていくら言葉の言い換えをしても、世界には「遅れている国」は存在します。
 もちろん人の幸せなんていうモノは人それぞれですから、後進国や遅れている国をもって「不幸せな国」と言うつもりはありません。
 言葉として「先進国」とか「発展途上国」とか「後進国」と使う場合は、基本的には経済を基準とした考え方になりますので、経済が世界トップレベルに発展していれば先進国、ワーストクラスなら後進国と呼ぶのが、事情に対する正しい表現でしょう。
 厳密に言えば経済以外の指針もあるのでしょうけど、しかし現代においては全ての基本に経済があると言っても過言では無い、軍事だって経済あっての軍事ですからね、まずは経済を指針の中心に置くのが現実的と言えると思います。
 
 しかしこの言い換えは、全ての国を調べたワケではないので例がある可能性は否定しませんが、基本的には日本だけのようです。
 英訳では「発展途上国」のコトを「Less Developed Countries」と表現します
 直訳すると「Less=少ない・低い」「Developed=開発」「Countries=国々」ですから、低開発国ですね。
 これは国連でも使われている正式な名称であり、日本の外務省でも英訳ではこう書き表しているそうです。
 
 さらに国連が定めたカテゴリーに「後発開発途上国」というモノがあります。
 分かりやすく言えば「最貧国」ですね。
 英訳だと「Least developed country」で、直訳すると最小開発国というコトになりますが、こういうランク付けもあるワケです。
 またこの国連の後発開発途上国の定義には、経済だけでなく「カロリー摂取量、健康に関する指標、識字率」なども指針として使われています。
 日本ではあまりこういうランクがあるって伝えられませんけどね。
 おそらくそれも、無意味な配慮なんだろうと思います、相手に配慮して本質とは離れるけどぼやかした言い方をするっていうのは、ある意味日本らしいとは言えますが、しかし、極めて現実的な対応をする場合には、極めて冷静で客観的な分析を行うために、冷徹でも最も本質を突いた言葉で表現しなければなりません。
 おそらく日本人にはこれは大変苦手な分野であり、過去にこれで何度も失敗してしまっている部分と言えるでしょう。
 
 だから、それは場合によっては違うんだと、日本人の美徳を大切にするコトと必要な時に必要な表現をするコトとは違うんだと、歴史から学んで改善させなければなりません。
 
 ここ数日、コメント欄の方でエジプトとか韓国に対して、一流国とか三流国とか、そんな言い方するなとか、そんな議論をさせてもらっていますが、極めて冷静的に現実的に物事を対処する際においては、その分析は客観的に本質を一番正しく反映させる言葉を用いる必要があります。
 最近やえのテーマとして「日本は一流国であり、日本人はこれを驕る必要はないけど、自覚する必要はある」っていうコトをよく言ってると思いますが、これは、日本人は自らを評価したり他人を下に明確にするのをイヤがりますけど、むしろこの考え方が日本外交の足かせになっているからと思っているからです。
 これは時間をかけてこれからも説いていこうと思っていますが、すごく簡単に言えば、最近別の事情で中国や韓国に強気に出て勇ましいコトを言うコトが流行ってるコトに対して、であるなら、まず足下の自分達自身についてちゃんと自覚しないとダメですよっていうコトが言いたいのです。
 日本のいまの立場を考えれば、紛れもなくG8の一角であるいまの日本の立場を考えれば、その立場から出来るコト、その立場でしなければならないコトがあるハズです。
 でも自覚しないが故に、あるべき立ち振る舞いが出来ていないんですね。
 だから逆に東南アジアとか普段日本にいると情報もあまり入ってこないような国に行くと、やたら日本への憧れが強かったり、「一流国としての様々な意味での期待」を求めていたりと、普段の日本人からすれば大きなギャップを感じてしまうワケです。
 いまでも「白人と対等に戦った唯一の国」という目で見られますし、それはアフガンやイラク戦争の辺りで自衛隊が現地に行ったときの逸話として、それなりによく伝えられたお話ですよね。
 日本は一流国であって、世界には三流国もあって、その差を極めて現実的に受け止めた上で日本は日本としての立場から日本の成すべきコトを成さなければならないのです。
 その成すべきコトをしっかりと考えるために、日本人は日本の立場と他国の立場を、極めて現実的に冷静に実情に即して意識しなければなりません。
 そのために必要なのが、「実情を最も反映した言葉」なのです。
 言葉をぼやかしていては、思考や判断までぼやけてしまいかねませんから。
 
 頂いたコメントの中に「じゃあブータンは三流国なのか」という趣旨のモノがありましたが、極めて現実的に判断するのであれば、三流国です。
 それは国連も認める「Least developed country(後発開発途上国)」であって、まぁ国連が言うから全て正しいというつもりはありませんが、ブータンはそういう国でしょう。
 そして国連としても日本としても、そういう「最貧国」をどう援助して支援して底上げしていくかは大きな課題ですよね。
 先日日本で「アフリカ開発会議」が安倍総理も出席して開催されましたが、これは「日本がアフリカ全体を支援して開発していこう」という会議です。
 この会議は将来の日本のタメにも続けていかなければならない会議だと思っていますが、つまり、いちいちその場で言葉に出して「日本が上だから下のアフリカを支援してやる」なんて言う必要は全くありませんけど、しかしその会議の出発点は、そういう上と下の構図だからですよね。
 この構図が分かっていなければ「アフリカ開発会議」なんて誕生しなかったでしょうし、それは支援を受けるアフリカだって分かっているワケです。
 「上」だから「下」を支援するんですよ。
 いくら序列化がイヤだと、感情が許さないからとか、そんな感情論を言っていたら、現実に対応できなくなってしまいます。
 
 キチンと認識できいればいいんですが、残念ながら日本人はわりと言葉に認識が引きずられる傾向にある文化を持つ民族です。
 そういう意味からも、やえは今後とも「日本は一流国だ」と言い続け、必要であれば他国を「三流国だ」と呼ぶでしょう。
 それが、その事象を正しく表現する言葉だからです。