図での印象操作にご注意(下)

 では前回にひきつづき、こちらのページに対するつっこみを続けたいと思います。
 
 前回はページの上段にある福島を中心とした日本地図の図が、結局何を指し示しているのか分からないというコトを説明しました。
 想像すると「これまで累積している放射性物質の量を指し示す図」なのかもしれませんぐらいには想像できるのですが、それをハッキリとさせる論拠がこの図には一切載っていませんので、少なくとも「この図を論拠にして何かを述べるコトは出来ない」という結論を出すしかない、というお話をしました。
 では今回は、引き続きさらにこの図の不可思議さを指摘しておこうと思います。
 
 今回は下段の図に注目して下さい。
 「フクシマとチェルノブイリの比較」というタイトルの図ですが、そもそもおかしいのが、このページのタイトルは「フクシマとチェルノブイリの比較(改訂版)放射能汚染地図(五訂版)12月9日」と、チェルノとの比較がメインの書き方なのに、なぜ肝心のチェルノとの比較の図が下に、しかも小さく置かれているのかっていう点が不可思議でなりません。
 この時点ですでに「このページ」に疑問があると言うしかないんですね。
 
 さらにそれは置いておくにしても、このページだけでは全く比較になっていないという、致命的な点については見過ごせません。
 前回の更新で「図や色を見ただけでは何が書いてあるのか判断出来ない」「それを判断するためには文字情報を読んで理解しなければならない」と言いました。
 ですからこの図を「理解するため」には文字情報を読まなければならないのですが、さてこれ、読めます?
 残念ながらやえには文字が小さすぎて、部分部分の文字が判読できるところはありますが、全体としての文章を理解出来るほどの大きさではなく、何が書いてあるの読めませんでした。
 これではこの図が何を指し示しているのか、図全体が意味不明なモノだと言わざるを得ません。
 
 さらにまずいのが、図自体はリンクできる仕組みになっているのに、リンク先がエラーで存在しないという点です。
 拡大された図がありそうなのに、無いんですね。
 これ意図的なのかどうなのか分からないのですが、もしこれ意図的だったらかなり悪質ですよ。
 つまり「本当は大きな図がありますよ」とパフォーマンスしつつも実のところは「文字が読めない大きさでしか図を用意していない」というコトになるワケで、これは確信的に「文章を読ませないようにしている」と言わざるを得なくなってしまうワケです。
 悪質ですよね、もしこうなら。
 
 よってこれだけでももう十分に「このページは一切の何らのデータや論拠にはならない」と言うしかありません。
 リンク先が意図的でなかったとしても、それでもデータが無いのは確かなのですから、これではそれを論拠に使うコトはできないワケで、この図の存在意義は全く無いとしか言いようがありません。
 むしろ人を惑わすだけの迷惑な存在とすら言えてしまうワケです。
 
 もうちょっと続けましょう。
 ページのタイトルにもありますように、この図は「フクシマ(そもそもこれをカタカナで書く時点で“意図的”ですけどね)とチェルノブイリの比較」なのですが、ではその「比較」とは何をどう比べての比較なのかというのが一番の問題になるワケですよね、本題としては。
 そしてそれは図だけでは分かりません。
 文字情報として、「この赤い部分はどういう数値を根拠として赤くしているのか」という部分を理解しなければ、タイトル通りの「比較」としてのこの図を解釈するコトはできないワケです。
 ではその文字情報を見てみましょう。
 と言っても大部分は読めないのですが、よくよく読めば、致命的な部分があるコトに気付きます。
 それは、単位です。
 
 下段の図の中のさらに下を見てください。
 赤い部分が何を指し示すのか、その根拠らしきモノが書かれている部分があります。
 上下に「日本(左図?)」と「チェルノブイリ(上図?)」とある部分ですが、その横に書かれている数字に注目してほしいてのです。
 一番赤が濃い部分の日本のところは「~8μSv/h」なんだろうとギリギリ読み取れるワケですが、それに対応する一番赤が濃いチェルノブイリのところは「3700~1480????」です。
 単位がどうも読めないのですが、しかし普通こういう風に比較するために対応させるのであれば、単位は揃えて当然ですよね。
 しかし文字の形具合から、どうもチェルノは「μSv/h」ではないのは見て取れるワケで、この時点でもやっぱり不自然な図としか言いようが無くなるワケです。
 
 さらに言うなら、単位がもし同じだと仮定したとしても、絶対数の部分の桁数が文字通り桁違いです。
 でも「濃い赤の部分」は福島とチェルノは同じ状態にある、というのが一般論としてこの手の図の指し示す意図であるワケで、そう考えたらますますこの図の意図するモノが理解出来ません。
 何がどう福島とチェルノが一緒なのでしょうか、8と3700を同列に扱う時点でデタラメと言うしかないのです。
 まぁ単位もこの図の説明もよく文字が読めないのでなんとも言えないところではありますが、読めないというコトも含めてやっぱりデタラメと断じるしか他ありません。
 
 ヘタすればこれは、「全然別の情報なのに、“フクシマ”とチェルノブイリを無理矢理同列扱いにして、フクシマが大変だと印象操作をしている」という悪意のもとで作られている可能性すらも考慮しなければならないと言わざるを得なくなってしまいます。
 そしてその「無理矢理同列扱い」がバレないように、敢えて文字を小さくして読めなくしていると、しかし一切文字情報がなければ図としての信用性が問われるので、その形跡だけ作っておいて、実際は読めないようにしているだけと、そう意図的にしているんじゃないかと疑ってしまいます。
 もちろんここまでハッキリと悪意があるとは断言できませんが、しかしこんなリンクだけしておいて実際には大きな図がないなんてページを作られたら、そういう悪意の可能性は考慮しなければならなくなります。
 
 また、群馬大学の早川教授が作ったページではなさそうなので早川教授が悪いとは言いません。
 しかし、もしこのページが無断で早川教授の図を使っているのでしたら、悪質な行為であり、早川教授の名誉を著しく毀損していると言えるでしょう。
 またもし早川教授の監修のもとでこのページが作られているのであれば、教授という肩書きへの良心はないのかと糾弾するしかないでしょう。
 どちらにしてもこのページの存在は悪質だと言うしかないのです。
 
 とりあえず今回のこのページについてはこの辺にしておきますが、前回の冒頭に言いましたように、この手の図を見たら、まずは疑って下さい。
 否定から入って下さい。
 絶対に鵜呑みはしないでください。
 やえも何度かこの手の図は見てきましたが、このような「論拠には一切使えない図」をたくさん見てきました。
 そしてそれ以上に、「「論拠には一切使えない図」を論拠にしてしまっている人」をたくさん見てきました。
 正直それは、デマの拡散そのものです。
 どうか自分もそれに騙されないように、そして拡散する側にならないように、注意をして下さい。
 
 少なくとも今回のこのページは、どんな主張であったとしても一切の論拠にはなりはしません。
 これは「ただの模様」としか形容できない存在です。