発言者の所属によって扱いを変えるのはむしろ差別では?

 「結婚しないのか」というヤジが都議会で問題になったのはまだ記憶に新しいと思います。
 当時はかなり連日連夜、テレビをはじめとしたメディアが大きくとりあげて、なにやら日本を挙げて大騒ぎになりましたよね。
 誰がそのヤジをしたのか、専門家に依頼して声紋探知機なんてモノも使い始めて、“犯人”探しに血眼になっていました。
 そしてその結果、ヤジをした議員が名乗り出て、マスコミはその議員をつるし上げになって、結局このヤジを飛ばした議員は自民党会派を離脱するっていう形になりました。
 あの時の、文字通りの連日連夜のヤジ騒動は、本当にすさまじいモノがありましたよね。
 
 議場のヤジについては、以前やえは、いやしくも国民から直接選ばれた議員の発言なんだから発言自体を規制するようなコトはすべきではないというお話をしました。
 要はヤジそのものではなく中身の内容によって、それが批判されるべきであるなら批判すべきなんですね。
 正式な発言だろうがヤジだろうが、それは「議員としての発言」に他ならないのですから、その発言には最後まで責任を持つべきだと思うからです。
 
 ですからヤジが起きたっていう時に一番注目すべきは、その内容です。
 「結婚しないのか」という言葉を議場で女性議員に投げかけるのは、果たして議員として人間として適切かどうか、ここの部分において人それぞれ意見があるでしょうし、議論になると思います。
 ではこういうヤジはどうでしょうか。
 
 「扇と何発ヤったんだ!」
 
 けっこう前のお話ですが、松浪健四郎衆議院議員(当時)が保守党所属の時に本会議において討論を行っていた際、民主党の永田寿康議員(当時)にヤジられて、怒った松浪議員がコップの水を投げかけた騒動がありました。
 「水掛け事件」なんて言われて未だ覚えている人も多いと思われる騒動ですが、あの時のヤジの内容が上記のモノだと言われています。
 
 下品ですよね。
 
 もちろん下品だけでなく、こんなのは相手の人格を不当に貶める暴言であり人格攻撃でしかない、ヤジだろうがなんだろうがとても人として言ってはならない類いの発言だと言うしかないでしょう。
 しかし水をかけた松浪議員は登院停止という重い処分を受けましたが、騒動の発端となった永田議員には全くお咎めはありませんでした。
 そして世間一般にも、ヤジそのものの内容などが広く伝わるコトはありませんでした。
 
 結構前のお話ですから、時代と言えばそうかもしれません。
 しかしやっぱりこれはおかしいですよね。
 人によっては不公平感を感じても仕方ないでしょう。
 比べるお話ではないのかもしれませんが、「結婚しないのか」と「扇と何発ヤった」を比べたら、やっぱり後者の方がヒドいと言うしかないのではないでしょうか。
 少なくとも「結婚しないのか」っていう発言は一般社会なら、今はセクハラと言われかねない場面もありますが、それでも一般の場においても耳にする発言ではあります。
 だけど「何発ヤった」なんて、もうこれは相手を攻撃するだけの発言でしかありません。
 まして変なお話、「結婚しないのか」は都議会の問題であって都民の問題であるワケである一方、「何発」は国会でのお話であって国民全体の問題であるハズです。
 ここまで反応に差があるっていうのは、どうもおかしいと言うしかありません。
 
 「団体のメンバーとねんごろなのではないか」
 
 先日7日の参議院予算委員会で、女性である山谷国家公安委員長に向けて放たれたヤジです
 下品です。
 ねんごろって辞書で引けば「親密な間柄」なんて出るようですが、こういう時に使われる意味としては「肉体関係のある間柄」という意味です。
 しかも「ねんごろ」っていう言葉自体が下卑た印象の言葉なんですよね。
 わざわざこういう言葉を使ってヤジを飛ばす、その意図は、もう完全に人格攻撃であり中傷でしかありません。
 
 このヤジ、どう考えても「結婚しないのか」より数倍タチが悪いです。
 下品です。
 とても大臣に投げかける言葉ではない、いえ大臣じゃなくても、他人に投げかける言葉じゃありません。
 最低最悪のヤジだと断じるしかありません。
 しかしテレビをはじめとするマスコミの反応はどうでしょうか?
 正直、こんな問題があったコトすら知らない人も少なくないのではないでしょうか。
 これはさすがにあまりにも不公平だと言うしかありません。
 
 都議会での問題の時というのは、犯人捜しに躍起になって何度も何度もヤジの声を放送し、声紋とか検証して、地獄の底まで追い詰めてやると言わんばかりの大狂乱でした。
 しかしそれよりさらにひどいヤジが明らかになったのであれば、それはあの時よりも大きい熱を持って報道しなければならないハズです。
 でなければウソですよ、報道機関として。
 委員会の場においては予算委員会の野党側の筆頭理事というコトで蓮舫議員が謝罪はしたようですが、だけどヤジを飛ばした議員は謝罪がない、ないというか、誰が飛ばしたヤジなのか未だ名乗り出てもいないですし、民主党側が探そうともしていません。
 マスコミもそれ以上を言おうとはしません。
 
 なんなんでしょうか、この差は?
 
 マスコミも探しなさいよと言いたいです。
 あの時、血眼になって探していたじゃないですか、都議を。
 それ以上の熱をもって今回の「ねんごろヤジ議員」を探してくださいよ。
 でなければ大嘘ですよ。
 こんなの、都議の時は発言者が自民党、今回は野党だから、こんな差をつけていると思わざるを得ませんよ。
 ハッキリ言って、こういう差をつける方が差別なんじゃないんですか?
 特にテレビは露骨にこういうコトするから、国民からどんどんそっぽを向かれているんですよね。
 そんなテレビが、どういう根拠を持ってヘイトスピーチとやらを批判できるのでしょうか。
 
 このままでは、少なくともテレビは差別者だと言うしかありません。
 よくよく自分たちの行動を見つめ直してもらいたいです。