被災3県は安倍政権にNOと言った?

 選挙の結果について選挙直後に、どの番組か忘れたのですがテレビでこのようなコトを言っていました。
 
 「被災3県の選挙区では野党統一候補が勝利した。これは被災3県の県民は安倍政権にNOを突き付けた」
 
 確かに、岩手・宮城・福島の3件の選挙区においては自民党候補が負け、岩手においては野党系無所属候補が、宮城と福島では民進党候補が当選をしています。
 それは事実であり、それぞれの県民がそういう選択をしたっていうのは受け入れなければならない結果だと言えます。
 
 ただし、これだけをもって「被災3県の県民は安倍政権にNOを突き付けた」と言ってしまうのは、かなり稚拙なモノの見方だと断じざるを得ないでしょう。
 選挙とは、全体で見れば政権選択の手段ではありますが、ミクロで見れば立候補者本人の政治家としての資質を国民が直接選択する手段となります。
 最近の選挙では立候補者が所属する政党も大きな選択の判断材料ではありますが、すなわち、選挙区においてはそれ以上に「候補者本人の資質」というモノが投票行動の判断の材料として挙げられるワケです。
 
 これは今さら言うまでもありません。
 選挙区での選挙というのは、最後は立候補者本人の力によるところが大きいのです。
 与野党問わず大物と言われる議員では、例え大逆風選挙でも議員個人の力によって選挙を勝ち抜いてきました。
 例えば岸田外務大臣は政権交代選挙の時に広島県においては岸田さん以外の選挙区は全て自民党が敗北し、岸田さんだけが自民党で当選していましたし、逆に今の広島県は亀井静香ちゃん先生だけが野党系無所属で、他の全ての選挙区が自民党の当選者という構図になっています。
 また、その次の選挙の第二次安倍政権が誕生した時の選挙でも、それでも選挙区で当選した民主党の議員さんもそれなりにいましたよね。
 岡田民進党代表も、決して三重県全体が民進党支持という県ではない(現在5選挙区のウチ3つが自民党当選)のですが、それでも自分の選挙においては抜群の強さを誇り、そして今回の参議院選挙でも民進党候補の勝ちをもぎ取っています。
 このように、選挙区での選挙というのは第一に候補者本人に対する有権者の判断であり、1つや2つの選挙区の当落だけでは政党全ての評価を判断できる材料とは決してならないのです。
 
 その上で、果たして「被災3県の県民は安倍政権にNOを突き付けた」という分析は正しいかどうか、では比例の得票と比べてみましょう。
 すでに各都道府県の選挙管理委員会では投票結果を公表していますので、これを分析してみます。
 岩手はこちら、宮城はこちら、福島はこちらとなっています。
 小数点以下は切り捨てとして、自民党と公明党の総数の合計と、民進党・共産党・社民党・生活の党の野党4党の総数の合計を比べてみます。
 

◆岩手県
 与党2党 257,846
 野党4党 274,895
 
◆宮城県
 与党2党 491,071
 野党4党 404,724
 
◆福島県
 与党2党 395,710
 野党4党 387,551

 
 小沢王国と言われる岩手県ではさすがに与党が負けていますが、宮城と福島は与党の方が勝ってるんですね。
 宮城なんて結構差が付いて与党の勝利とすら言えるのではないのでしょうか。
 
 さて果たしてこの結果を前にして、「被災3県の県民は安倍政権にNOを突き付けた」と言えるでしょうか?
 
 これって結構悪質な印象操作ですよね。
 つまりこれをごく普通に当たり前に分析すれば、「選挙区は野党候補に入れたけど、比例は与党に入れた」っていう人がいっぱいいたのであり、それって「全体としては自民公明を支持するけど、でもこの候補者はイヤだな」っていう人がいっぱいいたっていう結果なのであり、よってそれは全体としては、逆に「安倍政権にはYES」という意思表示を少なくとも宮城福島の被災2県は主張していると見るべきでしょう。
 結局は「負けたのは候補者が悪い」という、ごく普通の結論が得られるだけです。
 そしてこの分析は決して難しい分析でありません。
 ただ比例の得票を合計すればいいんですからね。
 
 マスコミは印象操作で与党を攻撃しようという意図をはじめから持っていたと言わざるを得ません。
 本当に悪質です。
 マスコミはこんな簡単な分析すらせず、いえもしかしたらした上で隠している、報道しない自由を発動して、印象操作をしようとしたのかもしれません。
 騙されないように注意しましょう。