天照大神は天皇ではない

 「天皇家の始祖神である天照大神は女神だから、天皇は女系でも構わない」
 
 こういう意見をたまに見ます。
 やえとしましたらこれ、今のところ最も皇統問題をミスリードする言い方だと思っています。
 
 天皇家の始祖神が女神である天照大神であるというのはその通りです。
 別にここに異論は一切ありません。
 というか、この議論の場合には、天照大神の性別はわりとどうでもいいお話です。
 
 なぜなら、天皇継承のルールはあくまで天皇のルールであって、始祖神ではあれど天皇ではない天照大神には関係のないお話だからです。
 
 初代天皇は神武天皇です。
 天照大神は天皇ではありません。
 天皇ではないのですから、天照大神は天皇継承のルールには関係ないのです。
 
 もっと言いましょう。
 神武天皇は実在しない人物だと言われていますが、それはもちろん天照大神も同様です。
 おそらく神武天皇も天照大神もモデルとなった複数の人物がいるのでしょうけど、ハッキリとした実在した人物ではありません。
 
 では、両人(正確には一柱と一人)とも実在しない人物なのに、それなのになぜ、この両者は神と天皇とに立場が別れたのでしょうか?
 
 天照大神がなぜ女神なのかはやえには分かりません。
 けど、天照大神は天皇としては数えられてはいないコトはハッキリしています。
 これってやっぱり、ここに明確な意志があると考えるのが自然なのではないのでしょうか。
 つまり意図して「初代天皇は男性」と定めたのであり、「天皇という存在は男系で続ける」と明らかな意志があったからこそ、初代天皇は男性である神武天皇だと定められたと捉えるのが自然だと思うのです。
 
 繰り返しますが、「初代天皇」は「男性である神武天皇」であるコトにはなんら変わりありません。
 そして天皇継承の問題は天皇の問題です。
 天照大神は天皇ではありません。
 よって、天皇継承のルールには天照大神は一切関係がありません。
 ですから、いくら天照大神が女神だったとしても、そこに天皇継承の問題には何ら影響はないのです。
 
 テレビとか公共の場では「天照大神は天皇ではないから関係ない」とは声に出して言いづらい内容ではあります。
 しかしそれを盾にして自説を押し通そうというのは卑怯な論法です。
 ですからやえはこれを、今のところ最も皇統問題をミスリードする言い方だと思っているのです。