地方分権を考える 2
シリーズ「地方分権を考える」の2回目です。
やえの出身地であります広島市も政令指定都市です。
大阪ほどの規模ではありませんが、政令指定都市としての歴史もそれなりにあって、また地方の中核都市という性格もありますから、政令指定都市としてのモデルとしては申し分ないでしょう。
さらに今回の問題を考える上で参考になる事例が広島市にはあるのです。
それは、長年広島市長は特に政令指定都市になってからずーっと革新系の、いわゆるサヨク系の市長が当選し続けていたというコトです。
前回の選挙でやっと保守系の市長になりましたが、その前の市長は秋葉市長と言いまして、元社会党の衆議院議員というバリバリの左翼系市長でした。
そして、かたや広島県はわりと保守系に近い人が知事なんですね。
前の知事もいまの知事も、どちらかと言えば保守系の知事です。
つまり広島って、もはや首長の基本的性格からしてねじれ現象が起きていた地域なのです。
大阪よりもねじれの歴史は長いと言えるワケなのです。
結果的に言えば、やえの主観ですが、広島市は長年左翼系の市長であったために、変な平和運動ばっかり進んでしまって、経済などの問題はかなり他の地方中核都市より遅れてしまったと思っています。
昔は「札仙広福」なんて言いまして、札幌・仙台・広島・福岡と地方中核都市を並べて言っていたモノですが、正直いまの広島は札幌や福岡からは随分離されてしまったように感じます。
それも、全てとは言いませんが、やはり観念的な問題ばかりに熱心だった革新系の歴代広島市長の責任がかなり大きかったと思うのです。
しかしそれは、結局そういう広島市長を選んできた広島市民の責任でもあります。
広島市民は、広島県知事の選挙の投票権も同時に持ちながら、広島市長の選挙ではこういう人を選び続けたのです。
すべては選挙の結果です。
広島市民が自らの選択によって、知事とは毛色の違う市長を選び続けたのです。
そんな中、やえの考えで言えばいままでの広島市長はあまり良くない市長だったワケですが、仮にですよ、そんな知事がやえと同じ考えだからといって、しかし県知事が市長を乗り越えて直接自分の考えを直接実行させようなんてコトはしてはなりませんよね。
だって、法的にももちろんですが、さっき言いましたように、結局県知事の選挙権を持ちながらそれでもそのような市長を選んだのは広島市民なのですから、市長の政策は民主主義に乗っ取った民意だからです。
知事も県民に選ばれた人ですが、同時に市長だって広島市民に選ばれた人なのです。
広島市での政策は広島市長に委ねると、広島市民本人がそう望んで決めたのです。
どっちが正しいとかの問題じゃないんですね。
どちらも尊重すべき民意なのです。
それを県知事がしゃしゃり出て何かしようとするのは、完全に越権行為と言わざるを得ません。
前回も言いましたように、知事が上で市長が下なんてコトはありません。
もしそんな理屈が成り立てば、知事は国会議員に平身低頭で命令を聞かなければならないでしょう。
でもそうではありませんよね。
だからですよ、結局これは構造的なシステム論ではない問題であって、日本のシステム上、その土地には総理を除いて首長が必ず2人いるコトになっているのですから、どうやったってこの2人の首長の間ですりあわせとか協力態勢が絶対に必要なワケなのです。
でも橋下さんはそれをしなかったとしか言いようがないんですね。
他の地域はそれでもそれなりに折り合いをつけていたのです。
いまの平松大阪市長も言ってましたが、橋下さんの主張を実行しようと思えば、制度で言えばいまの制度でも出来るワケで、結局知事と市長との間のすりあわせや議論や意思疎通が全然出来ていなかっただけなんですね。
本来どの首長もしなければならないコトを、橋下さんはしなかった、出来なかったのかもしれませんが、政治は結果責任ですから、出来なかったのはしなかったと言うしかありません。
橋下さんはしなかったのです。
つまり橋下さんが言っているコトは、こういう前提をあえて無視して、自分の言うコトだけを全ての首長や議員は聞けと、自分だけが命令権を持っていればいいと、そう独善的にも言っているコトにしかならないんですね。
矛盾しているんです。
もし橋下さんが構造的な問題を解消させたいのであれば、二重行政をシステムの面で直したいと思っているのであれば、例えば首長をひとりにするとか、市長や区長を選挙で選ぶコトにするとしても知事の命令には服従しなければならないと法律にでも明記するかするしかないでしょう。
そしてもしそういうコトをするのであれば、前回言いましたように、もう国と区だけでいいじゃないですかと、橋下さんの「上がグランドデザインを書いて、下が細かい住民サービスを行う」のであれば、その方がいいじゃないですかと言いたいのです。
そしてそれを実現するためには、国会議員になって総理大臣になって、法律や憲法を変えるしかないでしょう。
でも橋下さんは国会議員になるつもりは全くなさそうであり、やえには橋下さんが何がしたいのか分からないのです。
いえ、わからないコトは無いです。
結局橋下さんは大きな権力が欲しいんですよね。
特に民主主義における権力とは、1つの場所に集中しないよう工夫がされていて、その最たるモノが三権分立だったりするのですが、橋下さんはそういうのを無視してでも、とにかく自分の権力を集中させたいのでしょう。
それがどれだけ矛盾であったとしても、そこには目をつむって、それらしい理屈を付けて、国民の支持を得ながら権力を得たいんだと思います。
まぁ橋下さんには、権力を得た後の先に実現したいなにかがあるのかもしれませんが、ただそうだとしても、橋下さんの言う「大阪都構想」は矛盾しているとやえは指摘しておきたいです。
次回は、東京の区について参考にしながら考えてみたいと思います。
ディスカッション
コメント一覧
やえさんは大阪府民でも大阪市民でも無さそうなのでドーデも良いのですが、橋下徹が取り組もうとする大阪の問題を全く理解していないので大阪市民の一人としてコメントしておきましょう。
広島を例に大阪を論じるのが、そもそもの間違いの始まり。広島市と大阪市が「同じ」政令指定都市だから「モデルとして申し分ない」という前提が間違いです。
政令指定都市は都道府県とは違いますが、一部の都道府県の仕事を実施する権限を与えられており、凄く大雑把にに言えば「都道府県」と同じです。人口規模で言えば、大阪市≒広島「県」で、経済規模では大阪市>広島「県」。
しかも大阪府は日本で下から二番目に小さい都道府県。関西空港の建設などで順位は逆転したものの、最下位の香川県とホボ同じ広さしかないのです。ちっさな大阪府のど真中に大阪市という別の都道府県が存在するようなもの。
自分は逆に広島の実情は知りませんが、地図で見て像像するに広島市で喩えると「西区・東区・中区・南区」が新広島市、現広島市が新広島県となった状態で新広島県と新広島市の関係と見る感じでしょうか。
新広島県知事(現広島市長)が、新広島県全体の見地で市街地と居住地の横断的な鉄道網を整備しようとしても、新広島市長は新広島市のことしか考えない。
新広島市内に、新広島県図書館と新広島市図書館の両方が作られるというような常用が現在の大阪府と大阪市の関係ですね。
橋下徹の言う「都構想」は
(1)広域行政の一本化
上の例だと横断鉄道網の敷設は新広島県知事の権限に一本化しようという話やえさんのような政治思想のねじれとかではなく「船頭多くして船山に登る」状況なのを「船頭を一人にする」というだけの話
(2)公選区長での住民自治
大阪市の人口は広島県と同程度なのに公選首長が一人。これは広島県の各市町村長が存在せず、広島県知事が全てを取り仕切っているような状態。これを広島県と同じく適正規模の基礎自治体に分割するというもの
「知事より市長が偉い」とか言う話ではなくて、上記の(1)の役割分担を明確にして船が山に登らないようにしようということです。
そして「知事より市長が偉い」と考えてないから「知事」と「市長」の両方のポストを取るために「ダブル選挙」を実施して、両方の考え方を合わせて、役割分担を整理しなおして、今後は「ダブル選挙」なんてトリッキーなことを実施しなくても船頭が一人になるシステムにしよとしているんですよ。
橋下徹も、就任直後は平松市長と連携して「水道事業の統合」を目指してやっていたのですが、結局うまくいかず現在は大阪市以外の42市町村の連携した水道事業団と大阪市の水道局という状態。
大阪府と大阪市の連携ができなかったのは橋下徹だけではなく、過去何十年もの問題で「不幸せ」にかけて「府市合わせ」と揶揄されるくらいです。
広島県の人には「他人事」なんでしょうが、これは橋下徹以前からの問題で解決方法が無かったなか、橋下徹は「都構想」での解決を目指しているのです。
そもそも、地方自治法を見ればわかる話ですが、日本の法律上は「都」は東京都には限定されていません。大阪府を大阪都に再編するには
①大阪府のみ適用される「大阪府を大阪都に変更」する法律を作る
②憲法95条の住民投票で①を有効にする
③地方自治法の現在の規定で「市を特別区に分割再編」する(これは都議会とか市議会の決議で実施可能)
という風に、「国民の支持」などは全く想定されていないんですよ。
確かに①の立法は国会の議決が必要ですが、②が必要なのように他府県民には全く関係ない話。ただ困りものなのは、仮に大阪府民の大半が大阪都を望んでも国会に①を実施させる確実な手段が無いことです。
だから...多くの選挙で支持を得ることにより大阪府民の民意を明らかにして国を動かし①を達成する。①を達成したら、あとは大阪府民の民意で全て決まる。
やえさん 理解できますか?
「大きい権力が欲しい」とかでは全くないんですよ。橋下徹が大阪都構想を成し遂げれば名声は得られるでしょう。しかし、それで都知事になったとしても東京都知事の縮小版(財政規模が小さいので)しか得られないんですよ。
スマートフォン版になっててビックリ。
やえちゃんの顔が見れないのがちと寂しいね。