また始まったマスコミの言葉狩り

2013年1月24日

 まずこちらの発言をご覧下さい。
 

 「私は遺書を書いて『そういうことはしてもらう必要はない、さっさと死ぬんだから』と渡してあるが、そういうことができないと、なかなか死ねない」
 
 「(私は)死にたい時に死なせてもらわないと困る」
 
 「しかも(医療費負担を)政府のお金でやってもらうというのは、ますます寝覚めが悪い。さっさと死ねるようにしてもらわないと、総合的なことを考えないと、この種の話は解決がないと思う」

 
 考え方は人それぞれで、このように考えない人もいるとは思います。
 つまり、何が何でも最後まで生きたい、どんな苦痛が伴っても医学の力でギリギリまで生きたいと、そう願う人もいると思いますし、それは人それぞれ自由だと思います。
 しかしこういう考えの人もいるというコトは理解出来るでしょうし、同時にその生き方を他人に否定されるモノでもありませんし、そしてなによりこう考えない人もその人の考え方生き方を尊重するというのは理解出来る考え方だと思います。
 これは普通の考え方、普通の意見であり発言ですよね。
 
 しかしこれをこんな風にまとめた人がいます。
 

 麻生副総理「さっさと死ねるように」 高齢者高額医療で発言
 
 麻生太郎副総理兼財務相は21日開かれた政府の社会保障制度改革国民会議で、余命わずかな高齢者など終末期の高額医療費に関連し、「死にたいと思っても生きられる。政府の金で(高額医療を)やっていると思うと寝覚めが悪い。さっさと死ねるようにしてもらうなど、いろいろと考えないと解決しない」と持論を展開した。
 また、「月に一千数百万円かかるという現実を厚生労働省は一番よく知っている」とも述べ、財政負担が重い現実を指摘した。

 
 タイトルが「さっさと死ねるように」であり、その上発言のまとめが
 

 「死にたいと思っても生きられる。政府の金で(高額医療を)やっていると思うと寝覚めが悪い。さっさと死ねるようにしてもらうなど、いろいろと考えないと解決しない」

 
 です。
 もし要約のテストかなんかがあったら、とてもじゃないですけど合格点が貰えるレベルじゃないですよね。
 そもそも主語を取り違いかねない書き方ですし。
 このひどいまとめ、言うまでも無くマスコミの所行です。
 
 最初の引用はロイターの記事ですが、それを読めば一目瞭然、このセリフは誰が何を語っているのかと言えば、麻生副総理が自分の人生観を語っているワケですね。
 しかし要約の方を見れば、特にタイトルなんか、「麻生副総理がその職権を持って「さっさと死ねるような制度」を作ろうとしている」と捉えても不思議ではない、やもすれば、「財政がきびしいから老い先短い人には死んで貰おう」と言わんばかりに捉えられかねないような伝え方をしてしまっています。
 こんなの全然「自分自身の人生観」の発言ではありません。
 あまりにも悪意しかない“報道”です。
 
 麻生副総理はあくまで自分の人生観として終末期医療について語っています。
 発言の場所は「社会保障制度改革国民会議」
 麻生副総理は政治家ですから、まず自分の人生観を語り、それを叩き台にして、地に足が付いた議論をしようとしていたに過ぎません。
 少なくとも、自分がこう考えてるからという理由だけで、それをそのまま制度化しようとしている発言ではありませんよね。
 それも当然、だってもしそうであれば、その日だけの社会保障制度改革国民会議で制度の決定となってしまうコトになります。
 しかしもう終末期医療についての制度の改革が決定したなんて、当時から今日まで一度も報道されていませんし、もちろん事実でもありません。
 そう考えたら、やはり麻生さんの本意としては議論の中のひとつとして、まず自分だったらどう考えているのかという「地に足の付いた」意見をまず述べるという、議論にとっては極々普通の行為を誠実に行っただけと言えるでしょう。
 やえだって議論の中で、「やえだったらこうします」的なコトはよく言いますよ。
 議論ってそういうモノです。
 
 例えば「一般の人は死にたいと思っているだろうから」とか「一般の人は何が何でも死にたくないと思っているハズだから」とか、そういう思い込みを一般論化するコトの方が、議論としては不適切ですよ。
 それこそ押しつけじゃないですか。
 政治家の勝手な想像だけで制度を決定するって、一番やっちゃダメな行為ではないのですか?
 いえもしかしたらマスコミは、普段から有りもしない自分だけの妄想をよく記事にしていますから、それがマスコミの常識の中では普通なのかもしれませんが。
 
 しかしマスコミの汚らしさは、切り張りしてファーストインパクトで全てを決しようとする姿勢です。
 マスコミが「さっさと死ねるように」という言葉だけを使ってまず最初に悪印象を読者に植え付けさせて、その後政治家から反論があったら、「釈明した」と発言の全文とか出してくるワケです。
 麻生さんもこう言ってます
 

副総理は「終末医療のあるべき姿について意見を言ったものではない。発言の内容からはっきりしている」と釈明。自身の発言が「一般論としてではないのは、文章を読み返してもはっきりしている。私見を求められたので、私見を申し上げた」と説明した。

 
 「文章を読み返してもはっきりしている」
 ですよ。
 その通りです。
 読み返せば、普通の日本語感覚を持っていれば、ハッキリしています。
 でもマスコミは、こういうコトは後から別の記事で載せるだけ載せて、しかし最初の悪印象のための記事はセンセーショナルに取り上げるのですから、どうしても読み手の印象は最初の印象が強く残るワケです。
 それをマスコミは狙っているワケですね。
 本当に卑怯です。
 
 当然として最初の記事を書くときも、記者は麻生さんの全文を知っているハズです。
 それなのにこのような記事を書くというのは、悪意があって意図的にやっているか、もしくは日本語がデタラメに下手なのか、どっちかです。
 どっちも問題ですよね。
 こういうコトをマスコミがやっている以上は、いくらマスコミが囃し立てても政治は良くなりません。
 つくづく日本の政治を良くするためには、まずマスコミを改革するしかないというのがよく分かる案件かと思います。