そう考えたとき、果たして北の拉致はテロルと言えるのでしょうか。
実は1の条件がすでに当てはまりません。
北朝鮮が行っている拉致は、これは政治目的ではないんですね。
テロルとは、その政治目的を達成するために暴力的行為を行い、それを大々的に宣伝して敵方に恐怖を与えて、その恐怖を行動の動機とさせて、テロリストの求める政治目的を達成させる行為です。
しかし北の拉致は、北が日本になんらかの目的を要求するために行ったモノではありません。
簡単に言えば「拉致するから金よこせ。拉致されたくなければ金よこせ」とは主張していないというコトです。
テロルというのは、ある程度暴力的行為を公にする必要があります。
誰にも知られないようにひっそりと暴力的行為を行っても、誰も知らなければ脅威とも感じないワケで、それでは政治目的は達成されず、テロルの意味がありません。
ですから、テロルにはある程度の注目を集めなければならないワケです。
テロルが起こるとだいたい犯行声明が出されたりしますが、これはそのためなワケです。
しかし北の拉致問題というのは、むしろ隠された存在でした。
小泉さんが訪朝するまでは、北は拉致の存在自体を否定していました。
そして同時に、北は拉致という行為を日本政府に対して脅迫行為にしているワケでもありませんでした。
北の目的は、人間そのものを得るためであり、拉致そのものが目的であったワケです。
ですから、北の拉致問題というのは、テロリズムではないのです。
日本人は、まずここを冷静に事実として受け止めなければなりません。
拉致はテロリズムではありません。
となれば、テロリズムの問題と、拉致の問題は分けて考えなければならないワケです。
米国のライス国務長官は次のようにも言っています。
「米国が人権支援で口をつぐむことはあり得ない」
このセリフは、いまの日本とアメリカの主張のねじれを、端的に表しているのではないでしょうか。
拉致問題は人権に関する問題です。
それはその通りです。
しかし北朝鮮による拉致問題は、テロリズムの問題ではありません。
そしてアメリカは今、「テロ支援国家」の指定解除について行動を行っているワケです。
確かにアメリカが日本に対してどの程度北に対する問題に力を貸してくれるか分かりません。
分かりませんが、少なくとも拉致問題の存在は、アメリカにとってのテロ支援国家指定解除の問題とはリンクするモノではないワケです。
拉致問題とテロ支援国家の指定解除とは、これは別問題なのです。
ただしそれは、アメリカが拉致問題を無視するという話でもありません。
別問題だから、別に考えるというコトです。
テロ支援国家指定の問題は解除の方向に向かっていますが、それとはまた別で、拉致問題を取り上げ北に対して強い姿勢をアメリカがとる可能性も無いとは言えないでしょう。
そうしない可能性だって、否定できませんけどね。
アメリカがどのような考えで今回の行動になったのか、それは正確には分かりません。
おそらく核兵器を放棄させるコトをなによりも第一に考えているんだろうというコトは想像できます。
そしてそれは、決して日本にとって悪いコトだけではなく、もちろん拉致問題が今までより良くない方向に行く可能性も否定できませんが、しかし核の放棄への方向というのは、日本にとってもメリットを享受できるコトとも言えるでしょう。
ここでよく日本人が知っておかなければならないコトは、所詮「テロ支援国家の指定」なんていうのは、アメリカの国内法によるモノだというコトです。
やえは勉強不足で、どうして一国内法なんかの存在で国際機関の動きが鈍るのか、例えばアジア開発銀行もテロ支援国家に指定されているままだと融資が出来ないようなのですが、どうしてアメリカの国内法で国際機関がここまで影響を受けるのか、この根拠がよく分かりません。
分かりませんが、しかし少なくとも「テロ支援国家」の指定や解除は、国連とかで決められるモノではなく、アメリカの国内法によって決められるモノであり、そうなれば同然アメリカの国益が何よりも最優先されるというのは言うまでもなく当然の話だというコトは頭に入れておかなければなりません。
日本との付き合いよりも、他の問題の方がメリットが大きいとアメリカが判断すれば、テロ支援国家の指定や解除なんて、アメリカの思うがままのワケです。
北との問題において日本はアメリカと協力関係を維持しなければならないというのは、その通りだと思います。
なぜなら日本には力がないからです。
もしくは力を行使しない、力を誇示しないからなのかもしれません。
先の例えで出しましたアジア開発銀行には、アメリカは国として最大の出資をしています。
おそらく、そういう事実をもって、アメリカのテロ支援国家に指定している国には融資をするなと、有形無形の圧力をかけているのでしょう、もしかしたらその結果として明文化されているのかもしれません。
しかし実は、日本もアジア開発銀行には、アメリカと同じ割合だけ出資していたりしているのです。
ですから日本だって、例えば日本が「人権圧力国家の指定」などという国内基準を作り、外国にそれを指定して、アジア開発銀行に「人権圧力国家に指定されている国には融資するな」と言えば、同じような効果が得られるのかもしれません。
でも日本はそういうコトをしていないワケです。
やえは、そういう外交もしてもいいとは思いますが、しかしこれは、日本が北だけでなく全ての国家に対して責任を負うというコトになってしまうコトを意味します。
例えば「人権圧力国家」であれば、当然チベット問題などによって中国もその指定の対象候補となりうるでしょう。
果たして今の日本には、そこまで責任を負える力があるでしょうか。
アメリカは、最後にはどこにも負けない武力があると自信を持っています。
北が暴発して、「核撃たれたくなかったら指定解除しろやー」と言っても、逆に叩き潰せる自信と根拠を持ち合わせているワケです。
だからこそ「世界の警察」を自認し、実際そのような責任を持って、時には暴走しながらも行動をしているワケです。
しかし、残念ながら日本には事実としてそんな力はありません。
これは武力だけではないでしょう。
アメリカには資源もありますから、中国との貿易が途絶えても、やっていける自信はそれなりにあるのだと思われますが、日本の場合は果たしてどうでしょうか。
そういう色々なコトを考えた場合、将来は分かりませんが、少なくとも今の日本にそこまで世界に対する責任を負えるほどの力は持っていないのです。
話がちょっとそれましたが、まず、問題に対処するためには事実を事実として認識する必要があります。
今回の場合、まず、北の拉致はテロリズムではないというコトを事実として受け止めなければなりません。
テロルでないモノを引き合いに出して「テロ支援国家の指定解除はしないでほしい」と言っても、実は全然説得力を持たないんですね。
日本国民は、こういう理不尽な主張をしてしまっているコトに気付くべきです。
そしてアメリカとはやはり協力しなければならないですから、アメリカが納得しうる説得力を持って交渉をしなければなりません。
なぜなら、テロ支援国家の指定や解除は、アメリカの国内法によるものであり、最終的にはアメリカだけの判断でそれがなされるからです。
アメリカの国益が何よりも最優先されるワケです。
アメリカという国は、その国家の成り立ちから建前を重視する、言い方を変えれば「正義」を標榜する国ですから、非正義なコトは公にはしたがりません。
ですから、「北朝鮮は拉致という非人道的な行為を国家プロジェクトとして行っている」という事実は、アメリカにとっては見捨てられない非正義であるハズです。
日本としては、そこを上手く政治的な駆け引きとして、アメリカと連携を取らなければなりません。
しかし、ここに「拉致はテロリズムだ」という、理が立たない理論を持ち出してもマイナスにしかならないのではないでしょうか。
日本人は、ここを冷静に考えなければならないと思います。
(つづく)